2024シーズンのJ1リーグは一部を除いて第33節まで消化しています。J2から昇格してきたFC町田ゼルビアが賑わせてきた今季のリーグはどこが優勝することになるのでしょうか。ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、河治良幸氏に展望をお願いしました。
海外ブックメーカー発表/J1リーグ優勝オッズ
WilliamHill(ウィリアムヒル)社から発表されている10月9日時点のJ1リーグ優勝オッズがこちらです。※勝点は第33節終了時
チーム | 勝点※ | 優勝オッズ |
---|---|---|
サンフレッチェ広島 | 65 | 1.50倍 |
ヴィッセル神戸 | 64 | 2.50倍 |
FC町田ゼルビア | 59 | 21.00倍 |
鹿島アントラーズ | 53 | 101.00倍 |
ガンバ大阪 | 53 | 151.00倍 |
※オッズは2024年10月9日時点のWilliamHill公式サイト(Jリーグ ディビジョン1 優勝 2024)から引用
33試合終了時点で首位の広島が大本命 昨季王者の神戸との一騎打ちか
2024年のJリーグも終盤戦の佳境に突入しています。10月のインターナショナルマッチウィークによる中断までのJ1の順位をおさらいすると、33試合を消化して1位がサンフレッチェ広島、2位が前回王者のヴィッセル神戸、そして3位がJ1初挑戦ながら、シーズン折り返しまで首位を走っていたFC町田ゼルビア。3チームによる”三つ巴”の様相となっています。
現時点で4位の鹿島アントラーズ、5位のガンバ大阪にも逆転優勝の可能性は残されていますが、首位の広島とは勝ち点10差、得失点差も大きく開いています。
仮に残り試合を全勝したとしても、広島はもちろん神戸、町田と上位3つが総崩れしない限り届かない状況です。優勝オッズがともに100倍を超えているのも、現実的にはかなり逆転が難しい状況を素直に評価している結果と思われます。
今季を盛り上げた町田は後半に失速も日程面では有利
”3強”の優勝オッズを確認すると、広島が1.50倍となっています。勝ち点1差で2位の神戸は2.50倍。首位と勝ち点差6の町田は21.00倍で、まだまだチャンスはあるものの、やはり広島と神戸よりも苦しい状況にあることは否めません。このオッズ差はシンプルな勝ち点差だけでなく、後半戦の調子に対する評価も大きく影響しているように思います。
黒田剛監督が率い、元サガン鳥栖監督の金明輝コーチが支える町田は、徹底した堅守速攻をベースとするストロングスタイルで、前半戦から首位を快走しました。大きな強みとなったのはロングスローからの得点力で、相手に隙を与えず、隙を突くことで、強豪との接戦をものにしていきました。開幕当初は30人を大きく超える選手を抱えることで、チーム内競争を活性化させたこともプラス材料だったと言えます。
移籍1年目のDF昌子源がキャプテンとしてチームを統率し、守護神に君臨したGK谷晃生は日本代表に復帰。J2清水から加入したFWオ・セフンが前線の大黒柱となり、韓国代表にも選ばれた一方で、沼田駿也(鹿児島ユナイテッド)、池田樹雷人(アビスおぱ福岡)、高橋大悟(大分トリニータ)など昨年のJ2優勝を支えた主力の大半が出番を失い、移籍を強いられる結果となりましたが、それもJ1昇格元年での躍進のための必要な痛みだったという見方もできます。
一巡目はある種の”初見殺し”で勝利を重ねた感もありますが、後半戦で二巡目になると、相手も町田の強みを理解しての戦いとなり、前半戦のように強みを前面に押し出すことが難しくなりました。
また夏場での運動量の低下、パリ五輪代表だった平河悠(ブリストル・シティ)の欧州移籍や、天皇杯の筑波大戦で複数の怪我人が出たことなども影響してか、プレー強度にも前半戦の良さが少し失われたようにも思います。しかし、失速の大きな理由は対戦相手が町田慣れしたことでしょう。
そうした流れも見越してか、町田は夏に湘南ベルマーレから左利きの大型DF杉岡大輝、そして日本代表や海外での敬遠が豊富なDF中山雄太とMF相馬勇紀を獲得するなど、上位の中でも目立った補強を敢行しました。
杉岡が左サイドバックのスタメンに定着、中山が怪我人のでたセンターバックを埋めるなど、一定の成果は出たとみられますが、相馬がなかなか100%のパフォーマンスを発揮できず、中山は加入4試合で負傷離脱となり、理想的なブースターにななれませんでした。
後半戦(第20節以降)の町田の成績を見ると、5勝5分け4敗となっていますが、5勝のうち3勝は7月に挙げています。過去10試合では2勝4分け4敗となり、勝ち点8しか積めていません。町田にアドバンテージがあるとすれば、残り5試合の緩やかな日程でしょう。
すでにルヴァン杯と天皇杯もなく、12月8日に行われる最終節の鹿島戦までの約2ヶ月間で、リーグ戦の5試合しか残っていません。
谷やオ・セフン、オーストラリア代表のミッチェル・デュークなど、一部の選手は代表活動で離れる時期はありますが、中断明けの柏レイソル戦をはじめ、1戦1戦に時間をかけて準備していけるので、町田の強みである対戦相手の分析力も生かしやすいでしょう。
5試合のうち、3試合が残留争いをしている下位との試合であることが、有利に働くかどうかは評価が分かれるところかもしれません。
”キュウソネコカミ”と言われますが、現在下位のチームが終盤戦で、そのまま力関係を有利に戦えるとは限らないからです。特に夏場の補強に成功し、勝率をあげている京都サンガとの第37節は結果を読みにくいものがあります。
もうひとつ、町田にとって”鬼門”になっているのが、国立開催です。今シーズン町田は国立で4試合を予定していましたが、ここまでの3試合は1分け2敗。
引き分けに終わった浦和戦も、ギリギリまで追い込まれたところから、3失点目が相手のオフェンスファウルで無効となり、後半アディショナルタイム8分に、FWエリキが劇的な同点弾を決めて、何とか勝ち点1を掴みました。
Jリーグの中では”新興クラブ”の町田にとって、国立開催は興行面で非常に重要ですが、”天空の城”の異名を持つ町田GIONスタジアムのような圧倒的なホーム感は出せません。第36節に待つFC東京との国立決戦で勝ち点3をつかみ取り、逆転優勝の望みをつなぐことができるかは見どころになります。
広島はハード日程も夏の積極補強で強さをキープ
首位の広島と2位の神戸ですが、勝ち点差はわずか「1」で、中断明けの試合の結果次第で立場が逆転する可能性があります。ただ、やはり後半戦に見せている広島の強さが、優勝予想の倍率を下げる理由になっているようにも思います。
シーズン折り返しの第20節から14試合で10勝3分け1敗と圧倒的な成績。しかも、そのうち2分け1敗は後半戦の頭に喫したもので、ここ10試合では9勝1分けです。
その間、天皇杯とルヴァン杯での悔しい敗退はありましたが、ポジティブに捉えれば立て直しの転機になったとも言えます。
後半戦の強さはスキッベ監督の継続性の高いチーム作りが大きいですが、7月まで11得点をあげていたFW大橋祐紀(ブラックバーン)、中盤の主力だった川村拓夢(ザルツブルク)が移籍したにも関わらず、チームを上向きにできた要因は効果的な補強です。
欧州で成長したMF川辺駿の復帰に加えて、抜群の得点力を持つMFトルガイ・アルスラン、欧州5大リーグで実績のある大型FWゴンサロ・パシエンシアがチームの躍進を大きく助けています。またホームグロウン選手が多く、若手を含めて着実に積み上げているのは町田に無い強みといえます。
AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)があることは日程を考えると、アウェイ遠征も含めて不利な要素になり得ますが、同大会は開幕2連勝を飾っており、少なくとも年内のグループステージに関しては多少ターンオーバーも使いながら、優勝がかかるリーグ戦に比重を置く戦いになりそうです。
ポジティブに捉えれば、ACL2で公式戦を経験し、アピールした選手がリーグ優勝のキーマンになっていく可能性もあるでしょう。
やはり優勝の鍵になるのは、中断明けのアウェイ湘南戦です。
好調の東京ヴェルディに勝利した湘南は広島に勝利できたら、残留に大きく前進することになります。広島はここを勝利で乗り切ると、ACL2のシドニー戦を経て、ホームの京都戦まで10日間の猶予を得ることができます。
最終節にガンバ大阪とのアウェイゲームを残していますが、ここでガンバ側にわずかでも逆転優勝の望みが残されているかどうかも、勝率に関わってくるかもしれません。
連覇目指す神戸は戦力揃って好調 天皇杯、ACLEとの戦いを乗り切れるか
神戸は同じアジアでも、AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)というより厳しい大会との過密日程を強いられるところが、難しさでもあります。また天皇杯と二冠の可能性を残しているのが、広島との違いです。
その分、過密日程にはなりますが、リーグ連覇に意識が縛られすぎずに戦えることが、プラスに向く可能性もあります。戦力的にも、ここに来てエースの大迫勇也が状態を上げてきており、経験豊富な酒井高徳、左サイドの仕掛け人である汰木康也など、怪我人が戻ってきたことも大きなプラス要素です。神戸も後半戦で9勝4分け1敗と、広島に準ずる勝ち点を伸ばしてきています。
残る5試合のカードを見ると、ホームゲームが3つ残されており、磐田、FC東京、最終節の湘南と、全て一巡目のアウェイで勝利している相手です。
神戸にとって大きなミッションとなるのが、東京ヴェルディとのアウェイゲームでしょう。5月26日にホームのノエビアスタジアム神戸で行われた試合では、オウンゴールにより0-1の敗戦を喫しています。前半から強度高く戦い、城福浩監督が交代カードをうまく使ってくるヴェルディは神戸にとっても厄介な相手です。
ラスト2試合で柏、湘南という目下、残留争いの渦中にあるチームとの対戦も状況次第では難しくなりますが、まずは中断明けのフライデーナイトゲームとなるホームのFC東京戦に勝利して、広島にプレッシャーをかけていきたいところです。