2022-23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグが2月14日にラウンド16から再開します。カタールW杯を挟んで好不調のチームが分かれている中で、どういった戦いが展開されるのか。今回も中継実況を務める西岡明彦氏に展望を語っていただきました。
海外ブックメーカー発表/チャンピオンズリーグ優勝オッズ
イギリス大手スポーツブックメーカー、WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表、ノックアウトステージ直前のUEFAチャンピオンズリーグ優勝オッズはこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | マンチェスター・C | 2.75倍 |
2 | バイエルン・ミュンヘン | 7.00倍 |
PSG | 7.00倍 | |
4 | リヴァプール | 10.00倍 |
ナポリ | 10.00倍 | |
6 | レアル・マドリード | 11.00倍 |
7 | チェルシー | 15.00倍 |
8 | トッテナム | 19.00倍 |
9 | ベンフィカ | 26.00倍 |
10 | インテル | 29.00倍 |
11 | ミラン | 34.00倍 |
12 | ドルトムント | 51.00倍 |
13 | ポルト | 67.00倍 |
14 | ライプツィヒ | 101.00倍 |
15 | クルブ・ブルッヘ | 151.00倍 |
フランクフルト | 151.00倍 |
※オッズは2022年8月29日時点のWilliamHill公式サイト(UEFAチャンピオンズリーグ 2022/23 – 優勝)から引用
カタールW杯による中断明け以降のコンディションはひとつの注目ポイントです。リーグによって休んだところとそうでもないところもあるので、その影響によるケガ人、1月移籍での補強選手のフィット具合などそれぞれ差が出ていると感じています。
W杯が間に入ったことによる難しさを感じているチームがあったり、逆にうまくリスタートできたチームがあります。うまく休めてフレッシュな状態で臨めているかどうか。ここから5月まで、急に立て直すのが難しいと思うので、この時点で勢いを得ることができたチームが上に行くのかなと思っています。
優勝は4強による争いと考え、マンチェスター・Cが制すると予想
私の優勝予想はマンチェスター・Cです。
ただ、オッズ差ほど優位性があるとは思っていません。もちろんシティが優位に見られるのはわかりますが、ここまで抜けているとまでは考えていません。
シティ、バイエルン、PSGのオッズ差はもっと詰まっていても良いと思いますね。そこにレアル・マドリードが加わってもおかしくないのではないでしょうか。
リヴァプール(10.00倍)やナポリ(10.00倍)よりレアル(11.00倍)が下に見られているのは意外です。レアルは上位4強と見て良いと思います。バイエルンやPSGと同じ7.00倍ぐらいが妥当ではないでしょうか。
国内リーグ戦の負担が大きいのはプレミアリーグ勢です。バイエルンとPSGは対戦相手によっては多少ローテーションもできます。シティはプレミアでそれをやると足をすくわれる可能性もありますし、アーセナルを追いかけなければいけない状況の中で簡単ではない戦いになってきそうです。
それでも決勝にはシティとバイエルンが進出すると予想します。シティからバイエルンに移籍し、新天地で良い仕事をしているカンセロを巡る戦いが見られることを楽しみにしています。
ミラン vs トッテナム
ミラン | 2.45倍 |
ドロー | 3.30倍 |
トッテナム | 2.87倍 |
オッズではミラン有利ですが、トッテナムにもチャンスはあると考えています。
W杯後はハリー・ケイン、ソン・フンミンのコンディションもあまり良くなく、”W杯ロス”を感じさせるところがありました。不調ではないですが、ソンフンミンは「フェイスガードしながらのプレーは難しい」と話したり、ハリー・ケインは最後にPKを外して、失意の中戻ってきたところもあり、良い状態ではないように見えました。
しかし、ここにきてトッテナムはようやく復調気味です。直近3試合で失点なし。元々堅守速攻スタイルで、中盤から前で奪って一気にゴールに迫るのが彼らの形ですから、その意味でも良さが戻ってきています。
1-0や2−0で勝利というのがスパーズらしさであり、直近はマンチェスター・C相手に1-0勝利しているので、前に進んでいると見て良いでしょう。主将でもあるロリスの負傷離脱は気になりますが。
うまくいってないのはミランの方だと思います。
ミランは勝てていません。あまりやっていないことをやりながら、戦っている印象です。何かを変えようとするのは理解できますが、それがうまくいっていません。
2分4敗という中で、どう立て直していくか。連戦になるので、好転のきっかけを見つけるのが難しいカレンダーかなと思っています。そのきっかけを得られる試合にできれば、今後にも期待できるのではないでしょうか。
PSG vs バイエルン
PSG | 2.45倍 |
ドロー | 3.70倍 |
バイエルン | 2.60倍 |
この試合はバイエルン有利だと考えています。
PSGは毎年、国内リーグは心配する必要のないチームです。現在も1位です。週末のリーグ戦で調整しながらチャンピオンズリーグに臨むことになるでしょう。
今はエムバペがいない、ネイマールも2試合休んでいます。セルヒオ・ラモスも内転筋を痛めている。ベストメンバーが揃わなくても国内リーグはなんとかなってしまうチームですが、それをチャンピオンズリーグで同じようにするというのは難しいです。
エムバペは間に合わないと思いますが、それ以外のメンバーがこの試合に向けて調整したとしても、コンディションが100%とは限りません。選手層の厚さというよりは、ベストメンバーで戦ってどうなるかというチームなので、そこは非常に気がかりです。
一方のバイエルンは、再開後1-1が3試合続いたのでどうかと思いましたが、内容的には充実しています。複数得点を取っていてもおかしくない試合でした。
彼らにとって大きいのは、1月の補強でカンセロが加わったことですね。ボールが持てて、攻め上がれて、正確なクロスがある。今季これまでは、左サイドのコマン、デイヴィスのスピードに偏っていた部分が、カンセロを右SBに置いたことで、1つ前のザネが中に入ってプレーする機会も増え、それによって空いたスペースをカンセロが使うことができます。カンセロは中に入るプレーも得意ですし、両サイドにバリエーションのある攻撃が可能になったと感じています。右が良くなったことによって、左も活きていて、1人入っただけでこれだけ変わるのかと思うぐらい、攻撃は良くなったと思います。
シュポ=モティングはそれなりに得点できていますが、レヴァンドフスキと比べるのは酷です。マネも離脱していますし、点を獲れていないことを悲観するような内容ではないと思っています。
クルブ・ブルッヘ vs ベンフィカ
クルブ・ブルッヘ | 3.75倍 |
ドロー | 3.40倍 |
ベンフィカ | 2.00倍 |
オッズで有利に見られている通り、ベンフィカに期待したいと思います。
ポルトガル勢は野心的です。選手がステップアップを狙って戦うこともあり、そのあたりは楽しみです。クラブ側もそれを容認していますし、ダルウィン・ヌニェス(リヴァプール)、エンソ・フェルナンデス(チェルシー)に続く選手が誰なのかという見どころもあります。
グループ首位通過しながらも有力選手が途中で抜かれる難しさはありますが、次の逸材が出てくるチームですから、楽しみです。ブルッヘは初のラウンド16となることもあり、経験値の差でベンフィカ勝利と予想します。
ドルトムント vs チェルシー
ドルトムント | 2.60倍 |
ドロー | 3.30倍 |
チェルシー | 2.70倍 |
オッズでは互角ですが、ドルトムントの勝利と予想します。
ホーランドの代役として今季加入しながら、加入後すぐに精巣腫瘍が見つかって離脱していたセバスティアン・ハラーが復帰しました。マルコ・ロイスも戻ってきて、ここは前半戦から考えると補強とも言えるところです。
スピードのあるムココ、バイノー=ギッテンス、アディエミといった選手もいますし、ロイスが離脱した間にチャンスを得たブラントも評価を上げていて、選手層が厚くなっている印象です。ドルトムントにとっては、長いウィンターブレイクが良い状態につながっていると言えるでしょう。今は上り調子です。
一方のチェルシーは、監督が交代したばかりなのに、結果も出ずゴタゴタしています。レギュラーだったジョルジーニョが突如移籍してしまうというのは、結果が出ていないチームの典型という感じがあります。監督交代の噂が出るだけでも、良い状態とは言えないのではないでしょうか。
これまで有名人を連れてきていたチェルシーが、ポッターを監督にしたのは意外でしたが、良かったと思います。監督へのサポートが足りていないかどうかはわかりませんが、ビッグクラブが中堅で結果を出した指揮官を連れてくる難しさがあるのかもしれません。
フランクフルト vs ナポリ
フランクフルト | 2.87倍 |
ドロー | 3.40倍 |
ナポリ | 2.37倍 |
おもしろい試合になると思いますが、ナポリが勝つと思います。
今のナポリは前へのスピード、攻撃力が抜けていて、簡単には止められないでしょう。セリエAでも21試合で51得点決めているすさまじい破壊力で、1敗しかしていません。オシムヘンはトップスコアラーで、ジョージア代表のクワラツヘリアも躍動感のあるプレーを見せています。
フランクフルトは守備のハードワークがカギを握るチームで、組み立てて崩すというよりはコンパクトに守って、そこから速く攻める。最前線にはコロ・ムアニという身体も使えてスピードもある選手がいて、走れるゲッツェとリンドストロームがいます。
鎌田が3列目を任されているのは、守備の強度が上がったと見られているのと、そこからの配球に期待されているのだと思います。
ただ、ナポリのスピードに対してはどうなのか。攻めまくるナポリと、奪ってから素早くカウンターに出るフランクフルトという展開になるのではないでしょうか。
リヴァプール vs レアル・マドリード
リヴァプール | 2.20倍 |
ドロー | 3.75倍 |
レアル・マドリード | 3.00倍 |
リヴァプールは評価が難しい状況ではないでしょうか。
今のクロップ監督のやり方の限界とは思いたくないですし、結果的にはメンバー的に世代交代、新しい選手が出てこないといけない中で、出てきていない。
奪ってから速く攻める形の中で、センターラインが少し落ちている印象です。ファン・ダイクが戻ってきても、負傷前の状態には戻っていません。マティップとジョー・ゴメスの2人では弱い印象です。
その前の位置で奪うことも求めたいですが、ヘンダーソンやミルナーといった物足らない構成になっています。バイチェティッチといった若手も使われていますが、選手層の薄さが否めないところです。
FW陣は揃っていても、そこにつながる良いボールが入ってない状況なので、元々の強みである良い守備からの攻撃というものを取り戻してもらいたいと思っています。
レアルはクラブW杯を戦ってスケジュール的にはタイトですが、彼らにとっては大きな問題にならないでしょう。ベンゼマも戻ってきて、チーム状態は上がっていくと思います。
このリヴァプール戦ということで考えれば、レアルが有利だと見ています。
インテル vs ポルト
インテル | 1.83倍 |
ドロー | 3.50倍 |
ポルト | 4.40倍 |
インテルは安定していると思います。ナポリほど破壊力のあるチームではないですが、手堅い戦いができるチームです。
中盤でしっかり守って、ラウタロ・マルティネスやジェコといった前線につなぐ形です。大崩れはせず、1-0勝利も得意という印象です。接戦に強く、しぶといので、そういう力強さはあると思います。
中盤のタレントもおもしろく、ムヒタリアンやバレッラにも注目です。
ライプツィヒ vs マンチェスター・C
ライプツィヒ | 4.40倍 |
ドロー | 3.90倍 |
マンチェスター・C | 1.73倍 |
ライプツィヒも悪くはないですが、ここはシティでしょう。
ライプツィヒは昨季の方が良かった印象があります。破壊力という点では、エンクンクが得点を重ねていた昨季が上だったと感じています。
シティは最近結果が出ていない印象がありますが、そうはいってもチャンピオンズリーグに関しては獲りにいくのはもちろんですし、プレミアリーグでもアーセナルを脅かす一番手であり、強さは変わりません。ここから崩れるようなチームではないと思うので、しっかり結果を出すと思います。