カタールワールドカップ2022は日本時間11月21日(月)に開幕。12月19日(月)の決勝戦まで約1ヶ月間に渡って戦いが繰り広げられます。
2010年南アフリカ大会の王者、そして3大会ぶりの優勝を目指し、日本代表ともグループリーグ第3戦で対戦するスペイン代表について、DAZNサッカー解説でもお馴染み小澤一郎さんに占っていただきました。
カタールワールドカップ2022 スペイン代表の試合日程と放送予定
スペイン代表のカタールワールドカップ本大会での試合スケジュールがこちら。いずれも日本時間での日程、放送予定です。
日時 | 対戦国 | 放送予定 |
11月23日(水) 1:00 |
コスタリカ | abema TV |
11月27日(日) 4:00 |
ドイツ | abema TV |
12月1日(木) 4:00 |
日本 | フジテレビ abema TV |
ブックメーカー発表オッズの優勝オッズは9.50倍
海外ブックメーカー・WilliamHILL(ウィリアムヒル)社が発表している「スペイン代表の敗退ステージオッズ」は以下の通り。
GL敗退 | 6.00倍 |
ベスト16敗退 | 3.25倍 |
ベスト8敗退 | 3.25倍 |
ベスト4敗退 | 6.00倍 |
準優勝 | 10.00倍 |
優勝 | 9.00倍 |
※ 2022年11月18日時点でのオッズを引用
スペインと日本が所属するグループEの予選通過オッズがこちら。
スペイン | 1.11倍 |
ドイツ | 1.14倍 |
日本 | 4.33倍 |
コスタリカ | 7.50倍 |
※ 2022年11月18日時点でのオッズを引用
ルイス・エンリケ監督が11日に発表したスペイン代表メンバー26名の平均年齢は「25.6歳」。18歳のガビ、今年20歳となる2002年生まれに至っては4選手
- ペドリ
- アンス・ファティ
- ニコ・ウィリアムス
- ジェレミ・ピノ
もいる若いラ・ロハだけに国内での期待も高まっています。
しかし、敗退ステージオッズでベスト8、ベスト16ともに3.25倍となっている通り、開幕を前にしたスペイン代表の下馬評は「優勝候補」ではなく、「ベスト8で目標達成」のチームであり、ベスト4以上となれば「素晴らしい大会」と総括できる、あくまで「強豪国の一つ」という立ち位置です。
実際、コロナ禍で2021年に開催されたEURO 2020(欧州選手権)でベスト4入りし、その大会を制したイタリア相手の準決勝で素晴らしいサッカーを披露したスペイン代表とルイス・エンリケ監督は国内で「良くやった」と賛辞を送られる結果を出しました。
2010年のW杯で優勝して以降、世代交替とポゼッションサッカーの呪縛に苦しんできたスペイン代表ですが、前回大会後に代表監督に就任したルイス・エンリケ監督の下での4年でしっかりと世代交替を推し進め、ボール保持やパスサッカーだけに依存しない縦に速いサッカーも取り込み進化を見せています。
メンバー26名の内訳を見ると今季LaLigaで首位を走るバルセロナから最多の7選手が選出されましたが、近年はスペイン人選手の海外移籍が増加傾向にあるため国外クラブ在籍選手の割合も過去の大会、スペイン代表と比べると増えています。
加えて今回のスペイン代表にキャッチフレーズをつけるとすれば「ルイス・エンリケFC」です。どういう意味かと言うと、寄せ集めの代表っぽさがない、まるでクラブチームのようなチームなのです。
ルイス・エンリケ監督の代表でのチームづくり、プロセスではその時々で最高の、旬な選手を寄せ集める手法ではなく、代表としてのゲームモデルとシステムを明確に掲げた上でそのサッカーに適する選手を選び、各ポジションのタスクを確実に遂行できる選手で一体感のあるチームをつくってきました。
そのため、W杯メンバー発表の前に代表復帰を推す声も挙がっていた実力者のセルヒオ・ラモス(PSG)、イアゴ・アスパス(セルタ)といったは選手はやはり呼ばれず、「サプライズがないことがサプライズ」と報じられるほど順当な顔ぶれのメンバーとなりました。
W杯経験者は6選手(ブスケツ、ジョルディ・アルバ、アスピリクエタ、カルバハル、コケ、アセンシオ)と少ない今大会メンバーですが、代表初招集となるメンバーはゼロです。
初戦・コスタリカ戦
ウィリアムヒル社発表の90分勝敗オッズがこちら。
- スペイン:1.14倍
- ドロー:7.00倍
- コスタリカ:23.00倍
コスタリカとの過去の対戦成績は2勝1分。
コスタリカ戦の過去戦績 |
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2011年11月 | △ 2-2(A) |
2015年6月 | ○ 2-1(H) |
2017年11月 | ○ 5-0(H) |
ドイツと共にオッズ上では「2強2弱」の様相を呈するグループEですが、スペインの初戦はコスタリカです。勝敗オッズ上でも圧倒的にスペイン有利となっていますが、コスタリカのように低いライン設定で粘り強い守備を信条とするチームに苦しむことが多いのが近年のスペイン代表です。
2010年にW杯優勝を果たしたスペイン代表もW杯初戦のスイス戦ではソリッドな守備に苦しみまさかの黒星スタートでした。その意味でも今大会は相手を押し込んだ状況下での攻撃陣の決定力が鍵を握ることになります。EURO2020に続き、今大会もラ・ロハのエースはアルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリード)です。
純粋な9番タイプは彼しかいないため、余程のことがない限り彼を先発で外す試合はないと思いますし、このコスタリカ戦でも4-3-3の1トップを務めると予想されますが、大会初戦の緊張感と相手を考えると早い時間帯、特に前半のうちにスペイン代表が先制点を奪うことが初戦はもちろん、大会自体のチームの出来を左右するポイントとなりそうです。
ただし、モラタの1トップが機能しない場合、彼を休ませる時の攻撃の型もルイス・エンリケ監督はしっかり準備しています。中でも滑り込みでメンバー入りしたアンス・ファティには注目です。
ここ2年は度重なる怪我に苦しみ、若干20歳ながらも「もう本来のアンスに戻らないのでは?」という懐疑論も周囲に蔓延していましたが、10月中旬以降所属のバルセロナで出場時間を増やし、大会直前最後のヨルダンとのテストマッチでも良いプレーとゴールを披露しています。
第2戦:ドイツ戦
ウィリアムヒル社発表の90分勝敗オッズがこちら。
- スペイン:2.60倍
- ドロー:3.30倍
- ドイツ:2.75倍
ドイツとの過去の対戦成績は9勝8敗8分。
ドイツ戦の過去戦績 (以下、直近4試合の戦績) |
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2014年11月 | ● 0-1(H) |
2018年3月 | △ 1-1(A) |
2020年9月 | △ 1-1(A) |
2020年11月 | ○ 6-0(A) |
スペインにとっての第2戦はGS最大の強敵であるドイツとの対戦です。現状のオッズでは、スペイン勝利がドイツ勝利よりも少し上回る数字となっていますが、試合前に「どちらが有利、強い」と予想するのが難しい強国同士の対戦です。
この試合で鍵を握るのは守備におけるカウンター対応でしょう。切り替えの速さと強度は今大会出場国の中でも最上位レベルにあるドイツは、守備から攻撃の切り替えで素早くカウンター攻撃を狙うチームです。そのドイツのカウンターに対しスペインは引いて守るのではなく、ハイラインでボールの出どころを潰すアグレッシブな守備で対抗するでしょうから、キーマンはアンカーのブスケツになります。
2010年優勝チーム唯一の生き残りとして今年34歳になったブスケツですが、展開予測とカウンターの芽を潰すタスクに関してはいまだ衰え知らずのピボーテです。
第3戦:日本戦
ウィリアムヒル社発表の90分勝敗オッズがこちら。
- スペイン:1.40倍
- ドロー:4.40倍
- 日本:8.00倍
過去の対戦成績はスペインの1勝。
日本戦の過去戦績 |
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2001年4月 | ○ 1-0(H) |
グループステージ最後の第3戦は日本との対戦を控えているスペイン代表ですが、この試合は2戦が終わった段階での勝ち点やグループの順位が大いに関係してきます。
そもそもルイス・エンリケ監督は主力と控えに差を付けてチームをAB分けするようなチーム作りをしておらず、選手層の厚みを活かして誰がどこに出ても機能するチームとサッカーを構築しています。
そのため、GSでの3試合のスペイン代表は毎試合ターンオーバー採用でスタメンが入れ替わることになると思いますが、特にこの日本戦は次のラウンド16をにらみ大幅なターンオーバーを使うことになるでしょう。怪我がない限り交代しないGKのポジションでウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)が先発する予想以外、今この段階では日本戦のメンバーやキーマンを予想できません。
決勝トーナメントに進出した場合の組み合わせ
決勝トーナメントに進出してラウンド16を戦うとすれば、F組からはベルギーかクロアチアのどちらかになる予想が大方を占めるでしょう。ルイス・エンリケ監督のスペイン代表の相性という意味では、前線に強烈な個を抱え意図的に間延びする展開からカウンターを狙ってくるベルギーの方がやりにくいチームでしょう。
特に、スペイン代表のCBはルカクのような身体能力の高いFWに対して後手を踏むことが多く、ルカクとデ・ブライネの二人だけでカウンターから決定機を作られることは容易に想像できます。
もちろん、クラマリッチやペリシッチのいるクロアチアの攻撃陣も苦手とするタイプではありますが、ハイプレスとハイラインで「コンパクトさ」を重視するスペイン代表のサッカーからすればラウンド16はクロアチアとの対戦を望みたいところ。
しかし、ルイス・エンリケ監督は先の対戦をにらんで勝ち点や試合をコントロールするような監督ではなく、目の前の試合に全力集中するタイプの指導者です。
スペイン国内ではベスト8入りした際にブラジルとの対戦を避けるべく、「2位通過の方がいいのでは?」といった声も挙がっていますが、そういった取らぬ狸の皮算用は全くしないでしょう。
いずれにせよ、若くフレッシュな「ルイス・エンリケFC」のスペイン代表は大会の入りに成功すれば勢いに乗ったまま高みにたどり着くポテンシャルを持つ代表です。国内での期待はさほど高くないだけに、逆にプレッシャーは少なく、プレッシャーや批判は変わり者のルイス・エンリケ監督が一身に背負っているため、若い選手たちがのびのびと躍動する大会になる可能性も大いにあります。
代表チームらしからぬ機能性の高いクラブチームのようなスペイン代表、そして彼らが実践する伝統のポゼッションと進化したカウンターのハイブリッドなサッカーにぜひ注目ください。