カタールワールドカップ2022 アルゼンチン代表の展望【下薗昌記】 | ブクサカ

カタールワールドカップ2022 アルゼンチン代表の展望【下薗昌記】

ワールドカップ

カタールワールドカップ2022は日本時間11月21日(月)に開幕。12月19日(月)の決勝戦まで約1ヶ月間に渡って戦いが繰り広げられます。

3度目の優勝を目指す今大会のアルゼンチン代表をサッカーライターの下薗昌記さんに占っていただきました。

下薗 昌記

サッカーライター。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。ブラジルを中心に南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を中心にJリーグを取材しながら、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。訳書に「モウリーニョの本性―「言葉の男」のコトバから哲学を読み解く」(ベースボールマガジン)。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。日本テレビではコパ・リベルタドーレスの解説なども担当する。

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カタールワールドカップ2022 アルゼンチン代表の試合日程と放送予定

アルゼンチン代表のカタールワールドカップ本大会での試合スケジュールがこちら。いずれも日本時間での日程、放送予定です。

日時 対戦国 放送予定
11月22日(火)
19:00
サウジアラビア abema TV
11月26日(土)
4:00
メキシコ abema TV
11月30日(水)
4:00
ポーランド abema TV

 

ブックメーカー発表オッズの優勝オッズは6.50倍

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海外ブックメーカー・ウィリアムヒルが発表している「アルゼンチン代表の敗退ステージオッズ」は以下の通りです。

WilliamHill(ウィリアムヒル)のロゴ

GL敗退 8.00倍
 ベスト16敗退 3.75倍
 ベスト8敗退 3.40倍
 ベスト4敗退 4.50倍
 準優勝 9.00倍
 優勝 6.50倍

※ 2022年11月16日時点でのウィリアムヒル発表オッズを引用 

マラドーナを擁して2度目の世界王者に輝いた1986年のメキシコ大会以来、世界一の栄冠に手が届いていないアルゼンチンは有力な優勝候補としてカタールに乗り込みます。

南米予選では宿敵、ブラジルに次ぐ2位で本大会行きを決めましたが、ブラジルと並んで無敗だっただけでなく、2021年のコパアメリカでは決勝でブラジルを破って優勝。また、今年6月には南米王者として出場した「フィナリッシマ」で欧州王者のイタリアを3対0で下して初代王者に輝くなど、勝負強さも見せつけています。

コパアメリカ優勝に貢献し、アルゼンチンに28年ぶりの国際タイトルをもたらしたメッシへの依存度が長らく高かったアルゼンチンですが、リオネル・エスカローニ監督はロシア大会以降のチーム作りでメッシ任せのスタイルから脱却することに成功しました。

最大の強みはやはりその前線のタレント陣。メッシを筆頭にラウタロ・マルティネス(インテル)やアンヘル・ディマリア(ユヴェントス)で構成する3トップは大会屈指の顔ぶれで、パウロ・ディバラ(ローマ)も控えています。懸念材料は負傷を負っていたディマリアとディバラの回復ぶりになりそうです。

基本布陣は4-3-3ですが、メッシとマルティネスを2トップに配置するバリエーションも持ち合わせており、戦術的な理解度の高い選手も揃っています。

35試合無敗という戦歴が物語るように守備の安定度も際立っており、ブックメーカーWilliamHILL社発表の優勝オッズも1位のブラジルに次ぐ6.50倍となっているのも納得です。

世代交代にも成功し、盤石の状態でカタールに乗り込みたかったアルゼンチンにおいて、大会直前に中盤の軸として欠かせないジオヴァニ・ロ・チェルソ(ビジャレアル)が右足の手術のためメンバー外となったのはエスカローニ監督にとっても大きな誤算ですが、長らくワールドカップ本大会では不安を抱えていたCBについては安心できそうです。

ベテランのニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)とコンビを組むクリスティアン・ロメロ(トッテナム)の個の強さは際立っています。負傷の影響でロメロが調子を落としており、どこで入れるかは気がかりな点ではありますが、本来の力を発揮できれば安定した戦いに貢献するでしょう。

 

アルゼンチンのグループリーグ突破は視界良好

ウィリアムヒル社が発表しているアルゼンチンが所属するグループCの予選通過オッズがこちら。

アルゼンチン 1.08倍
ポーランド 1.91倍
メキシコ 1.91倍
サウジアラビア 7.00倍

※ 2022年11月16日時点でのWilliamHILL社発表オッズを引用

年齢的にも若手とベテランのバランスが良いアルゼンチンは、ブックメーカーのウィリアムヒルにおけるC組の突破予想も1.08倍と無風状態であることを示しています。

メキシコとポーランドは簡単な相手ではありませんが、チームの完成度とタレントの数でアルゼンチンがC組では頭ひとつ抜け出しているのは事実です。

 

初戦・サウジアラビア戦

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WilliamHILL社発表の90分勝敗オッズがこちら(11月16日時点)。

  • アルゼンチン:1.17倍
  • ドロー:6.50倍
  • サウジアラビア:19.00倍

優勝を目指すアルゼンチンにとってグループステージは通過点に過ぎませんが、グループCで2位通過に終わった場合、ラウンド16ではD組1位の可能性があるフランスと激突することになるだけに、グループステージは首位通過を目指したいところです。

メッシとも好連携を築いていたロ・チェルソが不在の上に、ロメロも間に合わない可能性があるサウジアラビア戦は、グループリーグ突破オッズが7.00倍という相手だけに確実に勝点3を手にしたいところです。

アジア最終予選では日本を上回り首位で通過したサウジアラビアですが、アジアの戦いでは基本的にボール保持で相手を上回り、能動的なサッカーを展開していました。

ただ、ロシア大会ではモロッコを率いてワールドカップを戦ったエルベ・ルナール監督は格上相手との戦いに向けて、より手堅い戦いも意識しています。

9月の親善試合ではエクアドルとアメリカに対していずれもスコアレスドローと守備の安定は見せていますが、前線の得点力は課題となるでしょう。

サウジアラビア戦の過去戦績
1988年7月 △ 2-2(H)
1988年7月 ○ 2-0(H)
1992年10月 ○ 3-1(H)
2012年11月 △ 0-0(A)

過去サウジアラビアに対しては2勝2分と相性がいいアルゼンチンですが、本大会での顔合わせは今回が初めてです。ウィリアムヒルの90分勝敗オッズでサウジアラビアの勝利は19.00倍に対してアルゼンチンの勝利は1.17倍となっています。

サウジアラビアの前線は得点力に課題を抱えているだけに、アルゼンチンの守備が大崩れすることは考えにくいことは確かです。

第2戦:メキシコ戦

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WilliamHILL社発表の90分勝敗オッズがこちら(11月16日時点)。

  • アルゼンチン:1.57倍
  • ドロー:3.80倍
  • メキシコ:6.00倍

17回目のワールドカップ出場となるメキシコは、本大会では7大会連続でベスト16で涙を飲んでいます。一見すると不名誉な数字ではありますが、裏を返すと7大会連続でグループステージを突破する勝負強さを秘めていると言えるでしょう。

2010年の南アフリカ大会でパラグアイを率いてベスト8入りを果たしたアルゼンチン人指揮官、ヘラルド・マルティーノ監督のもとで、北中米カリブ海の最終予選を2位で通過したメキシコですが、マルティーノ監督のチームづくりには批判や疑問の声が寄せられており、最大の課題は低調な得点数です。

攻撃の中心であるヘスス・マヌエル・コロナ(セビージャ)は負傷でメンバー外となり、ラウル・ヒメネスも万全でない状態でカタールに乗り込むことになります。

過去の対戦成績はアルゼンチンの15勝2敗6分。

メキシコ戦の過去戦績
(以下、直近4試合の戦績)

2015年9月 △ 2-2(A)
2018年11月 ○ 2-0(H)
2018年11月 ○ 2-0(H)
2019年9月 ○ 4-0(H)

直近の対戦成績はアルゼンチンがいずれも無失点で3連勝中と相性が良く、ウィリアムヒルの90分勝敗オッズではアルゼンチンが1.57倍、メキシコが6.00倍となっています。自力を見ればこれは順当な評価と言えるでしょう。

ただ、メキシコが初戦のポーランド戦でいかなる成績を収めているかによって2戦目の戦略も変わってくることになります。

ウィリアムヒルのグループCの予選通過オッズでポーランドの1.91倍に対して、メキシコも1.91倍と両者の力は完全に拮抗しているため、どんな結果になっても不思議はありません。

仮にメキシコがポーランドに引き分け以上の成績を収めていれば、アルゼンチンに対しては最低でも勝ち点1を稼ぎ、3試合目のサウジアラビア戦に挑むシナリオもありそうです。母国を知り尽くすマルティーノ監督だけに、引き分けが3.80倍というオッズは順当な数字と言えそうです。

 

第3戦:ポーランド戦

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WilliamHILL社発表の90分勝敗オッズがこちら(11月16日時点)。

  • アルゼンチン:1.70倍
  • ドロー:3.60倍
  • ポーランド:5.50倍

グループステージ3試合目のポーランド戦はそれまでの2試合を踏まえた戦いになるため現状での予想は困難ですが、過去の対戦成績ではアルゼンチンが6勝2分3敗とかなり優位な戦歴を残しています。

ただ、アルゼンチンが既にグループステージを突破しており、逆にポーランドがこの試合に可能性を残して挑む状況ならばアルゼンチンの勝率は下がることになりそうです。

守備陣にやや不安はあるものの欧州予選でプレーオフを勝ち上がってきた粘りは備わっており、絶対的なエースであるロベルト・レバンドフスキにはアルゼンチンの守備陣も手を焼くはずです。

過去の対戦成績はアルゼンチンの6勝3敗2分。古い対戦が多いため参考外かもれません。

ポーランド戦の過去戦績
(以下、直近4試合の戦績)

1981年10月 ● 1-2(H)
1984年1月 △ 1-1(H)
1992年11月 ○ 2-0(H)
2011年6月 ● 1-2(A)

 

決勝トーナメントに進出した場合の組み合わせ

アルゼンチンがC組を突破すれば、次に待つラウンド16の相手はD組の1位か2位となります。そのグループDの顔ぶれがこちら。

  • フランス
  • デンマーク
  • オーストラリア
  • チュニジア

D組で1位の本命は前回王者のフランスが最有力ですが、フランスは負傷者が相次いでいることもあり、決してチームのバイオリズムが良い状態とは言えません。

2020年のEUROでベスト4に進出したデンマークは欧州予選を首位通過しており、1位で勝ち上がってきてもサプライズとは言えないでしょう。

またチュニジアもダークホースとして勝ち上がってくる力を秘めています。大陸間プレーオフに回ってペルーを下して本大会に駒を進めたオーストラリアはやや地力で劣るというところでしょうか。

ロシア大会でもラウンド16でフランスに競り負けているアルゼンチンだけに、このタイミングで前回王者と対戦するのは避けたいシナリオではありますが、最後のワールドカップを公言しているメッシに悲願の世界一を取らせたいというチーム全体の団結力も決勝トーナメントを勝ち上がる追い風になるはずです。

実績あるアタッカーが揃うアルゼンチンですが、22歳のフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)ら若い力の台頭も不可欠になります。気温が高い環境でのサッカーは南米予選でも慣れているアルゼンチンですが、総力戦になるのは不可欠で、新たな戦力にも注目です。

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