2023シーズンのJ1リーグが2月17日に開幕します。昨季王者の横浜FMと昨季2位の川崎Fとの対戦でスタートする今季はどんなシーズンになるのでしょうか。ブックメーカーから発表されているオッズを参考に河治良幸氏に展望をお願いしました。
海外ブックメーカー発表/J1リーグ優勝オッズ
イギリス大手スポーツブックメーカー、WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表のJ1リーグ優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ(昨季順位) |
1 | 横浜F・マリノス | 3.25倍(優勝) |
川崎フロンターレ | 3.25倍(2位) | |
3 | サンフレッチェ広島 | 6.00倍(3位) |
4 | 名古屋グランパス | 8.00倍(8位) |
5 | 鹿島アントラーズ | 9.00倍(4位) |
6 | 浦和レッズ | 10.00倍(9位) |
7 | セレッソ大阪 | 17.00倍(5位) |
8 | ヴィッセル神戸 | 23.00倍(13位) |
9 | FC東京 | 26.00倍(6位) |
10 | 柏レイソル | 34.00倍(7位) |
11 | アルビレックス新潟 | 41.00倍(J2優勝) |
12 | コンサドーレ札幌 | 51.00倍(10位) |
ガンバ大阪 | 51.00倍(15位) | |
14 | サガン鳥栖 | 81.00倍(11位) |
横浜FC | 81.00倍(J2 2位) | |
16 | アビスパ福岡 | 101.00倍(14位) |
湘南ベルマーレ | 101.00倍(12位) | |
京都サンガ | 101.00倍(16位) |
※オッズは2023年2月15日時点のWilliamHill公式サイト(Jリーグ ディビジョン1 優勝 2022)から引用
優勝争いは3チームを中心に展開と予想。二強に絡むのは広島
昨シーズンの優勝争いは事実上、横浜FMと川崎Fのマッチレースとなりました。最後は横浜FMが優勝を決めましたが、2023シーズンも、この両者のどちらかで決まるという予想が多くあるかもしれません。
横浜FMは今季も優勝候補筆頭
3.25倍で一番人気の横浜FMは、昨年MVPの岩田智輝がスコットランドのセルティックに移籍したことで、戦力ダウンという見方もあるでしょう。また開幕直前にGK高丘陽平がMLSバンクーバー・ホワイトキャップスに加入するため、チームを離れたことも打撃ですが、それでもなお優勝候補の筆頭に推されるだけの理由はあるでしょう。
やはりケヴィン・マスカット監督が3年目を迎えて、チームを完全に掌握できていることや、横須賀に専用のクラブハウスが誕生して、よりサッカーに集中しやすい環境も整備されていることは好材料です。新戦力は決して派手さはないですが、柏レイソルから加入したDF上島拓巳は身体能力が高く、ポテンシャルは高い。しかも横浜FMのスタイルに適応することに意欲的です。
仲川輝人がFC東京に、2シーズン連続二桁得点のレオ・セアラがC大阪に移籍したアタッカー陣ではFWアンデルソン・ロペスがエースとして引っ張りそうですが、長崎から新加入のFW植中朝日も好パスが出てきやすい環境でブレイクする可能性は十分です。昨年の代表戦で負傷した宮市亮もチームに合流して調整を続けており、完全復活が待たれるところです。
ボランチとセンターバックの両ポジションで、獅子奮迅の働きをした岩田の穴を一人で埋められる選手はいません。しかし、中盤に目を向ければ、キャプテンの喜田拓也が昨年と違い、開幕から万全の状態であり、渡辺皓太も主力としての自覚を持っているのは心強いところです。20歳の藤田譲瑠チマや19歳の山根陸といった伸び盛りの若手も簡単には試合に出られない状況で、やはり中盤はJリーグ最高レベルと言えます。
前回王者として”連覇”というワードが飛び交いますが、喜田キャプテンは「あれは守るものではなく、奪いにいくもの」と、あくまでチャレンジャーの心構えを強調しています。実際に開幕前からサイドバックにアクシデントが相次ぐなど、決して盤石な訳ではなく、岩田と高丘の穴も、シーズン中に痛感することがあるかもしれません。しかし、チーム全体でサッカーの質を高める雰囲気というのは優勝の大きな糧になりそうです。
鬼木体制7年目の川崎Fも3.25倍で王者返り咲きの可能性十分
同じ3.25倍で覇権奪還を目指すのが、昨シーズン2位の川崎Fです。7年目となる鬼木達監督体制の中で、これまで6年間で4度のリーグ優勝を記録しており、有力候補であることに変わりはありません。
攻守の流れに応じて選手の配置が変わる”可変システム”にトライしているという川崎Fですが、不安材料としてはチームのキャプテンとして、さらにディフェンスリーダーとして支えてきたDF谷口彰悟がカタールのアル・ラーヤンに移籍したことです。これはもう簡単に埋まるものではないでしょう。ただし、柏レイソルから加入したDF大南拓磨のポテンシャルは非常に高く、彼自身にとってもJリーグ、日本サッカーを代表する選手に飛躍するチャンスです。
レアンドロ・ダミアン、小林悠が相次いで負傷、家長昭博が100%ではないなど、アタッカー陣も不安要素は多いですが、徳島、鳥栖での”武者修行”から帰還したFW宮代大聖がエースの座に意欲を見せており、鳥栖での8得点を大きく上回る期待も高まっています。
湘南から加入のMF瀬川祐輔はもちろん、大卒ナンバーワンの呼び声もあるFW山田新や選手権を沸かせた高卒ルーキーのMF名願斗哉が、どこまでポジション争いに食い込んでくるかというのも楽しみな要素です。
二強体制を崩す筆頭は6.00倍の広島
”二強”に待ったをかけるのが、筆者は昨シーズン3位の広島だと予想しています。
ミヒャエル・スキッベ監督が2年目の広島はチームとしての方向性が明確で、若手・中堅・ベテランのミックス具合もバランスが取れています。
攻守のトランジションは横浜FMや川崎Fに勝るとも劣らないレベルにあり、昨年ブレイクした満田誠を筆頭に、アタッカーの決め手もあります。スーパーヒットになりうるのが、福岡から左サイドに加わったDF志知孝明です。機動力が非常に高く、シンプルに特長を生かしやすい広島で、29歳にして飛躍を果たすかもしれません。
一抹の不安は選手層ですが、19歳のFW棚田遼やJ2金沢で強度の高いディフェンスを身に付けてきた22歳の松本大弥、パリ五輪代表候補でもある大卒ルーキーのDF山﨑大地などが期待通りの台頭を見せれば、シーズンを通してアップしてきそうです。
トップグループを追う5チームにも注目
上記の広島の優勝オッズが6.00倍。4位の名古屋が8.00倍、5位の鹿島が9.00倍で、ここまでが一桁となっています。オッズとしてはここまでの5クラブが優勝候補という構図かもしれませんが、そこに加えて浦和、C大阪、FC東京にも注目したいと思っています。
安定した守備ベースにユンカー加入で上位狙う名古屋
長谷川健太監督が2年目となる名古屋は、よりカラーを強めながら虎視眈々とタイトルを狙っていくことになるでしょう。
補強の目玉はなんと言っても浦和から加入のキャスパー・ユンカーで、長谷川監督の起用法と新エースの奮起次第で、得点王の最有力候補にもなりえます。
昨年はビルドアップで変化をつけようとして、頓挫してしまった向きもありますが、3バックをベースとしたディフェンス力はリーグ随一とも言えるので、あまり色気を出さずに自分達の強みを前面に押し出した方が、上位争いに加わる可能性は高まるかもしれません。
鹿島のカギは早い時期にベースを確立すること
鹿島に関しては筆者の見立てだと、5番人気はちょっと高すぎるようにも思います。
鹿島OBでもある岩政大樹監督が率いるチームの戦力的なポテンシャルは高いですが、ディフェンスライン、特にアクション型の攻撃を支えるディフェンスラインに課題を抱えています。
少なくとも5年ぶり復帰の昌子源が万全になるまでは苦しい戦いが続くかもしれません。左サイドバックも、プレシーズンマッチでボランチの佐野海舟をテストするなど、試行錯誤の中でソリューションを見出すかもしれませんが、早期のベースが定まることが肝要でしょう。
ただ、セカンドトップという新たなポジションから、ゴールとアシストを合わせて25点に絡みたいと意欲的な鈴木優磨、広島から移籍してきたスピードスターの藤井智也など、オフェンスの陣容はJ1上位であることは間違いなく、大卒ルーキーのFW師岡柊生もブレイクの予感を漂わせています。
戦術的な安定に加えて、鹿島の伝統的な勝負強さを発揮して、この”下馬評”を証明するか、それ以上のパフォーマンスに期待したいところです。
新指揮官迎えた浦和。ストライカーは継続調査中?
6番人気の浦和に関してはマチェイ・スコルジャ監督が1年目ですが、キャンプから分かりやすいメッセージで選手を前向きにさせており、中盤でボールを動かすスタイルだった昨シーズンまでより、直線的にゴールを目指していく攻撃がメインになりそうです。
戦術面でもマネージメント面でも、チームをうまく軌道に乗せているように感じ取れます。左利きのDFマリウス・ホイプラーテンが加入し、中東移籍も噂された岩波拓也が残留したディフェンスラインはJリーグ随一の充実度です。
アタッカーについては名古屋に移籍したFWキャスパー・ユンカーに代わる、大型の外国人FWを探しているようですが、まだ獲得に至っていません。
ただ、札幌から復帰してきた36歳のFW興梠慎三や2年目のブライアン・リンセン、熊本から加入した地元出身の高橋利樹と1トップの候補はおり、彼らが序盤戦からのゴールという結果で、不安を解消させる期待もあります。
そうは言っても強化部は引き続き動いているようで、指揮官の望む大型FWが夏までには加わるはずです。
香川、セアラ、クルークスが加わるC大阪
7番人気は17.00倍のC大阪です。これを妥当と見るかは意見が分かれるところかもしれません。
筆者の予想では、C大阪が戦術的なベースに12年ぶり復帰の香川真司、さらにレオ・セアラ、ジョルディ・クルークスとアタッカーに主力級の実力者がプラスされる分、12.00倍ぐらいのポテンシャルはあると見ています。
ただ、そうした戦力を3年目の小菊昭雄監督がどうマネージメントするかは躍進の鍵です。
FC東京は松木に続く若手の成長に注目
FC東京は26.00倍という評価通りで、期待も不安もあるというのがリアルなところでしょう。
アルベル監督がポゼッション型の攻撃スタイルを植え付けていますが、決め手となるのはアダイウントンやレアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラの推進力、打開力を生かすカウンターであり、指揮官の思考とタレントの強みをさらに融合させていく作業が、かなり難しいタスクにも思います。
その一方でディフェンス力もJ1上位ですが、さらにスタイルが浸透していく中でのリスクマネージメントもテーマになってきそうです。
35歳のDF森重真人はリーダーとして頼りになりますが、パリ五輪世代のDF木村誠二などが、さらに成長をアピールして主力のポジションを確立させるかどうかも注目です。
さらなる飛躍の鍵を握るのはプロ2年目となるMF松木玖生に続く若手の台頭で、ユースから昇格したMF俵積田晃太やFW熊田直紀、昨年は特別指定選手だった高卒ルーキーのMF荒井悠汰など、10代の台頭が躍進に直結しそうです。
低評価ながら躍進に期待できるのは九州の2チーム
中下位では81.00倍のサガン鳥栖を躍進候補と見ています。
41歳の川井健太監督が2年目となりますが、ここ数年の傾向と違うのは、ベースになる戦力がしっかりと残ったこと。そこにU-20日本代表のFW横山歩夢など、個性的なタレントが加わったことで、チーム力は格段とアップした印象があります。
筆者の見立てでは、それこそ9番人気の神戸と同等の23.00倍ぐらいでもおかしくないと評価しています。しかも昇格選手も含めて若手が多く、シーズン中の伸びしろも期待できそうです。
オッズ評価は低いが、新加入選手のフィットで上位も狙える福岡
その一方で、16位タイの101.00倍となったアビスパ福岡ですが、終盤まで残留争いを強いられた昨シーズンから、上積みがあまりないという評価があるのかもしれません。
しかし、FC東京から加入したMF紺野和也は個の打開力があり、堅守速攻のスタイルに合ってますし、東京Vから移籍のFW佐藤凌我も非凡な決定力を備えています。
スコットランドのセルティックから日本に戻ってきたMF井手口陽介も中盤でのタスクさえはっきりすれば、代表クラスの強度を出せるタレントなので、そうしたパーツが長谷部茂利監督のスタイルにハマれば、周囲をあっと言わせる上位躍進もあるかもしれません。