2024-25シーズンのUEFAチャンピオンズリーグは、リーグフェーズの第3節までを消化。今回は今後の戦いに向け、ブックメーカーから発表されているオッズを参考に河治良幸氏に展望をお願いしました。
海外ブックメーカー発表/UEFAチャンピオンズリーグ優勝オッズ
イギリス大手ブックメーカーのウィリアムヒル社から発表されている10月31日時点のUEFAチャンピオンズリーグ優勝オッズがこちらです。
順 | チーム名 | オッズ |
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1 | マンチェスター・C | 3.75倍 |
2 | レアル・マドリード | 4.33倍 |
3 | アーセナル | 8.50倍 |
リヴァプール | 〃 | |
5 | バイエルン | 11.00倍 |
6 | インテル | 21.00倍 |
7 | レヴァークーゼン | 23.00倍 |
8 | アストンヴィラ | 29.00倍 |
PSG | 〃 | |
10 | ドルトムント | 34.00倍 |
11 | ユヴェントス | 41.00倍 |
12 | アトレティコ・マドリード | 51.00倍 |
13 | スポルティング | 67.00倍 |
アタランタ | 〃 | |
15 | リール | 101.00倍 |
モナコ | 〃 | |
ミラン | 〃 | |
18 | ベンフィカ | 126.00倍 |
19 | PSV | 151.00倍 |
20 | スタッド・ブレスト | 201.00倍 |
フェイエノールト | 〃 | |
22 | ボローニャ | 251.00倍 |
ジローナ | 〃 | |
シュトゥットガルト | 〃 | |
ライプツィヒ | 〃 | |
26 | セルティック | 401.00倍 |
27 | シュトゥルム・グラーツ | 501.00倍 |
クラブ・ブルージュ | 〃 | |
スパルタ・プラハ | 〃 | |
30 | ディナモ・ザグレブ | 1001.00倍 |
レッドスター | 〃 | |
ザルツブルク | 〃 | |
シャフタール | 〃 | |
34 | ヤングボーイズ | 2001.00倍 |
ブラチスラヴァ | 〃 |
※オッズは2024年10月31日時点のWilliamHill公式サイト(UEFAチャンピオンズリーグ 2024/25 – 優勝)から引用
新形式でのポイントはリーグフェーズで上位8位に入れるかどうか
UEFAチャンピオンズリーグ(以下、CL)は今シーズンから従来のグループステージがなくなり、本戦参の32チームが同じテーブルで順位を競うリーグフェーズ、その上位8チームとプレーオフを勝ち上がった8チーム、合計16チームによる決勝トーナメントで構成されます。
リーグフェーズは第3節まで消化して、アストンヴィラとリヴァプールのプレミア2チームが3戦全勝と快調なスタートを切っていますが、大会は始まったばかり。まずはリーグフェーズで第8節まで行われることになりますが、この段階で優勝を予想するにあたり、注意したいのが上位8チームは決勝トーナメントにストレートインできるということです。
大事なのは、いかにリーグフェーズを終えたところで上位8チームに入れるかどうか。そこを逃しても、9位から24位までの16チームはプレーオフに望みをつなぐことはできますが、やはり決勝トーナメントにストレートインしたチームの方が、敗退のリスクがなくなるだけでなく、必要な試合数も少ないので、その先の戦いへ万全の準備をして臨むことができます。
もう1つ新フォーマットの特徴としては、リーグフェーズのラスト2節が年明けの1月下旬に組まれていること。冬の移籍市場における選手のインアウトも少なからず影響しますし、中断期間があるリーグだと、試合感にも不安が出てきそうです。そうした意味でも、リーグフェーズでのストレートインはもちろん、できれば年内の6試合で決勝トーナメントの見通しを立てたいところです。
1番人気はマンチェスター・C
そうした前提も踏まえて、優勝オッズの人気順から見ていきたいと思います。現在のトップはマンチェスター・Cで、優勝オッズは3.75倍です。
昨シーズンは準々決勝でレアル・マドリードにPK戦負け。CL連覇を逃しましたが、世界最高峰とも言われるプレミアリーグで4連覇を果たし、過去7シーズンで6度の優勝を誇っています。
ここまでリーグフェーズは2勝1分けの3位に付けており、開幕節でセリエAのインテルとスコアレスドローでしたが、第2節でスロバキアのブラチスラヴァに4-0、第3節はチェコのスパルタ・プラハに5-0と強さを見せつけました。
在任9シーズン目となる”ペップ”ことジョゼップ・グアルディオラ監督のもと、シティは安定した成績をキープしており、中盤で攻守の要を担うロドリはクラブでの活躍、スペイン代表のEURO2024優勝を支える働きが評価されて、同年のバロンドール(世界最優秀選手)に輝いています。
4-3-3のイメージが定着しているマンチェスター・Cですが、今シーズンはシステムを固定せずに、3-4-2-1、4-2-3-1、4-1-4-1、また時には”クリスマスツリー”と形容される4-3-2-1などを使い分けながら、相手にスペースや自由を与えない守備と可変的に翻弄する攻撃を駆使して、ポゼッションでもチャンスの数でも相手を上回るサッカーを実現させています。
2番手はレアル・マドリード。1敗喫するも攻撃には爆発力
そのマンチェスター・Cにも匹敵する優勝候補と見られるのが、前回王者のレアル・マドリードです。優勝オッズは4.33倍。カルロ・アンチェロッティ監督が率いる「エル・ブランコ」は3試合で2勝1敗で現在12位。
その1敗は、第2節にアウェイでフランスのリールから喫したものですが、前半のアディショナルタイムに与えたPKが響く格好での、0-1の敗戦でした。それでも第3節には昨シーズンのファイナルで対戦したドイツのドルトムントを相手に、ブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールがハットトリックを達成するなど、5-2で勝利しています。
フランス代表FWエムバペとヴィニシウスを擁する爆発的な攻撃力と決定力は世界ナンバーワンかもしれません。ただ、プレスの強度に波があり、10月26日に行われたラ・リーガ最大のビッグカードである”エル・クラシコ”ではホームでバルセロナに0-4と大敗。
スター軍団を戦う集団にまとめ上げるのが名将アンチェロッティの真骨頂なので、タイトルに向けてベクトルが定まれば問題はないでしょう。決勝トーナメントでの強さは揺るがないと見られるだけに、まずはリーグフェーズで8位以内に入り、着実にラウンド16へ進めるかどうかが1つの関門になりそうです。
3連勝スタートのスロット・リヴァプール
優勝オッズの3位は9.00倍のリバプールですが、10.00倍でバルセロナ、11.00倍でバイエルンが続いており、この3チームはほぼ差の無い3番手のグループと見て良いかもしれません。
リバプールは周知の通りユルゲン・クロップ前監督が勇退し、オランダのフェイエノールトを率いていたアルネ・スロット監督に後任を託しました。
ハイプレスと縦に速い攻撃は前指揮官に通じますが、4-3-3をベースに、左右のウイングを重視するスタイルで、カラーに変化が出ています。ウルグアイ代表MFダルウィン・ヌニェスを前線の核として、エジプト代表のモハメド・サラーとコロンビア代表のルイス・ディアスが両翼からチャンスを作り出し、フィニッシュにも絡む攻撃は迫力があります。
中盤のアンカーを担う日本代表MF遠藤航が限定的な時間の出場にとどまっているのは気になりますが、過密日程が続くシーズン半ばになれば、CLも含めて、少なからずチャンスが来るかもしれません。
現在CLでは上記の通り3連勝を飾っており、6得点1失点と非常に安定しています。アウェイでミランを押し込み、3-1で勝利した開幕節のゲームは圧巻でしたが、同じアウェイでも、より締まった内容だった第3節のライプツィヒ戦に1-0で勝ち切る強さを見せたことも、今後の戦いにつながっていきそうです。
10大会ぶり頂点狙うバルセロナ
バルセロナはレアル・マドリードと並ぶスペインの雄ですが、CLに関しては2014-15シーズンを最後に10年間タイトルを獲れておらず、3シーズンぶりの決勝トーナメント進出となった前回も、準々決勝でPSGに敗れてしまいました。
元ドイツ代表の”ハンジ・フリック”ことハンスーディーター・フリック監督に白羽の矢が立ったのも、2019-20シーズンに、バイエルンを欧州制覇に導いた実績を買ったところもあるでしょう。ポゼッションの伝統は踏襲しつつも、4-2-3-1をベースに、高い位置で奪えば素早く攻め切るスタイルで、”エル・クラシコ”では敵地でレアル・マドリードに圧勝しました。
”ラ・リーガ”の首位を快走するバルセロナは開幕節で、いきなり日本代表MF南野拓実を擁するモナコに2-1で敗れましたが、立ち上がりにボランチを担うDFエリック・ガルシアが一発退場して、10人の戦いになったことが響きました。
その後はスイスのヤングボーイズに5-0、そしてフリック監督にとって”古巣対戦”となるバイエルンにも4-1で勝利しており、順当ならリーグフェーズのトップ8には乗ってくるはずです。
”ラ・リーガ”ではポーランド代表FWのロベルト・レバンドフスキが11試合14ゴールで得点ランキングを独走中ですが、CLでは左サイドアタッカーのブラジル代表FWラフィーニャが4得点と好調です。そうした期待感も4位という優勝オッズに現れているのでしょう。
リーグではケイン好調もCLでは早くも2敗のバイエルン
バイエルンも38歳のヴァンサン・コンパニ監督のもと、5シーズンぶりとなるビッグイヤー獲得を目指しています。ドイツ随一の名門にとって、外様の青年監督に指揮を任せるのは未知なる挑戦ではありますが、復権を目指すブンデスリーガでダイナミックなサッカーを見せており、イングランド代表のエースであるハリー・ケインが9得点をあげるなど、ここまで8試合で29得点という爆発的な攻撃力で、猛威を奮っています。
しかし、一転してCLでは序盤戦の成績が振るわず、ここまで1勝2敗。開幕節でディナモ・ザグレブに9-2の大勝を飾りましたが、バルセロナとアストンヴィラにアウェイで連敗。コンパニ新監督に対する目も厳しくなってきています。
リーグフェーズと言っても8試合で順位が決まるだけに、第4節のベンフィカ戦はストレートインのために、絶対勝利が必要なゲームでしょう。
夏にシュトゥットガルトから補強した日本代表DF伊藤洋輝の怪我からの復帰が間近とされますが、フランス代表ダヨ・ウパメカノと韓国代表キム・ミンジェのCBコンビが、アルゼンチン代表FWアンヘル・ディ・マリアを擁するベンフィカの鋭い攻撃に、いかに耐えられるかは1つポイントです。
もちろんリーグフェーズで上位8枠に入らなくても、プレーオフで勝負強さを見せつければラウンド16に残れますが、コンパニ監督の評価も含めて注目の一番です。
ストレートインの8位以内を巡る熾烈な争い
優勝オッズ6位は、一昨シーズンのファイナリストである19.00倍のインテル、7位はバイエルンからドイツ王者の座を奪ったシャビ・アロンソ監督率いるレヴァークーゼンで23.00倍、そして29.00倍で8番目に並ぶのが、現在リーグフェーズで首位の”プレミア勢”アストンヴィラ、そして”メッシ、ネイマール、エンバペ”の3大スターが抜け、新たなサイクルに入っているPSGとなっています。
前回準優勝のドルトムントは34.00倍で11番目ですが、昨シーズンの実績もあるだけに、ギニア代表FWセール・ギラシを中心として、徐々に攻撃陣が波に乗ってくるとおもしろい存在かもしれません。
45.00倍のユヴェントスと51.00倍のアトレティコ・マドリードあたりも欧州での経験値があるだけに、上位躍進のポテンシャルは備えていると見ますが、南野拓実が攻撃を牽引するモナコもここまで2勝1分けという結果に加えて、組織的にまとまっているだけに、ここから101.00倍という優勝オッズを上方修正させていく可能性を秘めていると見ます。
一方で守田英正が中盤で支えるポルトガルのスポルティングはリーグフェーズの8位で、優勝オッズも67.00倍となかなか高い評価を得ていますが、ルベン・アモリム監督にマンチェスター・Uからの引き抜きの情報があり、それがどうなるかで大きく変わっていくかもしれません。大会のダークホースと見られていた向きもあるだけに、欧州きっての智将の動向に要注意と言えます。