2月の開幕から4ヶ月が経過し、シーズンの約半分の試合を消化したJ1リーグ。予想通り結果を出しているチームもあれば、良くも悪くも期待を裏切る結果となっているチームも多く、今期も混戦模様となっています。
今回は前半戦折り返しのタイミングで、各チームの戦いぶりに応じて変動している優勝オッズを参考に、河治良幸氏にシーズン前半戦の振り返りと後半戦の展望をお願いしました。
編集:永田淳(ブクサカ編集部)
海外ブックメーカー発表のJ1リーグ優勝オッズ
2022シーズンのJ1リーグは第16節を終えて、国際Aマッチデーによる中断期間を迎えました。全34試合で勝点を競うレギュレーションでほぼ折り返しを迎えており、今は中間査定をするにはちょうど良いタイミングです。
オッズはWilliamHill社発表のものを引用、順位と勝点は第16節消化時点のものです。
優勝オッズ (開幕前オッズ) |
現在の順位(勝点) | ||
1 | 川崎フロンターレ | 2.00倍 ↘ (1.28倍) |
3位(勝点30) |
2 | 横浜F・マリノス | 2.30倍 ↗ (6.00倍) |
1位(勝点31) |
3 | 鹿島アントラーズ | 3.75倍 ↗ (13.00倍) |
2位(勝点30) |
4 | 柏レイソル | 21.00倍 ↗ (201.00倍) |
4位(勝点27) |
サンフレッチェ広島 | 21.00倍 ↗ (101.00倍) |
7位(勝点24) | |
6 | セレッソ大阪 | 26.00倍 ↗ (51.00倍) |
5位(勝点26) |
7 | FC東京 | 34.00倍 → (34.00倍) |
6位 (勝点25) |
8 | サガン鳥栖 | 81.00倍 ↘ (51.00倍) |
8位 (勝点24) |
9 | 浦和レッズ | 151.00倍 ↘ (12.00倍) |
14位 (勝点15) |
10 | 名古屋グランパス | 201.00倍 ↘ (21.00倍) |
10位 (勝点20) |
京都サンガ | 201.00倍 ↗ (251.00倍) |
9位 (勝点20) |
|
アビスパ福岡 | 201.00倍 ↘ (67.00倍) |
12位 (勝点19) |
|
北海道コンサドーレ札幌 | 201.00倍 ↘ (67.00倍) |
11位 (勝点20) |
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ガンバ大阪 | 201.00倍 ↘ (67.00倍) |
13位 (勝点17) |
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15 | 湘南ベルマーレ | 501.00倍 ↘ (201.00倍) |
17位 (勝点13) |
ジュビロ磐田 | 501.00倍 ↘ (251.00倍) |
15位(勝点15) | |
ヴィッセル神戸 | 501.00倍 ↘ (11.00倍) |
18位 (勝点11) |
|
清水エスパルス | 501.00倍 ↘ (151.00倍) |
16位 (勝点13) |
提供オッズは日々刻々と変化しております。最新版オッズは以下、WilliamHill(ウィリアムヒル)社の実際のオッズマーケット画面にてご確認ください。
最新版オッズ
⇒ Jリーグ ディビジョン1 優勝 2022|WilliamHill
2連覇中の川崎フロンターレが相変わらずトップですが、1.28倍から2.00倍に下がり、開幕当初に比べやや不安が増してきていることを示しています。
2位も横浜F・マリノスで変わりませんが、オッズは6.00倍から2.30倍にジャンプアップしています。現在1位という成績もさることながら、得失点差も+13と上位チームでは突出しているためでしょう。
優勝オッズは川崎F2.00倍、横浜FM2.30倍、鹿島3.75倍で抜けており、4番手の柏が21.00倍と数字が大きく離れています。このオッズを見る限り、後半戦突入のタイミングで優勝の可能性が(現実的に)あるのは上位3チームに絞られたと見てよいでしょう。
強度で勝る首位・横浜FMと王者川崎の覇権争い。カギ握るのは夏場の戦い
川崎Fの鬼木達監督はライバルのマークも厳しくなる中で、ボールを動かして崩すスタイルに前向きな仕掛けの意識を植え付けていますが、選手たちが消化できているとは言い難い状況です。
新戦力のチャナティップがなかなかフィットしないまま怪我で離脱してしまったり、田中碧、三笘薫、旗手怜央が欧州移籍した影響も少なからず出ています。
大卒2年目の橘田健人が中盤の主軸に成長し、左サイドバックの佐々木旭が大卒ルーキーながらレギュラーに定着といったプラス材料もありますが、総合的にチーム力は過去2シーズンより明らかに下がっていることは否めません。
ただし、ACLの敗退で夏場の負担が軽くなったことも事実で、それは図らずも横浜FMに対するアドバンテージになり得ます。
特にレアンドロ・ダミアンや家長昭博はこの中断期間でリフレッシュして、本来の実力を発揮してくる期待は大いにあります。
現在首位、オッズ2位の横浜Fマリノス
横浜FMは16試合で30得点という攻撃力が売りで、昨シーズン23得点の前田大然が抜けた穴も新外国人のアンデルソン・ロペスや西村拓真など、誰か一人というよりアタッカー陣全体で埋めている格好です。
ただ、その得点源であるアンデルソン・ロペスが福岡戦での非紳士的な行為で6試合の出場停止処分を受けており、7月6日の広島戦まで不在となります。
ここを西村に加えて、ACLで大活躍したレオ・セアラや攻撃の中心であるマルコス・ジュニオール、怪我から復調中の仲川輝人などがカバーできるかが鍵を握ります。
もうひとつ横浜FMの課題となっているのがゲームコントロールです。
浦和レッズ戦は3-0から後半一気に押し返されて、キャスパー・ユンカーのハットトリックを許して引き分けに持ち込まれました。
アンデルソン・ロペスが退場となった福岡戦ではボールを支配しながら相手の堅固な守備を破り切れず、スローインの流れから一瞬の隙を突かれて決勝点を奪われました。
現在の川崎Fにあって横浜FMに無いのは粘り強く要所を制していく勝負強さですが、ベースの強度は現時点で横浜FMの方が上回っており、2.00倍と2.30倍というオッズは逆でもおかしくありません。
ただ、やはりこの両者が優勝を争うトップ2であることに変わりはなく、終盤までデッドヒートを続けていくのか。それとも一気に差が開くのか。それは夏場の戦いぶりで変わってきそうです。
大注目の3番手。新指揮官率いる鹿島はハイテンポとの”鹿島らしさ”の融合がポイント
現在3番人気の鹿島アントラーズは13.00倍から3.75倍まで上昇しました。(開幕時は11.00倍だったヴィッセル神戸、浦和レッズに次ぐ5位)
しかしながら岩政大樹コーチが序盤戦を安定した成績を残し、開幕後に来日したレネ・ヴァイラー新監督に引き継ぎ、その後も順調に勝点を積み重ねました。
3番手でありながら3.75倍は十分に”二強”を逆転できるという評価でしょう。
ただ、ここに来て少し不安要素になってきているのが、良くも悪くも前がかりなスタイルを裏返されるリスクです。
レネ監督が掲げる前からのプレッシャーやショートカウンターがハマっている時間帯は強いですが、90分続けることは不可能です。しかし、前半と後半それぞれ息切れが出てくる時間帯に、意図的なペースダウンがうまくできていません。
それは指揮官が現時点で、あまりそうしたことを意識していないのか、選手たちが表現できていないだけなのかは分かりませんが、数多くのタイトルを獲得していた時代の鹿島はペースアップとペースダウンのメリハリがはっきりしていました。
もちろん当時とは戦術面が変わっていますが、どんなスタイルだろうと、そうしたゲームコントロールはリーグタイトルを獲っていくためには大事な要素になってくるので、注意深く見守りたいポイントです。
ディフェンス力と鋭いカウンターで大躍進の柏
4番人気は21.00倍の柏レイソルとサンフレッチェ広島ですが、現時点でサプライズを提供している存在と言えます。(柏の優勝オッズは開幕当時201.00倍で、湘南ベルマーレと並び後から3番目)
昨年途中に攻撃の中心だった江坂任が浦和に移籍、そこから最後まで残留争いを強いられました。オフにも複数の主力が抜け、ネルシーニョ監督の手腕にも疑問の声が強まっていました。
しかし、度重なる怪我に泣かされながら、今季はこれまでになく好調のマテウス ・サヴィオをはじめ、細谷真大など若手が成長を見せて、序盤戦から良い流れに乗っています。
そのベースになったのが堅実なディフェンスです。
ディフェンスリーダーの高橋祐治を中心とした3バックをベースに、高い位置でのボール奪取から鋭いカウンターでマテウス ・サヴィオ、細谷、小屋松知哉らが推進力のある仕掛けでゴールに迫るスタイルは効率的でありながら迫力があります。
ボールを保持したところからの得点力に課題があるものの、運動量が難しくなる夏場にも対応できるサッカーで、そう簡単にパフォーマンスが落ちていくことは考えにくいです。
柏がこのまま躍進を続けて、上位フィニッシュするためのハードルになりそうなのが、二巡目の戦いです。
対戦相手は柏の戦い方をすでにインプットしており、ストロングポイントを消してくるでしょう。これまでは、どちらかというとチャレンジャーとして闘えていましたが、ここから先は柏を強者と見て戦ってくるチームの方が多くなると考えられます。
相手の対策を上回っていくためには経験豊富なネルシーニョ監督の采配も重要ですが、それ以上に鍵を握るのが若手の成長です。幸い柏にはアカデミー出身の選手を含む有望なヤングタレントが多くいます。
前出の細谷はもちろん、FW森海渡や鵜木郁哉、MF升掛友護、DF田中隼人などが現在の主力を脅かすほどの突き上げを見せるかどうか。彼らの成長は今シーズンの結果だけでなく、さらに先にもつながってきます。
広島、C大阪、FC東京…後半戦で上位に進出する中位クラブは?
その柏レイソル以上に”3強”が不気味な存在として捉えているのは広島かもしれません。
広島も101.00倍から約5倍、柏と同じく21.00倍に上昇を果たしていますが、開幕後に合流したドイツ人のミヒャエル・スキッベ新監督のもと、チームは着実に成長してきています。
鹿島と共通するのは縦のスペースを鋭く突いていくカウンターですが、守備のメリハリはより安定しており、試合で大崩れすることがありません。
不安要素だった前線にも新外国人のベン・カリファが加わり、ジュニオール・サントスとの補完関係もうまく行っています。けが人が出た時の選手層に不安はありますが、筆者は広島の優勝オッズは15.00倍ぐらいでもおかしくないと見ています。
6番手・オッズ26.00倍のC大阪
6番人気のセレッソ大阪は乾貴士の退団に揺れていますが、チームとしては清武弘嗣などセンターラインがしっかりしており、オーストラリア代表のFWアダム・タガートも復帰してきたことで、堅守速攻のベースが整ってきています。
中盤は奥埜博亮と原川力がシーズン通して良い状態を維持できるかどうかにかかっています。もちろん彼らだけに頼るのは綱渡りになるので、鈴木徳真や喜田陽の奮起も求められますが、ここは夏の補強ポイントかもしれません。
7番手・オッズ34.00倍のFC東京
7番人気のFC東京は開幕時と現在のオッズがまったく変わりません。
アルベル新監督のもとで、自分たちで主導権を取れていない試合も多くありますが、経験豊富な森重真人や新守護神のヤクブ・スウォビィクによる粘り強いディフェンスと外国人FWを含む前線の迫力で勝点獲得に結びつけています。
そうした中でも高卒ルーキーの松木玖生を開幕戦からスタメンで使い続けるなど、チームを育てながらそれなりの結果も出ており、夏場を越えてぐっと伸びればACL圏内でのフィニッシュの可能性は十分にあります。
ただし、アルベル監督は「来シーズンは批判してくれても構わない。今シーズンはあたたかく見守ってください」と語る。あくまで勝負は来シーズンのようです。
8番手・オッズ81.00倍のサガン鳥栖
8番人気のサガン鳥栖は監督が代わり、主力も大幅に入れ替わった状況で、現在8位というのは立派な数字です。
チーム内の競争力も高いですが、ハードワークをベースにするチームスタイルだけに、夏場の戦い方は大きなポイントになりそうです。
また確固たるエースが存在しないのは気になりますが、宮代大聖や垣田裕暉などタレント力に優れたFWはいるので、彼らがフィニッシュで違いを出せるかがチームの順位に直結しそうです。
豊富な戦力を持ちながら開幕前の期待を下回る2チーム。浦和と神戸は
中位から下位のチームで気になるのは浦和と神戸です。
浦和は現在、勝点15の14位であるにも関わらず、9番人気なのはチームのポテンシャルに対する根強い期待の表れでしょう。
ネックになっているFWの補強もあるかもしれませんが、勝点を積み重ねながらチームとしての自信を取り戻していけるか。ひとつきっかけを掴めば後半戦の大躍進もありそうですが、勝点31の横浜FMをはじめ、上位3チームとの勝点差は絶望的と言わないまでも、かなり厳しいものがあります。
開幕時のオッズから急落したのが17番人気の神戸です。
現在は勝点11の最下位で、11.00倍から501.00倍まで落ちているのも仕方がないところでしょう。ロティーナ監督に代わり、地道にチーム再建を進めている状況ですが、リーグ戦ではまず残留が目標で、ACLを含むカップ戦でのタイトルを目指すというのが現実的と考えられます。
下位では湘南ベルマーレが浮上の兆しを見せています。
優勝オッズは開幕時の201.00倍から501.00倍まで下がっていますが、FW町野修斗が6得点と結果を出し、ルヴァン杯で評価を上げたMF池田昌生もリーグ戦で主力に定着しつつあります。上位との差を考えればACL圏内は難しいですが、攻守がさらに噛み合えば、山口智監督が掲げていた5位というのも夢ではないでしょう。
もちろん夏場の過密日程で勝点を積み上げて、残留争いから脱出することが先決ですが、後半戦が楽しみなチームです。
今季のJ1、あなたの優勝予想はどこ?
川崎、横浜FM、鹿島…はたまた大逆転で上位3チームをひっくり返すチームが出てくるのか。あなたならどこのチームの優勝にベットしますか?