カタールワールドカップ2022は日本時間11月21日(月)に開幕。12月19日(月)の決勝戦まで約1ヶ月間に渡って戦いが繰り広げられます。
前回大会王者、大会2連覇を目指すフランス代表の今大会を河治良幸さんに占っていただきました。
カタールワールドカップ2022 フランス代表の試合日程と放送予定
フランス代表のカタールワールドカップ本大会での試合スケジュールがこちら。いずれも日本時間での日程、放送予定です。
日時 | 対戦国 | 放送予定 |
11月22日(火) 4:00 |
オーストラリア | NHK総合 abema TV |
11月26日(土) 1:00 |
デンマーク | NHK総合 abema TV |
11月30日(水) 0:00 |
チュニジア | abema TV |
ブックメーカー発表オッズの優勝オッズは7.00倍
海外ブックメーカー・bet365が発表している「フランス代表の敗退ステージオッズ」は以下の通りです。
GL敗退 | 7.00倍 |
ベスト16敗退 | 5.50倍 |
ベスト8敗退 | 3.25倍 |
ベスト4敗退 | 5.00倍 |
準優勝 | 6.50倍 |
優勝 | 7.00倍 |
※ 2022年11月6日時点でのbet365発表オッズを引用
前回大会の優勝国であり、引き続きディディエ・デシャン監督が率いるチームには二連覇の期待がかかります。昨年夏の欧州選手権は準々決勝で敗退という憂き目を見ましたが、その直前に代表復帰したカリム・ベンゼマ(レアル・マドリード)もディディエ・デシャン監督のチームにフィットして、しかも世界最高選手の証であるバロンドールを獲得しました。
キリアン・エムバペ(PSG)やアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)との併用も構築されおり、さらに経験豊富な長身FWオリビエ・ジルー、新鋭のアタッカーであるクリストファー・エンクンク(ライプツィヒ)との競演が期待されます。3トップをベースとしますが、W杯欧州予選を首位突破した後に行われたネーションズリーグの試合では4-3-1-2で、トップ下にグリーズマンを起用する形も使われています。
ブックメーカーbet365の優勝オッズは7.00倍で、1位のブラジルより若干落ちますが、優勝候補であることは間違いないでしょう。ただ、開幕前に多くの国が怪我人に悩まされている中でも、フランスは最もそのダメージがある国でもあります。中盤ではエンゴロ・カンテ、ポール・ポグバという前回大会の優勝経験者で、まだまだ働き盛りの主力が怪我により最終メンバーから外れました。
しかし、オーレリアン・チュアメ二、エドゥアルド・カマヴィンガ(ともにレアル・マドリード)というUEFAチャンピオンズリーグ王者の中盤でしのぎをけずる若いコンビが、十分に穴を埋めることが期待されるのと同時に、ブレイクを果たす大会になりえます。
実はもう一人、大会参加に黄色信号が点っていた主力がいます。センターバックのラファエル・バラン(マンチェスター・U)です。キャプテンのGKウーゴ・ロリス(トッテナム)に次ぐリーダー格であるバランが間に合ったことは守備の統率力だけでなく、チームを支える意味でも大きいでしょう。
フランスの決勝トーナメント進出はもはや鉄板状態
フランスが所属するグループDの予選通過オッズがこちら。
フランス | 1.06倍 |
デンマーク | 1.40倍 |
オーストラリア | 3.50倍 |
チュニジア | 4.00倍 |
※ 2022年11月6日時点でのWilliamHILL社発表オッズを引用
前線から中盤、最終ラインとハイレベルに揃い、年齢的にもバランスが取れているのはフランスの強みです。ファーストセットと見られる11人だけでなく、誰が出ても水準を下げることなく、スペシャルな武器も発揮できるメンバー構成となっています。
ブックメーカーのウィリアムヒルにおけるD組の突破予想が⒈06倍と圧倒的であるのも頷けます。ただ、オーストラリアとデンマークは前回のW杯でも同組で対戦していることが、どう影響するかは興味深いところです。
初戦・オーストラリア戦
WilliamHILL社発表の90分勝敗オッズがこちら。
- フランス:1.25倍
- ドロー:5.50倍
- オーストラリア:13.00倍
対戦成績は不安スの3勝1敗1分です。
オーストラリア戦の過去戦績(以下、直近4試合の戦績) |
|
2001年6月 | ● 0-1(H) |
2001年11月 | △ 1-1(A) |
2013年10月 | ○ 6-0(H) |
2018年6月 | ○ 2-1(H) |
どんな大会でも初戦は非常に大事ですが、グループリーグ突破オッズ3.50倍のオーストラリアということもあり、確実に勝点3を取って、残る2試合を有利にしていきたいところです。
大陸間プレーオフで南米王者のペルーを退けたオーストラリアは集中力が高く、格上の強豪相手にチャレンジャースピリットを出していけるチームだけに、決して侮れません。2018年も初戦の相手でフランスが2-1で勝利しましたが、かなり難しい試合でした。グリーズマンのPKで先制しましたが、直後にPKで同点とされ、終盤に相手のオウンゴールでどうにか勝利をものにしています。
セットプレーの得点力もあるので、フランスとしては試合の序盤に嫌な位置でFKを与えないなど、少し手堅く入ることも大事でしょう。もちろん、あまりに消極的になってしまうと、勇敢なオーストラリアにつけ込まれることになるので、そのバランスが大切です。フランスが1.25倍という試合オッズ通り、盤石に勝点3を獲得できるかどうかも注目ですが、気になるのは得点者です。
上記の通りバロンドールのベンゼマはもちろん、前回大会で大ブレイクしたエムバペ、更にはグリーズマン、エンクンク、ジルーなどきら星のごときアタッカーが揃っており、サイドの切り崩し役であるウスマン・デンベレ(バルセロナ)やキングスレー・コマン(バイエルン・ミュンヘン)もミドルシュートによる得点力を備えています。
ただ、W杯は意外とコーナーキックからディフェンスの選手が最後のゴールを記録することも多く、センターバックのダヨ・ウパメカノ(バイエルン・ミュンヘン)あたりもファーストゴールの候補と見られます。
第2戦:デンマーク戦
WilliamHILL社発表の90分勝敗オッズがこちら。
- フランス:1.95倍
- ドロー:3.40倍
- デンマーク:4.00倍
対戦成績はフランスの8勝7敗2分でほぼ互角です。
デンマーク戦の過去戦績(以下、直近4試合の戦績) |
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2015年10月 | ○ 2-1(A) |
2018年6月 | △ 0-0(A) |
2022年6月 | ● 1-2(H) |
2022年9月 | ● 0-2(A) |
2試合目の相手デンマークは昨年の欧州選手権でベスト4に輝くなど現在、欧州勢で最も波に乗る国のひとつです。その大会中に心停止で倒れ、命の危険にもさらされた司令塔のクリスチャン・エリクセンが奇跡的な復帰を果たしており、チーム一丸という意味では初戦のオーストラリアに勝るとも劣らないものがあります。何より直近のネーションズリーグの試合ではデンマークがフランスに連勝しており、彼らにはフランスに対する苦手意識が全くありません。
ブックメーカーのウィリアムヒルではフランスの勝利が1.95倍、デンマーク勝利が4.00倍となっていますが、筆者はもっと接近していると見ています。いずれにしてもデンマークはD組突破オッズがフランスに次ぐ1.40倍となっており、順当なら1位と2位を決める大一番となります。ただし、ここで勝ちか負けの決着がつくということは、仮に両者が初戦を勝利していたとしても、負けた側は3試合目に突破が持ち越されることになります。
フランスとしては決勝まで7試合を戦うことを想定すれば、3試合目は主力を休ませながら、それまで出番の無い選手にチャンスを与えて、ノックアウトラウンドに向けて選手層を上げておきたいでしょう。それは前回のラウンド16を超えたいデンマークも同じですが、優勝候補のフランスが3試合目に必要以上のパワーを割くことで、その後の戦いに少なからず影響が出てくるリスクはあります。
もちろん、このカードは引き分けの可能性もかなりあります。勝点3が理想ではありますが、ここで確実に勝点1を取って、突破は確定しなくても有利な状況で3試合を迎えるという算段です。
どの意味でも、引き分けが3.40倍というのは妥当なオッズでしょう。ただ、あくまで1試合目でフランスがオーストラリア、デンマークがチュニジアに勝利していたらの話です。もし、どちらかが初戦で勝点を落としていれば、心理的に追い込まれている分、さらに激しい試合になる可能性があります。
第3戦:チュニジア戦
WilliamHILL社発表の90分勝敗オッズがこちら。オッズは第1戦が狩猟した11月24日時点のものです。
- チュニジア:10.00倍
- ドロー:4.50倍
- フランス:1.35倍
チュニジア戦の過去戦績 |
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1978年5月 | ○ 2-0(H) |
2002年8月 | △ 1-1(A) |
2008年10月 | ○ 3-1(H) |
2010年5月 | △ 1-1(A) |
3試合目のチュニジア戦はそれまでの2試合の結果がプランに大きく影響するため、現時点で予想するのは非常に難しいです。ただ、過去4試合の対戦でフランスが2勝2分とかなり分が良いのは確かです。
すでにグループリーグ突破を決めて、それまで出番の無かった選手にチャンスを与えながら、1位を狙うというのがデシャン監督の描く理想の展開でしょう。もちろん、突破に黄色信号が点った状況であれば、組織的な守備を強みとするチュニジアに勝利する難易度は上がります。
前回王者のフランスは“勝利のメンタリティ”が根付いている国ではありますが、選手一人ひとりの主張が強く、プライドも高いので、グループステージで大苦戦するようなことがあると、チームの雰囲気が悪くなる危険があります。
これは同じ欧州の強豪国であるオランダにも表れやすいですが、チュニジア戦は置かれた状況によって”自滅“もありうるというのは踏まえておく必要があります。もちろん、その時点でチュニジアが突破の可能性を残しているかも、勝敗のオッズに大きく関わるポイントになります。
決勝トーナメントに進出した場合の組み合わせ
無事にフランスがD組を突破した場合、ラウンド16の相手はC組の1位か2位となります。1位の本命はアルゼンチンと想定できますが、7大会連続でベスト16のメキシコ、前回大会は期待を裏切るグループステージ敗退となったポーランドも有力です。
フランス人のエルヴェ・ルナール監督が率いるサウジアラビアも下馬評では4番手と見られますが、中東開催ということで、欧州勢より早めに合宿を行なっているアドバンテージを生かして突破してくるかもしれません。
当然フランスとしてはアルゼンチンとこの段階で当たるのを避けたいでしょうが、メキシコが直接対決でアルゼンチンとほぼ互角であることや、ポーランドは守備が非常に堅い上に、レヴァンドフスキというスーパーエースを擁していることを考えでも、必ずしもアルゼンチンが1位で突破してくるとは限りません。フランスができることは可能な限り1位でD組を抜けて、もしアルゼンチンがC組の2位になったら仕方がないというスタンスでいくしかないでしょう。
そこから先は勝ち上がってくるライバルが読めませんが、大会前の準備期間が短いので、前回王者のフランスであっても、戦いながらチームの完成度を上げていく流れになるでしょう。つまり、勝ち上がるほどにチームが成長するということです。もちろん体力的な疲労や怪我のリスクはありますが、26人の選手、特にカンテ、ポグバに代わるボランチのチュアメニやカマヴィンガ、初の大舞台となるFWエンクンクなどが、どれだけチームの力となり、自信を付けているか。
今大会はどこの国もそうですが、フランスはタレント力が高いだけに、チームとして完成度が上がった時のパフォーマンスが非常に楽しみです。