2023-24シーズンのUEFAチャンピオンズリーグは、グループ第3節までを消化。今回は今後の戦いに向け、ブックメーカーから発表されているオッズを参考に河治良幸氏に展望をお願いしました。
海外ブックメーカー発表/UEFAチャンピオンズリーグ優勝オッズ
イギリス大手ブックメーカー・ウィリアムヒル社から発表されている11月5日(グループステージ第3節終了)時点のUEFAチャンピオンズリーグ優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
---|---|---|
1 | マンチェスター・シティ | 3.00倍 |
2 | バイエルン | 5.00倍 |
3 | レアル・マドリード | 7.50倍 |
4 | アーセナル | 9.00倍 |
5 | バルセロナ | 11.00倍 |
6 | PSG | 13.00倍 |
7 | インテル | 21.00倍 |
8 | アトレティコ・マドリード | 23.00倍 |
9 | ナポリ | 26.00倍 |
ニューカッスル | 26.00倍 | |
11 | マンチェスター・ユナイテッド | 41.00倍 |
12 | ドルトムント | 51.00倍 |
13 | ミラン | 67.00倍 |
ライプツィヒ | 67.00倍 | |
15 | ポルト | 81.00倍 |
16 | レアル・ソシエダ | 101.00倍 |
ラツィオ | 101.00倍 | |
セビージャ | 101.00倍 | |
RCランス | 101.00倍 | |
20 | フェイエノールト | 151.00倍 |
21 | ベンフィカ | 201.00倍 |
ガラタサライ | 201.00倍 | |
PSV | 201.00倍 | |
24 | スポルティング・ブラガ | 251.00倍 |
ザルツブルク | 251.00倍 | |
26 | シャフタール・ドネツク | 401.00倍 |
27 | レッドスター | 501.00倍 |
ウニオン・ベルリン | 501.00倍 | |
29 | アントウェルペン | 751.00倍 |
セルティック | 751.00倍 | |
31 | コペンハーゲン | 1001.00倍 |
ヤングボーイズ | 1001.00倍 |
※オッズは2023年11月5日時点のWilliamHill公式サイト(UEFAチャンピオンズリーグ 2023/24 – 優勝)から引用
順当な戦いもミラン、ベンフィカら厳しい常連組も
UEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)はグループステージ前半の3試合が終わりました。前回王者のマンチェスター・シティをはじめ、優勝候補にあげられるクラブは概ね順当に勝ち点を積み上げています。
しかしながら、イタリア勢ではACミランが”死の組”とも言われるF組で勝ち点2しか伸ばせておらず、突破に黄色信号がともっています。
またCLで決勝トーナメントの常連であるポルトガルのベンフィカが、久保建英を擁するレアル・ソシエダと同じD組で、まさかの3連敗。残りを3連勝すれば突破の希望はつながりますが、厳しそうな状況です。
そして昨シーズンのブンデスリーガで大躍進を遂げたウニオン・ベルリンも空転直下、リーグ戦の不調と相まって、優勝候補のレアル・マドリードが首位を走るC組で3連敗となっています。
大本命は前年覇者のマンチェスター・シティ
現時点で優勝オッズを見ると、マンチェスター・シティが3.00倍となっており、2連覇を予想する声が強いことを示しています。D組で3連勝しており、グループで最大のライバルと見られたドイツ勢のライプツィヒにもアウェイで3-1の勝利を挙げています。
昨シーズンのCL得点王でもある若きエースのノルウェー代表FWアーリング・ハーランドの存在は大きいですが、ライプツィヒ戦では右サイドアタッカーのイングランド代表FWフィル・フォーデンが先制ゴールを奪い、その後の2得点もアルゼンチン代表MFフリアン・アルバレスなど、途中出場の選手が記録しています。つまりハーランド頼みではない陣容が整っており、攻撃力が上がっているというのは目を引きます。
2番手はバイエルン 福井太智のCLデビューも楽しみ
大本命のマンチェスター・シティに次ぐのはドイツ王者のバイエルン・ミュンヘンで、優勝オッズは5.50倍となっています。グループステージもマンチェスター・ユナイテッドと同居するA組で3連勝を飾っており、トーマス・トゥヘル新監督のもと、盤石に勝ち上がりそうな気配を見せています。
ただ、ブンデスリーガではやや苦戦が続き、”ポカール”の名で知られるドイツ杯の2回戦で、3部のザールブリュッケンに敗れてしまいました。
明るい話題としては19歳のMF福井太智がカップ戦にベンチ入りするようになっており、次節のガラタサライ戦に勝利し、16強に進出を決めれば、残りの試合でCLデビューがあるかもしれません。
レアルの評価は低い?新旧タレント揃い5.50倍の力あり
優勝オッズの3番目はレアル・マドリードで7.50倍、続いてアーセナルが9.00倍となっています。ここまで4クラブが一桁ですが、11.00倍のバルセロナ、13.00倍のPSGまではかなり現実的な優勝候補と見ていいでしょう。
レアル・マドリードは旧チャンピオンズカップ時代から数えて14度という圧倒的な優勝回数を誇りますが、ラ・リーガでも首位に立っており、CLではアウェイでセリエA王者ナポリに3−2と競り勝つなど、強さを取り戻しているように思います。
20歳のイングランド代表ジュード・ベリンガムは往年のジネディーヌ・ジダンにも匹敵しうるタレントですし、23歳のブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールも真の飛躍のシーズンにできるか期待が掛かります。
33歳の司令塔トニ・クロースや38歳のクロアチア代表ルカ・モドリッチといったレジェンドも健在ですが、ここ数年の傾向として完成前の若いタレントを獲得する戦略が、ここに来て実ってきているのは確かです。
筆者の見解としてはバイエルンと並ぶ5.50倍ぐらいが適正だと思います。
初制覇狙うアーセナルは難しいグループ 冨安はポジションを確保できるか
4番人気のアーセナルも初優勝に期待は高まりますが、第2節ではフランスのRCランスに2-1で敗れてしまいました。ガブリエル・ジェズスのゴールで幸先よく先制しましたが、前半のうちに2点を奪われて、そのまま逃げ切られてしまいました。
ランスの2点目はその名前から、日本でも何かと話題の20歳FWセペ・エリー・ワイによるアシストとゴールで、特にワイのゴールはポーランド代表MFプレミスワフ・フランコフスキのクロスを完璧なボレーで捉えた形でした。
次の対戦でも要警戒選手でしょう。さらにB組はスペインのセビージャ(※ブクサカ編集部注・2-0でアーセナル勝利)、オランダの名門PSVと曲者揃いで、現時点でどこにも突破の可能性があるので、アーセナルも予断を許しません。
なお、日本代表DFの冨安健洋はスタメン2試合を含む3試合全てに起用されていますが、ここに来て左サイドバックが板に付いてきています。ウクライナ代表オレクサンドル・ジンチェンコという第一人者はいますが、右サイドバック、センターバックも想定しながら、このポジションで主力になっていけるか注目です。
守備光るもバルセロナの11.00倍
バルセロナは現在PSGを率いるルイス・エンリケ監督だった2014-15以来、9シーズンぶりの欧州制覇を狙っています。こちらもH組で3連勝と良いスタートを切っており、特にディフェンスが3試合で1失点と粘り強さが目立ちます。
ただ、開幕戦でベルギーのアントワープに5−0の大勝を飾ったものの、第2節のポルトとのアウェイゲームでは1-0と勝利するもイエローカードが6枚、さらにガビが2枚目の警告で退場するなど、厳しい戦いでした。
ポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキという頼れるエースはいますが、優勝を争うライバルに比べると、アタッカー陣がややパンチ力不足であることは否めません。
23歳のスペイン代表FWフェラン・トーレスのさらなるブレイクにも期待したいところですが、資金難もささやかれる中で、今いる選手たちが奮起するのか、冬の移籍市場で補強するのかはノックアウトステージでどこまで勝ち上がれかにもかかってきそうです。
現状、11.00倍は少し高いようにも思います。
スターの移籍でバランス取れたPSG
PSGはリオネル・メッシがMLS、ネイマールがサウジアラビアに移籍し、サッカー界を賑わせた3人のビッグネームではフランス代表FWキリアン・エムバペだけが残った形です。
リーグアンではニースを勝ち点1差の2位で追いかけていますが、CLはボルシア・ドルトムント、ニューカッスル・ユナイテッド、ACミランと5大リーグの猛者が揃う”死の組”で、ここまで2勝1敗となっています。
第2節でニューカッスルに4-1で敗れたのは痛手でしたが、第3節はファンやメディアの厳しい目が注がれる中で、ミランに3−0の完勝。エースのエンバペも先制点を挙げて貫禄を見せたほか、金メダルを獲得したアジア大会から帰ってきた韓国代表MFイ・ガンインも途中出場からゴールを決めて、ルイス・エンリケ監督にアピールしました。
メッシ、ネイマールがいなくなり、豪華さはなくなった分、エンリケ監督の明確なチーム設計も相まって、バランスの取れたチームになっている印象です。
10番を背負うウスマン・デンベレ、 前線の中央で牽引するランダル・コロ・ムアニにエムバペを加えたフランス代表トリオが噛み合えば、悲願の欧州制覇も見えてくるでしょう。個人の評価としては10.00倍ぐらいと見ています。
インテルとソシエダが並ぶD組 久保建英のソシエダは101.00倍
21.00倍のインテルは昨シーズンのファイナリストであり、勢いに乗れば再度躍進するだけのポテンシャルはあります。ただ、この優勝オッズに止まっているのはD組でまだまだ予断を許さない状況にあるからでしょう。
現在、勝ち点7で久保建英を擁するスペインのレアル・ソシエダと並んでいますが、前半戦の直接対決が1-1であったため、得失点差が+3のレアル・ソシエダが+2のインテルを上回っている状況です。
3位のザルツブルクは勝ち点3ですが、第4節がインテルとレアル・ソシエダの対戦であるため、最下位のベンフィカに勝てば、2位のチームに肉薄できます。
レアル・ソシエダはCLと元々の選手層を考えると”二足の草鞋”を履くのはやはり大変そうですが、久保をはじめ主力の質は高く、イマノル・アルグアシル監督もチームを熟知しているので、ノックアウトステージでも躍進が期待できます。
現在の優勝オッズは101.00倍。全体の16番目なので、ベスト8ぐらいまで勝ち進めば注目を浴びるでしょう。
日本人選手所属のラツィオ、フェイエノールト、セルティックの戦いにも注目
さらにディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリードが8番目の23.00倍、イタリア王者のナポリが26.00倍となっており、優勝は現実的にはこのあたりまでの争いと言えるかもしれません。
鎌田大地が所属するラツィオはレアル・ソシエダと同じ101.00倍ですが、E組で首位のフェイエノールト、2位のアトレティコに次ぐ3位であり、現状はレアル・ソシエダより厳しい状況にあると言えます。
上田綺世が加入したフェイエノールトは第3節でラツィオに3-1と勝利して、後半戦へのアドバンテージを握りました。現在の優勝オッズは20番目の151.00倍ですが、ポテンシャルはさらに上を狙えるはずです。
アルネ・スロット監督が4-3-3を採用する中で、メキシコ代表FWサンティアゴ・ヒメネスがエースに君臨していて、上田はジョーカー的な位置付けですが、チャンスにゴールで応えていければ、スタメンのチャンスも回ってくるでしょう。
日本代表FW古橋亨梧など、日本人選手を多く擁するセルティックも躍進を期待したいところですが、前半戦の3試合を終わって1分け2敗の4位。ただ、第3節でホームながらアトレティコと2-2で引き分けたことにより、突破の希望は出てきました。
特にここまで2得点の古橋は高評価に値します。ただ、日本代表の10月シリーズでもアピールしたMF旗手怜央がアトレティコ戦で負傷し、早期の復帰が難しいと見込まれるのは残念です。