2022-23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの組み合わせ抽選が日本時間8月26日に行われ、いよいよ9月7日、8日にグループリーグ初戦を迎えます。
大物選手の移籍もあり、より楽しみも増した大会開幕を前に、今季も中継実況を務める西岡明彦氏に展望を語っていただきました。
取材・編集:永田淳(ブクサカ編集部)
- 海外ブックメーカー発表/チャンピオンズリーグ優勝オッズ
- 優勝争いの中心はイングランド、スペイン勢。バイエルンとPSGも上位進出を狙う
- 【グループA】リヴァプールの次をアヤックスとナポリが争う
- 【グループB】アトレティコは変化の少なさがどう出る?注目はレヴァークーゼン
- 【グループC】ムービング・バイエルンが本命。2位争いはバルサがリードと予想
- 【グループD】トッテナムの勝ち抜けは堅い。鎌田のフランクフルトは2位に食い込めるか
- 【グループE】経験不足のミランを”常連”のチェルシーが上回る
- 【グループF】レアルとライプツィヒが有力。セルティックは2強に挑む
- 【グループG】シティ勝ち抜けは間違いなし。主役は新エースのハーランド
- 【グループH】PSGの突破に死角なし。ユーヴェのオッズ評価は高すぎる?
- 優勝は今年こそマンチェスター・Cと予想。バイエルンにも注目
海外ブックメーカー発表/チャンピオンズリーグ優勝オッズ
WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表のUEFAチャンピオンズリーグ優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | マンチェスター・C | 3.50倍 |
2 | リヴァプール | 6.00倍 |
3 | PSG | 6.50倍 |
4 | バイエルン・ミュンヘン | 7.00倍 |
5 | レアル・マドリード | 10.00倍 |
6 | チェルシー | 17.00倍 |
トッテナム | 17.00倍 | |
8 | バルセロナ | 21.00倍 |
9 | アトレティコ・マドリード | 34.00倍 |
10 | ユヴェントス | 41.00倍 |
11 | インテル | 51.00倍 |
ドルトムント | 51.00倍 | |
13 | ミラン | 67.00倍 |
14 | ディナモ・ザグレブ | 101.00倍 |
アヤックス | 101.00倍 | |
ライプツィヒ | 101.00倍 | |
17 | ポルト | 151.00倍 |
ナポリ | 151.00倍 | |
19 | ザルツブルク | 201.00倍 |
20 | セルティック | 251.00倍 |
レンジャーズ | 251.00倍 | |
セビージャ | 251.00倍 | |
フランクフルト | 251.00倍 | |
マルセイユ | 251.00倍 | |
レヴァークーゼン | 251.00倍 | |
26 | ベンフィカ | 301.00倍 |
27 | クルブ・ブルッヘ | 501.00倍 |
スポルティング・リスボン | 501.00倍 | |
29 | コペンハーゲン | 751.00倍 |
30 | シャフタール・ドネツク | 1001.00倍 |
マッカビ・ハイファ | 1001.00倍 | |
プルゼニ | 1001.00倍 |
※オッズは2022年8月29日時点のWilliamHill公式サイト(UEFAチャンピオンズリーグ 2022/23 – 優勝)から引用
近年はポット分けがされていたり、同国クラブが同グループに入らない、同一日に試合とならないようにされていることもあり、いわゆる”死のグループ”はなくなってきているので、今回も組み合わせ抽選結果にそれほど大きな驚きはありませんでした。
- バルセロナへ移籍したレヴァンドフスキが古巣バイエルンと対戦するグループC
- マンチェスター・Cへ加入したハーランドがドルトムントと当たるグループG
を楽しみにしているファンが多いのではないでしょうか。
ビッグクラブでポット3に入ったインテル、ドルトムントがどこに入るかが注目されていた中で、インテルがバイエルンとバルセロナの組に入ったので、そこが一番注目が集まるグループにはなると思います。
優勝争いの中心はイングランド、スペイン勢。バイエルンとPSGも上位進出を狙う
最近の傾向で言えば、優勝争いは戦力や選手層からプレミアリーグ、ラ・リーガ勢が優位で、そこにバイエルンとPSGが加わるという構図でしょう。
今季の補強を見ていても、プレミアリーグクラブのお金の使い方はすごいので、シティとリヴァプールがオッズで上位に挙げられるのは納得できます。
前回覇者レアル・マドリードの10.00倍は厳しい評価だと思いますが、連覇が難しい大会で、これまでのジンクスも考慮されているのではないでしょうか。
前回の優勝は、ラッキーや神がかり的な劇的勝利も続いてのものでした。それも実力があってのものではありますが、ライバルクラブが2年続けて同じことをさせないようレアルの強みを消しにくると思いますから、簡単な戦いにはならないと思います。
ここからはグループごとに展望していきます。
【グループA】リヴァプールの次をアヤックスとナポリが争う
グループ1位オッズ | |
リヴァプール | 1.40倍 |
アヤックス | 6.50倍 |
ナポリ | 7.00倍 |
レンジャーズ | 13.00倍 |
リヴァプールの1位は堅いでしょう。
リヴァプールはプレミアのスタートでつまづきましたが、普通に考えれば今後調子を戻してくるでしょう。マネの代わりとなるヌニェスがプレミアリーグでいきなり退場となりましたが、復帰後は期待できます。それよりも中盤から後ろの負傷者が気になっています。
アヤックスはアントニーが移籍となると、ナポリと良い勝負になるのではないでしょうか。私はそれでもアヤックスが勝ち抜けると予想しますが。
アヤックスのクラブの特性として、選手が引き抜かれていくというのはあることですし、ステップアップを狙う若い選手のアピールの場になるのがこのチャンピオンズリーグでもあるので、楽しみにしています。
レンジャーズは13.00倍ですが、昨季ヨーロッパリーグで良い結果を残したことで、自信を持った戦いができそうです。
【グループB】アトレティコは変化の少なさがどう出る?注目はレヴァークーゼン
グループ1位オッズ | |
アトレティコ・マドリード | 1.91倍 |
レヴァークーゼン | 4.00倍 |
ポルト | 4.00倍 |
クルブ・ブルッヘ | 11.00倍 |
アトレティコは安泰ではないと感じています。シメオネ監督が手堅い戦いを続けてきましたが、マンネリもあるのではないかと思います。
近年のビッグクラブは、選手も監督も誰かが引き抜かれたらその資金で他の選手を獲得するのが主流ですが、アトレティコは変化しないようにしていることが感じられます。現状に信頼があるからではあると思いますが。アトレティコは実力があると思いますが、混戦も予想されます。
レヴァークーゼンはエースのシックに移籍の話もありますが、昨季から良い戦いをしていて、縦に速いスタイルは欧州カップ戦に合っていると思うので、楽しみな存在です。普段の国内リーグでの戦い方をそのまま持ち込めるチームは強いと思います。
【グループC】ムービング・バイエルンが本命。2位争いはバルサがリードと予想
グループ1位オッズ | |
バイエルン・ミュンヘン | 1.73倍 |
バルセロナ | 2.75倍 |
インテル | 6.50倍 |
プルゼニ | 101.00倍 |
バイエルンはレヴァンドフスキが抜けましたが、マネが加わって各選手の動きが速くなっています。
タイプが違うFWの入れ替えで、周囲からも合うのか?と思われてもいたと思いますが、ブンデスリーガ開幕から見ていると「ナーゲルスマンはもともとこういうサッカーがしたかったのかな」と思わせる戦いぶりです。バイエルンでの監督1年目はまず結果を出して、2年目は自分のカラーを出せるようになっています。
バイエルンはリベリ-ロッベン時代から、両サイドをスピードで崩して最後はレヴァンドフスキのようなストライカーが点を取るスタイルでした。昨季もコマン、ニャブリ、ザネといったサイドの選手が崩して、中央に入れる形。
しかし今季は、外を使うというよりは中で縦に速く崩す展開が多いです。
ムービングスタイルのFWであるマネを獲得して見せているサッカーは、最前線が変わっただけなのにまったく違うものになっていて、とても良い状態です。バルセロナよりバイエルンのオッズが優位とされているのは妥当だと思います。
新エースが早速結果を出しているバルセロナも状態良好
バルセロナはレヴァンドフスキがフィットしているのはすごいな、さすがだなと感じています。合う選手を連れてきて、フィットさせて結果を出させるのは素晴らしいですね。
ラ・リーガ初戦こそスコアレスドローでしたが、続く2戦は4得点ずつ挙げて勝利。新エースは2ゴールずつ決めて早くもその力を見せつけているので、このチャンピオンズリーグにも良い形で入っていくのではないでしょうか。バイエルンとの一戦は楽しみですね。
ルカク離脱が痛手のインテルは2強に届かずか
2チームに比べてインテルは少し戦力が落ちます。ルカク、ラウタロ・マルティネスがいて、ジェコ、コレアが控える前線は充実していますが、中盤でゲームをつくる選手がおらず、カウンターというよりは”放り込み”のイメージがあります。
ルカクで何とかなっているところもありましたが、国内リーグで負傷離脱してしまったので、より中央でアクセントをつけられる選手が欲しくなる。チャルハノール、ヴァレッラはそういったタイプではなく、そこが欠けている印象です。
先日実況担当したセリエAのラツィオ戦でも苦労しているインテルを見ているので、バイエルンやバルセロナの質を上回る戦いをするのは難しいと見ています。
【グループD】トッテナムの勝ち抜けは堅い。鎌田のフランクフルトは2位に食い込めるか
グループ1位オッズ | |
トッテナム | 1.50倍 |
マルセイユ | 6.50倍 |
フランクフルト | 6.50倍 |
スポルティング・リスボン | 7.50倍 |
オッズでのスパーズ(トッテナム)の評価は妥当でしょう。カウンターをベースとしている中で、
- ソン・フンミン
- ハリー・ケイン
- クルゼフスキ
この前線3人で攻撃をつくれてしまうのは魅力です。中盤から後ろは、その3人を活かすための守備をしますし、コンテ監督はサボることを絶対に許さない。
過去にモウリーニョを連れてきたように、似た形を志向してきたクラブでもあるので、その色を監督も選手もよくわかっています。
戦い方も欧州のカップ戦向きではあると思うので、1位で抜けるでしょう。
縦の速さはフランクフルトにも。W杯イヤーの鎌田が今季も欧州の舞台でタクトを振るう
フランクフルトは一番のキーマンだったコスティッチが抜けたのは痛いですし、戦力的に今大会の中では“小粒感”があります。
スパーズ以外の3クラブは接戦でもう一枠を争うことになるでしょう。
その中で、素早く攻めるサッカーで昨季ヨーロッパリーグを制したフランクフルトがどんな結果を残せるか。鎌田は移籍の話も出ているようですが、信頼されて使われているので、チャンピオンズリーグの舞台でも彼らしいプレーを見せてもらいたいですね。
【グループE】経験不足のミランを”常連”のチェルシーが上回る
グループ1位オッズ | |
チェルシー | 1.36倍 |
ミラン | 3.75倍 |
ザルツブルク | 13.00倍 |
ディナモ・ザグレブ | 51.00倍 |
ミランは昨季セリエAで優勝して良い選手もいますが、若いチームです。欧州舞台での経験豊富な選手はジルーぐらいの印象です。その点からも、常連であるチェルシーが1位抜けの可能性が高いと見ます。
チェルシーはトゥヘル監督就任以降、良くない方に向いている状態だとは思います。就任当初は手堅い戦いをしていたものの、時間の経過とともにその強みを失いつつある印象が強いです。
とはいえ、このグループの相手との比較で言えば、一枚上手ではある。メンバーを考えても、自分たちの状態が悪ければ引き分けるかもしれないけれど、負けるまではいかないでしょう。
相手どうこうより、チェルシーのコンディション次第と言えるでしょう。
【グループF】レアルとライプツィヒが有力。セルティックは2強に挑む
グループ1位オッズ | |
レアル・マドリード | 1.25倍 |
ライプツィヒ | 5.00倍 |
セルティック | 13.00倍 |
シャフタール・ドネツク | 67.00倍 |
優勝オッズでは10.00倍と評価が低めのレアルですが、グループリーグでは1.25倍となっています。戦力はもちろん、大舞台での戦いに対しても不安のないクラブですから、オッズ通り順当に勝点を積み上げることになるでしょう。
ラ・リーガでも失点はありますが、開幕から3連勝と勝点を重ねており、グループリーグ突破に疑いの余地はありません。
注目の指揮官テデスコ率いるライプツィヒ。レアルとの一戦は大注目
ライプツィヒはもう少しオッズ人気があっても良いと思います。
昨季はシーズン途中で監督交代がありましたが、テデスコ監督になってからは上向きでした。エンクンクをはじめ主力クラスの移籍もあまりありませんでしたし、今年は期待できそうです。
テデスコは選手としての実績はありませんが、それでも選手を納得して動かすだけの戦術眼がある。欧州をけん引する次の世代の指揮官だと思いますし、レアルとも良い勝負になるでしょう。
スコットランドで好調の日本人選手は最高峰の舞台でもその力を示せるか
古橋がリーグ開幕から活躍しているセルティックですが、国内リーグでの戦いがチャンピオンズリーグでもできるかどうか。前田や旗手といった他日本人選手のプレーにも注目が集まります。
セルティックとレンジャーズが揃っての本戦出場は15年ぶりということでスコットランドでは盛り上がっていると思いますが、国内では自分たちペースでの試合ばかりのチームが、レアルやライプツィヒといったクラブを相手にどう戦えるか。
国内で格上と戦う経験値のないチームだけに、そこが不安要素になります。
【グループG】シティ勝ち抜けは間違いなし。主役は新エースのハーランド
グループ1位オッズ | |
マンチェスター・C | 1.25倍 |
ドルトムント | 6.00倍 |
セビージャ | 9.00倍 |
コペンハーゲン | 51.00倍 |
ドルトムントも悪くないと思いますが、ここはシティが1位でしょう。新シーズンも順調で、ハーランドも早速結果を残し始めています。
昨季まではターゲットマンがいない中で、最前線に中盤の選手を置いたりもしていましたが、ここでようやくどっしり構えられる選手が加わりました。
ハーランドはドルトムントに加入したシーズンもそうでしたが、新たなチームでフィットするのが早い選手なので、今大会でもうまくいくと予想します。
この舞台でもボールを持ちながら崩していけるというのは、このメンバー、この監督だからできること。その戦いを見せてもらいたいと思います。
【グループH】PSGの突破に死角なし。ユーヴェのオッズ評価は高すぎる?
グループ1位オッズ | |
PSG | 1.36倍 |
ユヴェントス | 3.50倍 |
ベンフィカ | 13.00倍 |
マッカビ・ハイファ | 101.00倍 |
PSGは、国内リーグを余裕を持って戦える環境であるというのはプラス要素です。
リーグアンとチャンピオンズリーグでは戦い方が変わるというのはセルティックと同じ懸念ではありますが、メンバーの顔ぶれと過去の実績を考慮すれば、勝ち抜けに対する不安はありません。
近年では欧州の大会で良いところまでは進んでも、主力のコンディション問題もあってタイトルには届いていませんから、このグループリーグ突破の先はコンディション面がカギを握るのではないでしょうか。
ユヴェントスはここでトップグループに踏みとどまれるのか?
ディバラが抜けたユーヴェは戦力ダウンの印象があり、次の”新しいユーヴェ”で欧州タイトルを狙うとなると簡単ではないと考えています。
ディバラが抜けた後にディ・マリアの獲得では、世代交代も進まない。そういったマネジメントの問題もあり、スケールダウンしてしまっているようにも見えます。
セリエAでも良いスタートではありませんでしたし、ミラン、インテル、ローマ、ラツィオなどに比べると物足りない印象です。
ヴラホヴィッチや新加入コスティッチのセルビア代表ラインでの得点は期待でき、グループリーグ突破は問題ないだろうと思いますが、その先の戦いには不安が残ります。
優勝は今年こそマンチェスター・Cと予想。バイエルンにも注目
優勝予想は、今年こそマンチェスター・Cです。あのメンバー、あの監督だからこそできるサッカーで、頂点を獲ると予想します。
バイエルンも今季開幕からの内容を見ていると、良い状態だと思っています。レヴァンドフスキが抜けたことで、誰かひとりへの依存度が高い状況でなくなっているのもポジティブな要素です。リヴァプールよりもバイエルンの可能性が高いのではないかと考えています。
再び始まるチャンピオンズリーグも見どころはたくさんありますから、開幕が今から楽しみです。