2022-23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグもいよいよ決勝を残すのみとなりました。6月11日に行われるファイナル、マンチェスターCとインテルの決勝戦はどんな試合になるのか。
準決勝展望で決勝進出の2チームを的中させた西岡明彦氏に、今回も展望を語っていただきました。
海外ブックメーカー発表/チャンピオンズリーグ決勝・優勝オッズ
イギリス大手スポーツブックメーカー、WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表の決勝開催直前の優勝オッズがこちらです。
マンチェスター・C | 1.20倍 |
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インテル | 4.33倍 |
※オッズは2023年5月31日時点のWilliamHill公式サイト(UEFAチャンピオンズリーグ 2022/23 – 優勝)から引用
マンチェスター・C(シティ)が1.20倍で、インテルが4.33倍。決勝でこれだけオッズに差がつくのは珍しいのではないでしょうか。
私はオッズ通りシティが優勝すると予想します。
良い状態で臨めそうなファイナルは両者の特徴が出る戦いに
両チームとも、ともに準決勝を勝ち上がった頃の調子がすごく良くて、現在も万全に近いと思います。最近のシティはその後の試合で選手を休ませたりもしています。それはこの決勝を睨んでなのかなと思います。
どちらも良い状態で、最後の一発勝負をすることになるのではないかと思っています。
どちらのチームもスタイルがはっきりしているので、多少のトラブルであれば、代わりがきく選手が揃っているのかなと思います。
試合展開としては、シティがボールを保持して攻めるけれど、攻めきれなければインテルのカウンターが効くようになる、というものを考えています。
シティはどこまで攻撃の形を作れるか、シュートレンジまで運べるかがポイントになりそうです。
シティのキープレイヤーは攻撃を司るデ・ブライネ
注目選手は、シティは「もちろんハーランド」と言いたいところですが、それがすべてではないチームなので、ケヴィン・デ・ブライネです。
彼がアーリング・ハーランドの近くでボールを持って前を向けることで、他の選手も前に出て行けるようになります。
他の中盤の選手もすごく動くため、デ・ブライネだけがマークを受けてプレーできないということにもならないので、効果的な仕事はできるでしょう。インテルの堅い守備をこじ開けられるかどうかは、彼のコンディション、パフォーマンスによるところが大きいかなと思っています。
彼のところで変化が付けられれば、両ワイドも浮いてくる。インテルがそこを警戒しすぎると、中央のハーランドや、ベルナルド・シウバのところでの仕掛けもできる。そう考えると、デ・ブライネのところの収まり、彼にどれだけボールが入るかによって、前もあって、サイドもあるというシティの攻撃がうまく回るポイントになると考えています。
インテルの注目は攻撃の起点になるジェコ
インテルは中盤でボールを持ってという形ではないので、エディン・ジェコがポイントになりますね。
インテルの攻撃は、一番前のジェコにボールを入れた瞬間に周りが走る、追い越していくという動きが徹底されています。ジェコのポストプレーに合わせるというより、ボールが入る時に、一気にジェコの背後のスペースまで走るような動きです。
シティディフェンス陣の視線がジェコに集まった瞬間に、裏や外でのサポートではなく、前に追い越していく。手数を掛けずに前、前へというスタイルが確立されているんです。
ジェコのところで潰されるのか、キープしたり、意図する落としができるかどうか。それができれば、インテルの攻撃も形にはなるかなという気がします。そもそもそのボールが入らないとか、潰されるということになると、かなり厳しくなるでしょう。
ロメル・ルカクも悪くはないですが、前線の先発はジェコとラウタロ・マルティネスの組み合わせになると思います。
ボールを保持するシティに比べて、インテルはニコロ・バレッラ、ハカン・チャルハノールといった選手が走って追い越す動き、「シンプルに」と攻めることを特徴としています。
すべてジェコに入ったボールから。ジェコがいれば、そこに当てるボールから始まるのが今のインテルの形なので、そこがすごく重要になってきます。
お互い相手がどんなカラーかがわかった中で、警戒すべき選手は上記になるのではないでしょうか。
決勝展望 シティがボール保持して、インテルが守る展開
決勝戦の「90分勝敗オッズ」はこちらです。
マンチェスター・C | 1.40倍 |
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ドロー | 5.00倍 |
インテル | 7.00倍 |
普通にいけばシティの優勝、インテルに勝機があるとしたら、0-0の時間を長くして、一発をモノにするという展開になるでしょう。
インテルが打ち合いを制するというのは難しいので、1-0のゲームに持っていけるかどうか。インテルはそういう試合に慣れていると思うので、時間の経過とともにシティを焦らせることができれば、インテルのチャンスが高まりそうです。
インテルのディフェンス陣は、強烈に個のポテンシャルが高いという感じではありません。空中戦やスピードといった部分では、シティのアタッカー陣に見劣りするところがあるでしょう。
ディフェンスの中央はフランシスコ・アチェルビが務めていますが、スピードがあるわけではありません。それもあり、全体をコンパクトにしてバランスを取る形です。ラインも高く押し上げません。
近代のコンパクトなサッカーに比べるとすごく伸びていて、
「自分たちの背後にボールを出させない」
という戦い方がベースです。守備ラインは結構下がって、それに合わせて中盤も下がり、全体的に低めに戦います。
ラインを上げると、スピード対応を求められると、そこは弱点になることがわかっていて、全体を下げて守ることに慣れてきています。
押し上げないで、自陣でしっかり守ること。それで奪ってからは、カウンター攻撃です。前線の2人で完結することもできるぐらいなので、「分業」とまではいきませんが、そういった場面も見られるでしょう。
決勝戦は、インテル陣内で長い時間展開されることになると思います。インテルはそれを嫌がらないですし、それでも自分たちがペースを握っているという発想です。
シティからするとスペースがなくてスピードアップできず、裏にパスを出すこともできない。足元のパスはよく回るけど、崩そうとしても相手の陣形が動かない。なかなかこじ開けられない時間が長くなることも想定できます。
デ・ブライネらがミドルシュートを狙うことも増えると思いますが、インテルのGKアンドレ・オナナも状態が良いので、多くのものは止めてしまうでしょう。
0-0で進めば、インテルの可能性が高まっていきます。たとえ先にシティが点を取ったとしても、1点2点の勝負になるでしょう。
インテルはビハインドになったとしても、何人も前がかりになるわけではないですから、我慢しながらカウンターで試合終了までに追い付けばOKという戦いになるはずです。
それでも、私のスコア予想は2-0でシティ勝利です。
上記のように、インテルの守備に苦しむとは思うので、前半のうちに何とか1点取って、後半もインテルの守備意識が高いことに苦しみながら、80分ぐらいになってようやく追加点というイメージです。
1点取られても、ガンガン前に出ていかないインテルが、シティにとってやりにくくなるとは思いますが、ここで欧州ナンバーワンになるのはシティがふさわしいと思っています。