2月に開幕した2023シーズンのJ1リーグは第27節までを終え、残り8試合となりました。
初のリーグ制覇を目指すヴィッセル神戸と、昨季王者の横浜F・マリノスがリードする優勝争いはここからどうなっていくのか。ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、河治良幸氏に展望をお願いしました。
海外ブックメーカー発表/J1リーグ優勝オッズ
イギリス大手スポーツブックメーカー、WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表のJ1リーグ優勝オッズがこちらです。勝点は第27節終了時のものです。
チーム名 | 優勝オッズ (開幕時オッズ) |
勝点 |
---|---|---|
ヴィッセル神戸 | 2.20倍(23.00倍) | 52 |
横浜F・マリノス | 3.00番(3.25倍) | 50 |
名古屋グランパス | 11.00倍(8.00倍) | 46 |
浦和レッズ | 13.00倍(10.00倍) | 46 |
鹿島アントラーズ | 17.00倍(9.00倍) | 46 |
サンフレッチェ広島 | 17.00倍(6.00倍) | 44 |
セレッソ大阪 | 21.00倍(17.00倍) | 45 |
※オッズは2023年9月19日時点のWilliamHill公式サイト(Jリーグ ディビジョン1 優勝 2022)から引用
J1は第27節まで消化し、首位ヴィッセル神戸から勝ち点差8に7チームが混在。
9月19日時点の優勝予想オッズを見ると、神戸が2.20倍でトップ、横浜FM(3.00倍)で続き、6位C大阪(21.00倍)、7位広島(17.00倍)まではまだ逆転優勝の可能性があることを示しています。
7位の広島も神戸と勝ち点8差で数字上は逆転可能ですが、残り7試合で神戸が勝ち点8を落とさないと全勝でも追い抜けない計算です。6位C大阪も残り7試合で首位と勝ち点7差で逆転の可能性を残していますが、優勝オッズは21.00倍と上位7チームの中で最低評価になっています。
ちなみに現在9位の川崎フロンターレが前節(第26終了)時まで51.00倍というオッズがついていたのは、6シーズンで4度の優勝を果たしている実績から来る期待があったからでしょう。ただ、さすがに残り試合と勝ち点差が考慮されてか、最新の優勝オッズでは川崎フロンターレのチーム名もついに消えてしまいました。
首位で終盤迎える神戸 上位対決を多く残すも新戦力には期待
ちなみに神戸は得失点差も最高の+23で、2位の横浜FMが+17となっています。この点も神戸のアドバンテージを示しています。
神戸の優勝オッズが横浜FMを上回っているのは妥当なのですが、やはり神戸はこれまでリーグ優勝の経験がなく、横浜FMは過去30年間で5度の優勝、しかも2019年と2022年に王者となっている実績と経験があります。
シーズン前半戦はずっと神戸が首位を走っていましたが、夏場に一度横浜FMが逆転。しかし、ここに来てマリノスは現在17位の横浜FC、16位の柏レイソルに連敗を喫してしまい、一方の神戸は前節、京都サンガに2-1で競り勝って、首位の座を奪い返しました。
横浜FMは怪我人も多く、選手層が盤石と言えない状況で、ACLや準決勝まで残っているルヴァン杯を戦うので、その点は神戸より少し不利かもしれません。
初優勝に向けて、サポーターの気運も高まっている神戸ですが、難しいのはここからの対戦相手で、上位対決4連戦が控えています
神戸の対戦相手
- 第27節:広島(アウェイ ●0-2)
- 第28節:C大阪(ホーム)
- 第29節:横浜FM(アウェイ)
- 第30節:鹿島(ホーム・国立競技場開催)
- 第31節:湘南(ホーム)
- 第32節:浦和(アウェイ)
- 第33節:名古屋(ホーム)
- 第34節:G大阪(アウェイ)
しかも終盤戦で前回敗れているアウェイの浦和、そしてホームの名古屋戦があり、最後に関西のライバルであるガンバ大阪とのアウェイという厳しいレギュレーションであり、もうひとつのカードも残留争いをしている湘南とのアウェイゲームです。
優勝の可能性を残す、ほぼ全てのチームが神戸との直接対決を残しているので、神戸が次々と優勝争いからの脱落という引導を渡していくのか。それとも逆に神戸が引きずり下ろされるのか。どちらにしても目の離せない終盤の戦いになっていくでしょう。
神戸としては全治1年という大怪我で離脱した齊藤未月に優勝タイトルをという思いで、団結力をさらに強めている様子もあります。実際問題として齊藤未月がいないことでの戦力的なマイナスは計り知れない中で、中盤の選手たちが奮起するか。
ハンガリー人のMFバーリント・ヴェーチェイが、いきなり齊藤と同じタスクをこなせるとは期待しにくいですが、神戸の求める守備強度にある程度、応えながらスペシャルなプラスアルファをもたらせるか。
連覇狙う横浜FMの懸念はハードスケジュール
横浜FMはフライデーナイトマッチで現在13位のサガン鳥栖と対戦(△1-1)した後に、9月19日にACLの仁川ユナイテッド戦(●2-4)があり、そこから
- 第28節:鹿島(アウェイ)
- 第29節:神戸(ホーム)
- ACL:山東泰山(アウェイ)
- ルヴァン杯準決勝:浦和(ホーム)
- ルヴァン杯準決勝:浦和(アウェイ)
- 第30節:札幌(ホーム)
- ACL:カヤFC(ホーム)
- 第31節:福岡(ホーム)
- ACL:カヤFC(アウェイ)
- 第32節:C大阪(ホーム)
という過密日程で、戦力をやりくりしていく必要があります。最終ラインはセンターバックもサイドバックも怪我人がいる状況で、本職ではない選手が担うなどしていますが、ここからどう回して戦っていくのかが生命線になってきます。
横浜FM、名古屋、浦和に共通するのはルヴァン杯で準決勝まで残っていること。
ちょうど代表ウィークの10月11日と15日に準決勝が行われますが、タイトルを狙っていけるチャンスと引き換えに、代表ウィーク明けのリーグ戦に向けた準備が十分にできないので、そこはリーグ戦の優勝争いという意味では神戸よりも不利な要素になることは間違いありません。
特に横浜FMと浦和はACLが入ってくるので、コロナ禍でのセントラル開催ではないACLの負荷が、両チームの終盤の優勝争いにどれぐらい影響してくるかは未知数なところです。
勝ち点差は実質7も日程面では優位の名古屋
名古屋は神戸と勝ち点6差、しかも得失点差は神戸が+23、名古屋が+8なので、実質的に勝ち点7差あると考えていいですが、今後の対戦相手との力関係や日程を見ると、神戸や横浜FMより少し恵まれているところがあります。
- 第28節:札幌(ホーム)
- 第29節:広島(アウェイ)
- ルヴァン杯準決勝:福岡(アウェイ)
- ルヴァン杯準決勝:福岡(ホーム)
- 第30節:G大阪(アウェイ)
札幌とのホームゲーム、広島とのアウェイゲームという体力的にもタフなゲームが続きますが、そこから横浜FMや浦和がACLを戦う時期に、中10日で一息ついてルヴァン杯、そして代表ウィーク明けのガンバ大阪戦となるので、ライバルに比べると少しアドバンテージがあります。
とにかく名古屋としては、11月25日にある神戸との直接対決までに勝ち点を詰めて、ラスト2試合で神戸と柏レイソルに連勝して差し切るというシナリオは描きやすいです。
ただ、代表ウィーク明けからのラスト5試合はG大阪、鳥栖、湘南という二桁順位の相手との試合が続き、神戸戦の後に最終節が現在16位の柏ということで、逆に勝ち点を落とせないプレッシャーがかかってくるかもしれません。
その中でも危険なのは、残留争いの渦中にある湘南です。攻守にハードワークをしてくる相手との前回対戦は、ホームで2-2の引き分けに終わっています。しかも2-0とリードしてから追いつかれたという嫌な記憶は選手にもサポーターにもあるでしょう。
同点のPKを決めた町野修斗はドイツ2部のキールに移籍しましたが、その試合の時は欠場していたFW大橋祐紀は堅守の名古屋にとっても厄介な存在になりそうです。
チーム状態上向きの浦和は過密日程を乗り切れるかがポイント
4位の浦和は神戸との勝点差が6。ACLがスタートすること、ルヴァン杯で準決勝を残すなど、なかなかリーグ戦に集中しにくい状況ですが、伊藤敦樹を代表招集で欠いたルヴァン杯の準々決勝で、G大阪に2試合の合計スコア4-0で完勝するなど、ここに来てチーム状態を上げているのは大きなプラス材料です。
中島翔哉などの夏の加入に加えて、一時期はベンチからも外れていたブライアン・リンセンやアレックス・シャルクがルヴァン杯で結果を出したことにより、チーム内の競争も活性化しています。
ここからリーグ戦、ACL、ルヴァン杯と過密日程が続いていくので、マチェイ・スコルジャ監督やスタッフの準備は多忙を極めるでしょうが、それだけ多くの選手に出場チャンスがあるということでもあり、前の試合ではベンチ外の選手が、次の試合はスタメンというケースも多く出てくるでしょう。
ただし、アレクサンダー・ショルツやキャプテンの酒井宏樹、”課長”の愛称を持つ岩尾憲など、怪我などで離脱すると本当にまずい選手がいるので、彼らをどこかで戦略的に休ませる起用法は必要になるでしょう。
勝点差7からの大逆転優勝なるか、C大阪
C大阪のスケジュールがこちら。アウェイ鹿島(●0-1)、アウェイ神戸戦と上位との対戦が続き、湘南戦を挟んでアウェイ広島戦という流れになります。
- 第28節:神戸(アウェイ)
- 第29節:湘南(ホーム)
- 第30節:広島(アウェイ)
- 第31節:G大阪(ホーム)
11月28日のG大阪とのダービーを終えると2週間の中断になりますが、まずは神戸に対して勝ち点3を取れるかどうか。
C大阪は比較的、各ポジションに複数の選手が揃っていますが、司令塔の香川真司とエースのレオ・セアラが良い状態でシーズン戦い切れること。また日本代表で成長して帰ってきた毎熊晟矢にも期待です。
現実的には上位5チームの争いに、C大阪と広島がどこまで食らいついていけるかという構図になりますが、ここ数年では最も混戦模様なので、大きな注目を集めていくことは間違いありません。