2022シーズンのJ1リーグがいよいよ開幕します。開幕に合わせてブックメーカーから今季の優勝オッズが発表されており、今回はJリーグを幅広く取材する河治良幸氏に優勝オッズを参考にしたシーズン展望をお願いしました。
みなさんの応援するチームの優勝オッズがどう設定されているのか、注目チームの動向や評価をチェックして、あなたの予想の参考にしてみてください。
編集:永田淳(ブクサカ編集部)
J1優勝オッズから展望する2022シーズンのJ1。最有力の川崎Fをライバルは止められるのか?
引用オッズはすべてウィリアムヒル社発表のもので、優勝オッズは日本時間2022年2月17日時点のものをご紹介しています。
チーム名 | 優勝オッズ | |
1 | 川崎フロンターレ | 1.28倍 |
2 | 横浜F・マリノス | 6.00倍 |
3 | ヴィッセル神戸 | 11.00倍 |
4 | 浦和レッズ | 12.00倍 |
5 | 鹿島アントラーズ | 13.00倍 |
6 | 名古屋グランパス | 21.00倍 |
7 | FC東京 | 34.00倍 |
8 | サガン鳥栖 | 51.00倍 |
セレッソ大阪 | 51.00倍 | |
10 | アビスパ福岡 | 67.00倍 |
コンサドーレ札幌 | 67.00倍 | |
ガンバ大阪 | 67.00倍 | |
13 | サンフレッチェ広島 | 101.00倍 |
14 | 清水エスパルス | 151.00倍 |
15 | 湘南ベルマーレ | 201.00倍 |
柏レイソル | 201.00倍 | |
17 | 京都サンガ | 251.00倍 |
18 | ジュビロ磐田 | 251.00倍 |
提供オッズは日々刻々と変化しております。最新版オッズは以下、WilliamHill(ウィリアムヒル)社の実際のオッズマーケット画面にてご確認ください。
最新版オッズ
⇒ Jリーグ ディビジョン1 優勝 2022|WilliamHill
2022シーズンのJリーグで大きな注目を集めるのは、川崎フロンターレが三連覇を達成できるかどうかです。チーム力や選手の経験を考えれば、十分に可能性があるでしょう。
しかし、ブックメーカーの優勝オッズでは1.28倍という圧倒的な数字になっているものの、実際の戦いでは一筋縄ではいかないでしょう。その理由は、ライバルが昨年よりレベルアップしていると見られるからです。
横浜FMが川崎Fを止められるかどうかは、新戦力の働き次第
昨シーズン2位だった横浜F・マリノスは6.00倍と川崎Fとオッズでは差がありますが、新戦力のピースが戦術にうまくかみ合えば十分に逆転は可能でしょう。
昨年は得点数で唯一、川崎Fを上回る82得点を記録。しかし、オフには23得点を記録したFW前田大然が恩師アンジェ・ポステコグルー監督の率いるスコットランドのセルティックに移籍しました。
そのため彼の抜けた穴を懸念する声もありますが、ベガルタ仙台から加入した西村拓真、さらに昨シーズン札幌で14試合12得点をあげたアンデルソン・ロペスがレオ・セアラ、仲川輝人とエースの座を争います。
もうひとつの懸念材料として、守備の要だったチアゴ・マルチンスの移籍があります。圧倒的な守備能力を誇ったセンターバックは高いラインの守備を支えていただけに、新戦力のエドゥアルドや畠中槙之輔、岩田智輝がGK高丘陽平とともに緻密なリスク管理をしていくことが求められます。
注目はリカルド体制2年目で進化を続ける浦和。神戸の戦力も魅力
上記2クラブの次には、ヴィッセル神戸が11.00倍、浦和レッズが12.00倍、鹿島アントラーズが13.00倍、名古屋グランパスが21.00倍で続きます。ブックメーカーのオッズ通り、このあたりまでが優勝争いの候補でしょうか。
ただし、この4クラブの力関係は拮抗しているので、ちょっとしたきっかけでも変動するかもしれません。注目は昨シーズンの天皇杯で優勝し、プレシーズンのスーパーカップでも王者・川崎Fを破った浦和レッズです。
リカルド・ロドリゲス監督は就任2年目ですが、強化の責任者である西野努テクニカルダイレクターは”3年計画”の節目としてリーグ優勝を最大目標とし、指揮官もそこに向けて最大限の力を注ぐことを宣言しています。徳島で4シーズン指導したMF岩尾憲の加入は大きく、川崎Fに勝利したスーパーカップでも中盤から戦術的なコントロールをハイレベルに実行していました。
ボール奪取力に優れる柴戸海をはじめ伊藤敦樹、平野祐一といった中盤の選手がリカルド監督の戦術を理解するためにも岩尾は欠かせないピースとなりますが、過密日程を考えれば33歳の司令塔に頼り過ぎないチームになっていくことがリーグ優勝の鍵でしょう。
その一方で、キャスパー・ユンカーを擁する前線は層の薄さを指摘されます。そこも移籍期間中の補強が示唆されており、その補強次第でオッズも変動することが予想されます。
ただ、開幕前に新型コロナウイルスの感染者が多数出るなど、せっかくスーパーカップの快勝でムードが上がりかけたところから、ややトーンダウンしている部分もあります。長い目で見れば川崎F、横浜FMの対抗馬として上位争いを演じる期待は高いが、新外国人のダヴィド・モーベルグも来日できていないなど、苦しい序盤戦でどれだけ勝ち点を積み重ねられるか。そこもポイントになりそうです。
3番人気となっているヴィッセル神戸は、主力のタレントを見れば川崎Fや横浜FMにも引けを取りません。ただ、やはり主力の個の力が大きい分、ひとつのアクシデントで生じるダメージがライバルより大きそうです。
言い換えれば、日本代表の大迫勇也やアンドレス・イニエスタ、新加入のDF槙野智章といった主力が何のアクシデントもなくシーズンを戦うことができれば、確実に優勝争いには加わってくるはずです。
ただ、コロナ禍もあり、物事はそう簡単ではないでしょう。やはりU-23日本代表のMF郷家友太をはじめ小田裕太郎、小林友希などが高いレベルで突き上げて行くことが躍進の鍵になってきます。
新監督を迎えた鹿島と名古屋。既存戦力をうまく活かせるか
鹿島アントラーズと名古屋グランパスはともに新監督を迎えましたが、鹿島はアンデルレヒトなどで指揮したスイス人のレネ・ヴァイラー監督が来日できていません。
これはサンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督も同じですが、レネ監督は現場の指揮をより岩政大樹コーチに一任していると見られます。これが序盤戦でどう出るのか。また監督が合流した直後に生じうるラグがどのように解消されて行くかも大事な要素になります。
名古屋グランパスはかつてガンバ大阪でJリーグ、天皇杯、リーグ杯の三冠を獲得した経験を持つ長谷川健太監督のもとで、堅守速攻をベースに上位争いを演じた前体制を上回る成績を狙います。
新体制といっても、長谷川監督の戦い方は良い意味でシンプルなところがあり、ある程度の理解にそれほど時間はかからないはずです。日本代表のMF稲垣祥やDF中谷進之介を軸に、持ち前のディフェンス力にハイプレスからのボール奪取がうまく融合すれば、優勝争いに絡んでも不思議ではありません。
オッズ評価を覆す可能性を秘める広島、福岡、札幌
オッズ以上の躍進が期待できるのは101.00倍のサンフレッチェ広島です。
上記の通り新監督が開幕時点で来日できていないのは大きなマイナスですが、昨年の主力から退団選手がほとんどおらず、そこに期限付き移籍で経験を積んだMF野津田岳人や川村拓夢が戻り、戦力的な底上げは確実にされています。選手間の連携や呼吸はすでにあるところに、かつてドイツ代表の改革も担ったスキッベ監督の戦術や采配がどう加わるか注目です。
昨シーズン8位のアビスパ福岡も67.00倍とオッズでの評価は低めです。確かに2年目で相手から研究されやすくなりますが、長谷部茂利監督の堅守速攻がベースとして固められていますし、選手たちの戦術実行力の高さはJリーグ屈指です。
そこに新戦力のFWルキアンがさらなる鋭さを加えられれば、対戦相手にとって昨年以上に厄介なチームになりえます。優勝となると推しにくいが、夏に効果的な補強をできる強化部の支えもあり、ACLの権利を得られる3位は射程圏内と見ます。
同じく67.00倍の札幌も、目標はACL出場権とカップ戦のタイトル獲得です。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の浦和時代の教え子であるFW興梠慎三や下部組織出身の西大伍など、経験豊富なタレントを加え、若いチームに心身の支柱ができたことは大きいでしょう。
昨年は多くのチャンスをつくりながらゴールを仕留めきれず、逆にワンチャンスを決められて勝ち点を落とす試合も多かっただけに、そうした選手の経験は間違いなくプラスになるでしょう。
いきなり上位も?昇格組の京都サンガ、ジュビロ磐田
昇格組の京都サンガとジュビロ磐田が251.00倍と最低オッズですが、優勝はともかく波に乗れば一桁順位でのフィニッシュは狙える戦力的ポテンシャルを備えています。
京都はかつて湘南を率いた曺貴裁監督のもと、攻守の切り替えが素早いアグレッシブなサッカーで躍進を狙います。ハイプレスをベースとしますが、流れ次第では引いて守るなど勝負のしたたかさも備えています。
ジュビロ磐田も遠藤保仁や大津祐樹など、J1での経験が豊富な選手も多いです。昨年までJ2ヴァンフォーレ甲府で評価を高めた伊藤彰監督のもと、可変性の高いスタイルで相手のディフェンスを翻弄し、そこから杉本健勇、黒川淳史、ファビアン・ゴンザレスなど気鋭のアタッカーがゴール前に迫力をもたらせば、いきなり上位争いに割って入るかもしれません。
2022 J1リーグ優勝の行方
世界でも稀に見る拮抗したリーグとして知られたJリーグですが、ここ5年間で川崎Fが4回の優勝を果たしています。しかも過去2年は勝点も大差がつきました。
しかし、昨季途中に田中碧と三笘薫、オフに旗手怜央と移籍が続いた中で、ライバルとの戦力差は埋まっているので、三連覇の道のりは決して楽なものにはならないでしょう。
厳しい戦いを乗り越えて川崎Fが三連覇を果たすのか、横浜FMをはじめとしたライバルが阻止するのか。白熱したシーズンになることは間違いありませんが、コロナ禍での感染による欠場や活動停止といったアクシデントができるだけ起こらないこと、さらにシーズンが終わる頃にはサポーターの観戦環境など”日常”を取り戻せていることを願っています。