カタールワールドカップ 日本×ドイツの見どころ展望&放送予定【河治良幸】 | ブクサカ

カタールワールドカップ 日本×ドイツの見どころ展望&放送予定【河治良幸】

ワールドカップ

カタールワールドカップ2022・日本代表はグループリーグ初戦でドイツと対戦します。日本時間11月23日(水)夜22時キックオフ、試合はNHK総合、abemaTVで完全生中継です。

祝日夜に時間帯、そして大会初戦という日本中の注目を集めるこの1戦をサッカーライターでお馴染み、河治良幸さんに展開予想を語っていただきました。

ブックメーカーでの美味しいオッズを探している方も、純粋に試合展望を楽しみにしている方も、ぜひこの記事でコスタリカ戦を予習して本番の試合を楽しみましょう!

河治良幸

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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カタールワールドカップ2022 注目の初戦!日本×ドイツ

グループE

日本代表にとって大事な初戦となりますが、それはドイツ側にとっても同じです。やはり確実に勝点3を取って2試合目のスペイン戦に向かいたいでしょう。海外ブックメーカー、WilliamHILL(ウィリアムヒル)社の勝敗オッズは以下のようになっています。

  • ドイツ:1.44倍
  • ドロー:4.40倍
  • 日本:7.00倍

※ 2022年11月18日時点でのWilliamHILL社発表オッズを引用

かなりの確率でドイツが勝利すると見られているようです。客観的に極めて妥当なオッズだと思いますが、言い換えると日本にも勝機があることを示してもいます。

WilliamHill(ウィリアムヒル)のロゴ

ウィリアムヒルの日本・ドイツ戦のスコア予想オッズを見ると、「2-0ドイツ勝利:7.50倍」で一番低オッズとなっていて、次いで「1-0ドイツ勝利:8.00倍」となっています。

日本が勝点を得られる結果でのオッズでは「1-1ドロー:9.00倍」、勝利するとなると「1-0日本勝利:21.00倍」が一番低い数字となっています。

ドイツとの過去の対戦成績は1分け2敗。引き分けになった試合はドイツW杯直前の強化試合で、高原選手が2ゴールと大活躍した試合です。

ドイツ戦の過去戦績
2016年5月 △ 2-2(A)
 2014年12月 ● 0-3(H)

 

ドイツ代表メンバー(18大会連続20回目)

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FIFAランク11位、今大会の優勝オッズはブラジル、アルゼンチン、イングランド、フランス、スペインに次ぐ6番人気の11.00倍です。

日本とドイツが同居するグループEのグループステージ突破オッズは以下の通り。

スペイン 1.11倍
 ドイツ 1.14倍
 日本 4.33倍
 コスタリカ 7.50倍

※ 2022年11月16日時点でのWilliamHILL社発表オッズを引用

ドイツはスペインに次ぐ2番手の評価となっています。今大会に挑む26名のメンバーは以下の通り。

▼GK
マヌエル・ノイアー(バイエルン)
マルク・アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)
ケビン・トラップ(フランクフルト)

▼DF
アーメル・ベッラ・コトチャップ(サウサンプトン)
マティアス・ギンター(フライブルク)
クリスティアン・ギュンター(フライブルク)
ティロ・ケーラー(ウェストハム)
ルーカス・クロスターマン(ライプツィヒ)
ダビド・ラウム(ライプツィヒ)
アントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)
ニコ・シュロッターベック(ドルトムント)
ニクラス・ジューレ(ドルトムント)

▼MF/FW
カリム・アデイェミ(ドルトムント)
ユリアン・ブラント(ドルトムント)
ニクラス・フュルクルク(ブレーメン)
セルジュ・ニャブリ(バイエルン)
レオン・ゴレツカ(バイエルン)
マリオ・ゲッツェ(フランクフルト)
イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・C)
カイ・ハフェルツ(チェルシー)
ヨナス・ホフマン(ボルシアMG)
ヨシュア・キミッヒ(バイエルン)
ユスファ・ムココ(ドルトムント)
ジャマル・ムシアラ(バイエルン)
トーマス・ミュラー(バイエルン)
レロイ・サネ(バイエルン)

 

実力者たちによる高速プレッシングが肝のドイツ代表

ドイツが得意とするのは”ゲーゲンプレス”とも呼ばれる即時奪回も含めた激しいプレッシングで、その迫力は世界ナンバーワンでしょう。

バイエルン・ミュンヘンで欧州チャンピオンズリーグ優勝を果たしたナンス=ディーター・フリック監督が率いるチームはアタッカーには、

  • カイ・ハフェルツ(チェルシー)
  • レロイ・サネ(バイエルン・ミュンヘン)
  • トーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)
  • セルジュ・ニャブリ(バイエルン・ミュンヘン)
  • ヨナス・ホフマン(ボルシア・メンヒェングラートバッハ)
  • カリム・アデイェミ(ドルトムント)
  • 新鋭ジャマル・ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン)
  • 新鋭ユスファ・ムココ(ドルトムント)

らがいます。錚々たる精鋭揃いですが、組織としてボールを奪いに行く意識は徹底されており、そこには攻撃の中心だから特別扱いと言ったことがありません。理由は高い位置でボールを奪うことが、そのままフィニッシュやゴールに直結するというチームのコンセプトがあるからです。

不安材料は前線からチームを引っ張ってきたティモ・ヴェルナーが怪我でW杯欠場になったこと。代わりに選ばれたニクラス・フュルクルク(ブレーメン)は188cmの長身選手で、ポストプレーヤーを担える唯一のFWですが、19日の公開練習では別メニューだったことで、日本戦の出場が危ぶまれています。

 

攻撃のキーマンはハフェルツとムシアラ

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ドイツはおそらく4-2-3-1の前線に経験豊富なミュラーが入り、2列目は左からハフェルツ、ムシアラ、ホフマンか、あるいは左にサネ、右にニャブリと言ったスタメンが考えられます。

ミュラーは腰を痛めて長く休養していましたが、開幕戦に照準を合わせてコンディションを上げてきているようです。ただ、ハフェルツも”ゼロトップ”的なセンターフォワードやトップ下もできるので、前4枚の組み合わせは蓋を開けてみないと分からないところもあります。

それぞれに特長がありますが、危険なアタッカーはハフェルツです。190cmのサイズながら柔軟な左足のテクニックでボールを操り、タイミングを見極めた飛び出しやミドルシュートでゴールを襲います。アシスト能力も高く、ここを抑えれば大丈夫というのがないので、ディフェンスは難しい対応を強いられるでしょう。サネも左利きですが、動きのリズムはハフェルツとまったく異なります。二人ともに左足のFKを持っています。

19歳のムシアラも二列目から超絶技巧を発揮するアタッカーで、中央からもサイドからもドリブルから危険なフィニッシュに持ち込めます。ドイツのアタッカー陣は流動的ですが、中央を破ってくる仕掛けはムシアラならではで、ブンデスリーガでは二列目から前半戦だけで9得点を記録しているのは驚異的です。

 

日本戦の陣容予想

ハフェルツやムシアラに比べるとドリブラー色が強いのがニャブリで、前を向いてボールを持てば、必ず縦に仕掛けてラストパスやフィニッシュにつなげてきます。11月8日に行われたブレーメン戦ではハットトリックを記録しました。さらに合流直前のシャルケ戦でも吉田麻也を擁するディフェンスからゴールを奪っており、好調度合いで言えば最も警戒するべき選手かもしれません。

ボランチは司令塔のヨシュア・キミッヒとレオン・ゴレツカの”バイエルン・コンビ”がスタメン有力と思われますが、イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・C)も開幕直前のオマーン戦でキレのある動きを見せており、フリック監督は1ヶ月先の決勝まで見据えながら、日本戦のスタメンを決めていくことになります。おそらく日本対策というより、この大会に臨むファーストセットが明らかになる試合です。

左右のサイドバックは左がダヴィド・ラウム(ライプツィヒ)、右がルーカス・クロスターマン(ライプツィヒ)が候補となりますが、攻守のバランスを考えて、どちらかに最終ラインのマルチプレーヤーであるティロ・ケーラー(ウェストハム)が入る可能性もあります。基本的にラウムが攻撃的で、ビルドアップから高い位置を取ります。サイドアタッカーのホフマンが右サイドバックを担う場合は左サイドバックがケーラーになると予想されます。

つまりドイツは2センターバックに一人のサイドバックを加えた3枚が後ろに構えて、ビルドアップとリスクマネージメントの両方を行うので、サイドバックの一人は守備的な役割を担うわけです。

何れにしても、ビルドアップはボランチの一人が後ろに下がったり、左右サイドバックを同時に上げるなど、相手のプレッシャーに応じて可変できるので、日本としても前から守備のスイッチを入れる時、コンパクトなブロックを引いて待ち構える時をチームで明確に共有していかないと、ちょっとでも曖昧になると、どんどんボールを運ばれて厚みのある攻撃に持ち込まれるので要注意です。

 

守備陣の層も厚いが、ラウムの裏は日本の狙い目

センターバックはアントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)と二クラス・ジューレ(ドルトムント)のコンビがファーストセットと考えられますが、20歳のアルメル・ベラ・コチャプ(サウサンプトン)も台頭しており、7試合を戦い抜いていく層の厚さは十分です。

ただ、ジューレがややスピード対応に難があるため、カウンターから前田大然や浅野拓磨がジューレの脇側を狙って飛び出せれば、一気に守護神マヌエル・ノイアーとの1対1に持ち込める可能性もあります。

また左のラウムがかなり高い位置まで上がる分、裏返しで日本から見て右サイドを狙えばチャンスにつながる可能性はあります。ブンデスリーガで対戦経験のある堂安律によるとラウムは機敏性という部分ではあまり高くないので、十分に突いていける余地があるといいます。

日本としてはハイプレスであまり追いすぎると、そこを外されたところが危険ですが、引きすぎてもかさにかかって攻め込まれるので、100か0かではないバランスの共有が大事になってきます。

 

日本代表メンバー(7大会連続7回目)

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FIFAランク24位、今大会での優勝オッズは韓国、カメルーン、カタールと並んで24位タイとなる251.00倍です。日本代表として目標に掲げられているのはベスト8進出。そこに向けて強豪揃いのグループステージを戦うことになります。

前述の通り日本のグループステージ突破オッズは4.33倍で、グループ内では3番手の評価となっています。今大会の日本代表メンバー26名がこちら。

▼GK
1 川島永嗣(ストラスブール)
12 権田修一(清水)
23 シュミット・ダニエル(シントトロイデン)

▼DF
5 長友佑都(FC東京)
22 吉田麻也(シャルケ)
19 酒井宏樹(浦和)
3 谷口彰悟(川崎F)
2 山根視来(川崎F)
4 板倉滉(ボルシアMG)
16 冨安健洋(アーセナル)
26 伊藤洋輝(シュツットガルト)

▼MF/FW
7 柴崎岳(レガネス)
6 遠藤航(シュツットガルト)
14 伊東純也(スタッド・ランス)
18 浅野拓磨(ボーフム)
10 南野拓実(モナコ)
13 守田英正(スポルティング)
15 鎌田大地(フランクフルト)
24 相馬勇紀(名古屋)
9 三笘薫(ブライトン)
25 前田大然(セルティック)
8 堂安律(フライブルク)
21 上田綺世(セルクル・ブルージュ)
17 田中碧(デュッセルドルフ)
11 久保建英(ソシエダ)
20 町野修斗(湘南)

 

気になる選手のコンディション。日本のキーマンたちは初戦に間に合うか?

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日本は中盤の要である遠藤航と守田英正を欠く中でカナダ戦に臨み、1-2で敗れましたが、柴崎岳と田中碧の関係自体は9月のエクアドル戦よりも改善されていました。柴崎が中盤の底に位置して、田中が幅広く動くという二人の役割分担も良かったのはポジティブな要素です。ただ、おそらく遠藤は脳震盪からの回復プロトコルが最終段階まできていると伝えられているので、ドイツ戦に間に合うことも見込まれます。

より不安なのは守田で、ふくらはぎの痛みにより19日の練習には参加していなかったので、ドイツ戦は欠場になる可能性もあります。少なくとも試合当日から逆算すると、フルにプレーするのは難しいでしょう。

その場合に遠藤と柴崎でボランチを組むのか、田中が入るのか。誰がスタメンで出るにしても、体力的な消耗を想定すると5人の交代枠を使う可能性の高いポジションなので、3人にオプションとしてカナダ戦でボランチをテストされた鎌田大地も含めて、総合力で挑んでいくべきでしょう。

あと二人、気になるのは別メニュー調整が続いていた冨安健洋とコンディション不良により合流が遅れた三笘薫です。冨安は部分的には全体練習に加わりながら、慎重にコンディションをあげているのが見て取れますが、本人はドイツ戦に間に合うことを強調しています。

センターバックの候補はキャプテンの吉田麻也、膝の怪我から復帰した板倉滉、そしてカナダ戦でスタメンだった谷口彰悟、左サイドバックとの兼任である伊藤洋輝がおり、頭数という意味では十分に足りています。ただ、やはりドイツの強度に対抗するには冨安の復帰がひとつの鍵になります。

 

興味深いアタッカーの起用法。伊東の使い方に注目

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アタッカー陣は二列目が久保建英、鎌田大地、伊東純也になることが予想されますが、ブンデスリーガでドイツ代表の選手と戦い慣れている堂安律もキーマンです。

伊東が個人で縦に仕掛けて違いを生み出せるタイプであることを考えれば、あえてジョーカーとして残して、堂安に右のスタメンを託すのも有効でしょう。左は三笘が頼もしい存在ですが、コンディションの回復具合も見ながら、カナダ戦で得点を決めた相馬勇紀が流れを変えるカードとして起用されるかもしれません。

1トップは浅野拓磨か前田大然がスタメン、途中から上田綺世と見込んでいますが、ドイツに先制されて終盤に点を取りに行く必要が出た時に、2トップの使用もオプションとして考えられます。

またドローが4.40倍という数字もある通り、初戦で勝点3が欲しい試合ですが、一度リードされて追い付いた場合、同点で終盤を迎えた場合は無理に勝点3を取りにいくより、勝点1を確実に取ってコスタリカ戦に向かうプランも有効です。こうした終盤のマネージメントは森保監督のプランも含めて、チームで事前に共有して臨むべきでしょう。

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