2022-23シーズンのUEFAヨーロッパリーグの組み合わせ抽選が日本時間8月26日に行われ、9月8日に開幕を控えています。前回は鎌田大地、長谷部誠のフランクフルトが頂点に立ち、日本でも注目を集めた大会について、今季も中継実況を務める西岡明彦氏に展望を語っていただきました。
取材・編集:永田淳(ブクサカ編集部)
海外ブックメーカー発表/2022-23 ヨーロッパリーグ優勝オッズ
WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表のUEFAヨーロッパリーグ優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | アーセナル | 6.50倍 |
2 | マンチェスター・U | 8.50倍 |
3 | ローマ | 13.00倍 |
4 | ラツィオ | 21.00倍 |
5 | ベティス | 26.00倍 |
6 | レアル・ソシエダ | 29.00倍 |
7 | フライブルク | 34.00倍 |
PSV | 34.00倍 | |
9 | ウニオン・ベルリン | 41.00倍 |
10 | フェイエノールト | 51.00倍 |
モナコ | 51.00倍 | |
12 | フェネルバフチェ | 67.00倍 |
スポルティング・ブラガ | 67.00倍 | |
レンヌ | 67.00倍 | |
15 | オリンピアコス | 81.00倍 |
16 | ユニオン | 101.00倍 |
レッドスター | 101.00倍 | |
ディナモ・キエフ | 101.00倍 | |
ボデ/グリムト | 101.00倍 | |
ナント | 101.00倍 | |
21 | マルメ | 151.00倍 |
ミッティラン | 151.00倍 | |
トラブゾンスポル | 151.00倍 | |
24 | フェレンツヴァーロシュ | 201.00倍 |
チューリッヒ | 201.00倍 | |
シュトゥルム・グラーツ | 201.00倍 | |
27 | ティラスポリ | 251.00倍 |
ラルナカ | 251.00倍 | |
ルドゴレツ | 251.00倍 | |
カラバフ | 251.00倍 | |
31 | ヘルシンキ | 301.00倍 |
32 | オモニア・ニコシア | 501.00倍 |
※オッズは2022年8月29日時点のWilliamHill公式サイトから引用
今の充実度からいえば、優勝に一番近いと思うのはプレミアリーグ開幕4連勝のアーセナルですね。今スタメンで出続けている選手の状態はすごく良いですが、まだメンバーが大きく入れ替わったことがないので、誰かが欠けたときにも同じ戦いを続けられるかが今後のポイントになるのではないでしょうか。
前回大会を制したフランクフルトは、昨季国内で狙えるタイトルはなくなったことでこの大会に集中できましたし、準優勝のレンジャーズも国内でのライバルはセルティックぐらいで、ヨーロッパリーグに重心を置けるチームでした。
アーセナルの現状を考えると、プレミアリーグでトップ4、うまくいけば優勝が優先される目標になるので、この大会の戦い方は難しいところです。ヨーロッパリーグの賞金はアーセナルにとって大きなものでもないので、まずはプレミアリーグ優先となるでしょう。
ヨーロッパリーグの試合が木曜日に試合が行われると週末の国内リーグに影響があるので、年内はターンオーバーしながらの戦いになると思います。アーセナルはその時々で国内リーグでどの順位にいるかによって、ヨーロッパリーグへの意識が変わってくるでしょう。
仮に好調を維持したとしても、プレミアリーグをぶっちぎりで優勝するということは難しいので、悩ましいやりくりが続くことにはなると予想します。
ヨーロッパリーグは中堅クラブがタイトルを狙いにいく大会で、それを応援する地元も大いに沸き、チャンピオンズリーグとはまた違った楽しみがあるので、そのあたりも楽しんでいきたいと思っています。
次からは、グループごとに見ていきたいと思います。
【グループA】プレミア開幕から充実しているアーセナルの1位抜け濃厚
グループ1位オッズ | |
アーセナル | 1.36倍 |
PSV | 5.00倍 |
ボデ/グリムト | 9.00倍 |
チューリッヒ | 15.00倍 |
ここはアーセナルの1位抜けが堅いと見ます。PSVはプレーオフで負けてヨーロッパリーグに回ることになりましたが、現在の調子、戦力ではアーセナルが一枚上でしょう。
ジェズスやジンチェンコがチャンピオンズリーグに出場しないクラブに移籍したというのは、お金だけではない想いがあってのものだと考えています。アルテタ監督との関係や、アーセナルを変えたいという想い。
そこでまず熱意が向けられるのはプレミアリーグの優勝争いとチャンピオンズリーグの出場権になります。このヨーロッパリーグの優勝でも来季のチャンピオンズリーグ出場権は得られますが、プレミアでトップ4を目指すのが先になるでしょう。
この新加入2人は、アルテタ監督との関係はシティ時代から良かったのかもしれませんが、ここまで早くフィットしたプレーを見せているのはさすがですね。
ただ、アーセナルがグループリーグの試合にフルメンバーで臨むかどうかによって、このオッズは変わってくると思います。
【グループB】混戦になりそうなグループ。一番人気のレンヌ以外にもチャンス大
グループ1位オッズ | |
レンヌ | 2.25倍 |
フェネルバフチェ | 2.50倍 |
ディナモ・キエフ | 5.00倍 |
ラルナカ | 13.00倍 |
一番人気のオッズとなっているレンヌは、リーグアンで開幕3戦目で勝利を挙げたものの、ここまで2勝1分2敗と満足できる結果を残せていません。
昨季のリーグアンでPSGに次ぐ82ゴールを挙げた攻撃陣は、プレシーズンのPSG日本ツアーでインパクトを残したカリムエンドが加わり、よりパワーアップしていますが、開幕から5試合すべてで失点を喫しているのは気になるところです。マルセイユから加わり、定位置争いに参入しているベテランGKマンダンダらを中心としたディフェンスの立て直しができるかどうかが、今後のポイントになりそうです。
図抜けたチームがいるわけではないので、フェネルバフチェ、ディナモ・キエフにも十分チャンスがあるグループだと言えるでしょう。
【グループC】”優しいモウリーニョ”率いるローマが強さを見せる展開を予想
グループ1位オッズ | |
ローマ | 1.73倍 |
ベティス | 2.50倍 |
ヘルシンキ | 13.00倍 |
ルドゴレツ | 13.00倍 |
ローマのモウリーニョに期待です。
“勝てる監督”で、以前の厳しいイメージからも変わっています。モウリーニョの場合は、もともと優しい監督が、メディアを使って周りを発奮させる手段を取っていたのですが、もうそうしなくても監督としての力を知られているので、メディアや相手監督に噛みついて騒がせるということをやらなくなりました。もうベテランの域に入って、良いスタイル、雰囲気になっていると感じます。
ユヴェントスの一時代から、次はミラノの2クラブ(ミラン・インテル)、ローマの2クラブ(ローマ・ラツィオ)がイタリア復権のカギを握る存在だと見ています。
特にインテルのシモーネ・インザーギ、ラツィオのサッリとモウリーニョが監督2年目のシーズンというのも楽しみです。昨季は手探りの部分もあったと思いますが、今季はそれぞれのカラーがより出るでしょう。
【グループD】原口元気所属のウニオンに突破の大チャンス
グループ1位オッズ | |
ウニオン・ベルリン | 2.50倍 |
スポルティング・ブラガ | 2.87倍 |
ユニオン | 5.00倍 |
マルメ | 6.00倍 |
ここは他に比べるとグループ全体のレベルがやや落ちるかと思います。原口元気もプレーするウニオン・ベルリンが一番人気です。
この大会に懸けるモチベーションという意味では、ウニオン・ベルリンは強豪クラブに比べて強いと思います。ウニオンクラスでもタイトルを狙えることに燃えるでしょうし、ベルリンでもヘルタに人気を持っていかれていると思うので、ここで力を見せたいところでしょう。ただ、こちらに力を入れすぎてブンデスリーガに影響が出てしまうのはまずいので、そのバランスをうまく取る必要はあるでしょう。
ウニオンは国内ではヘルタ、ライプツィヒに勝っているので、その戦いぶりをヨーロッパリーグでも出せれば、上位へのチャンスも出てくると思います。原口の出番も楽しみにしています。
【グループE】今後復調予想のマンチェスター・Uに久保建英のソシエダが挑む
グループ1位オッズ | |
マンチェスター・U | 1.44倍 |
レアル・ソシエダ | 3.50倍 |
シェリフ・ティラスポリ | 13.00倍 |
オモニア・ニコシア | 21.00倍 |
外的なプレッシャーに屈することなく戦い続けることができれば、ユナイテッドは良くなっていくでしょう。
テン・ハーグ監督は、クリスティアーノ・ロナウドを外したり、先日のリヴァプール戦では主将マグワイヤを外したりもしています。これは自身のやってきた仕事に実績があって、自信もあるからできるのだと思います。結果が出なければ解任される厳しい仕事ではありますが、辛抱強く戦っていけば、良くなっていくと思っています。
シーズン始まってからカゼミーロ、アントニーを獲得するなど、落ち着いていないところがマイナスに働かなければ良いですね。シーズンを戦いながらもプレシーズンのような雰囲気もありますから。ポジティブに考えれば、ここから上がっていく可能性は十分にあると思います。
ソシエダの久保建英はラ・リーガ開幕戦でゴールを決め、新天地でもプレー時間を確保できているようなので、このヨーロッパリーグでも堂々としたプレーを期待します。
昨季モルドバのクラブとして初めてチャンピオンズリーグ本戦に出場し、レアル・マドリードに2-1で勝利するなど2勝したシェリフは、13.00倍の3番人気となっていますが、この大会でも予想を覆す試合をする可能性十分でしょう。番狂わせがあるのがヨーロッパリーグのおもしろさでもあると思います。
【グループF】注目は魅力的な攻撃サッカーでセリエAでも好調のラツィオ
グループ1位オッズ | |
ラツィオ | 1.67倍 |
フェイエノールト | 3.50倍 |
ミッティラン | 7.00倍 |
シュトゥルム・グラーツ | 11.00倍 |
ラツィオはおもしろいと思います。
もともとサッリ監督は魅力的なサッカーをする監督で、ナポリ時代のイメージがすごく良く、攻撃的、躍動的で選手がのびのびプレーしている印象でした。しかし、その後チェルシー、ユヴェントスに行って結果に厳しいところが難しかったと思います。優先されるものは攻撃なのに、結果を残さなければいけないということで短命に終わってしまいました。
ラツィオではこれまでのプレッシャーとは違うと思いますし、豪華な補強ができるほどの資金力もなく、現有戦力でうまくやるかが求められますが、その部分ではうまくチームづくりをしていける監督だと思います。
とはいえ、インモービレ、ミリンコヴィッチ=サヴィッチといった選手がいますし、小粒ながら代表選手も揃っていて魅力的です。ルイス・アルベルトやミリンコヴィッチ=サヴィッチに出ていた移籍の話も落ち着けば、継続した戦いができて、このグループをけん引することになるでしょう。
【グループG】混戦必至だが、フライブルク堂安律にはチャンスあり
グループ1位オッズ | |
フライブルク | 2.37倍 |
オリンピアコス | 3.00倍 |
ナント | 4.00倍 |
カラバフ | 9.00倍 |
先日、ブンデスリーガのシュトゥットガルト対フライブルクの実況を担当しました。その試合でのフライブルクの内容は良くはありませんでした。堂安律がいますが、ヨーロッパリーグを戦う余裕があるかどうか。蹴り合って走り合っていた試合で、あまり良いイメージは残っていません。
それでも2011-12シーズンから指揮を執るシュトライヒ監督は、現実的に結果を残せる監督ではあるので、どうやりくりするか手腕が問われることになりそうです。
オッズ1位のフライブルクは国内でも上位から勝っているわけではありませんから、オリンピアコス、ナントにも十分チャンスがあるグループだと見ています。
【グループH】南野拓実加入のモナコはタイトル狙える存在で1位抜け予想
グループ1位オッズ | |
モナコ | 2.00倍 |
レッドスター | 3.50倍 |
トラブゾンスポル | 4.50倍 |
フェレンツヴァーロシュ | 9.00倍 |
モナコはチャンピオンズリーグの3次予選でPSVに破れてヨーロッパリーグに回ってきました。一番人気のオッズは妥当でしょう。
リヴァプールからモナコに移籍した南野拓実は、良い条件で獲得されたと聞いています。彼を獲得することで上を目指す考えというのであれば楽しみですね。クラブとしてチャンピオンズリーグに出られなかった悪い影響が出ないことを祈っています。
モナコであればこのヨーロッパリーグを狙える立場だと思うので、このグループは1位で抜けると予想します。
優勝は経験で上回るマンチェスター・U
優勝予想はマンチェスター・Uです。アーセナルが良い状態ではありますが、選手や監督の欧州舞台での経験値で考えるとユナイテッドなのかなと思います。
アーセナルは若くて新しいチーム。昨季のプレミアリーグ終盤でのトッテナムとの4位争いで勝負弱さが出てしまったのがアーセナルだったので、フルメンバーでの戦いを考えるとユナイテッドが優位かなと思います。
昨季は予想がことごとく外れたので、今年は当てたいですね(笑)