カタールワールドカップ2022 ドイツ代表展望【木崎伸也】 | ブクサカ

カタールワールドカップ2022 ドイツ代表展望【木崎伸也】

ワールドカップ

カタールワールドカップ2022は日本時間11月21日(月)に開幕。12月19日(月)の決勝戦まで約1ヶ月間に渡って戦いが繰り広げられます。

4度の優勝を誇るサッカー超大国、そして日本と初戦で対戦する今大会のドイツの展望について、現地取材でお馴染み、木崎伸也さんに占っていただきました。

木崎伸也

1975年東京都生まれ。2002年夏にオランダへ渡り、2003年からドイツへ拠点を移してヨーロッパサッカーを取材。2009年に帰国して活動範囲を広げ、代理人をテーマにした漫画『フットボールアルケミスト』の原作を担当。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』、『直撃 本田圭佑』など

木崎伸也をフォローする

カタールワールドカップ2022 ドイツ代表の試合日程と放送予定

ドイツ代表のカタールワールドカップ本大会での試合スケジュールがこちら。いずれも日本時間での日程、放送予定です。

日時 対戦国 放送予定
11月23日(水)
22:00
日本 NHK総合
abema TV
11月27日(日)
4:00
スペイン abema TV
12月1日(木)
4:00
コスタリカ abema TV

 

ブックメーカー発表オッズの優勝オッズは10.00倍

Embed from Getty Images

海外ブックメーカー・WilliamHILL(ウィリアムヒル)社が発表している「ドイツ代表の敗退ステージオッズ」は以下の通り。

GL敗退 5.50倍
 ベスト16敗退 3.00倍
 ベスト8敗退 3.50倍
 ベスト4敗退 6.00倍
 準優勝 10.00倍
 優勝 11.00倍

※ 2022年11月18日時点のオッズを引用 

今大会の優勝オッズを見ると、

  • 1位 ブラジル4.50倍
  • 2位 アルゼンチン6.00倍
  • 3位 イングランドおよびフランス8.00倍
  • 5位 スペイン10.00倍
  • 6位 ドイツ11.00倍

となっており、ドイツは6番手。つまりドイツはダークホース的な位置付けです。グループEで同組になったスペインより、わずかに評価が低い。決勝トーナメント1回戦の敗退オッズは3.00倍と低めに設定されており、そこで大会から姿を消してしまう可能性も十分にあります。

こういう低評価の原因は大きく2つあります。1つ目は決定力不足です。

ドイツはクローゼが引退して以来、ストライカー不足に悩まされ続けてきました。キミッヒやザネなど中盤にタレントを擁してゲームを支配し、たくさんのチャンスをつくれますが、最後のシュートをなかなか決められません。

今年9月のネーションズリーグのハンガリー戦がまさにそうでした。前半に先制を許して後半に猛攻を仕掛けましたが、ついに相手ゴールラインを割ることができず、0-1で敗れてしまいました。

2つ目はカウンターに対してのもろさです。前述の通り、ドイツはボール保持率が高く、敵陣に侵入して攻撃し続けることができますが、それは諸刃の剣です。多くの場合、後方がセンターバック2人だけになっていることが多いのです。

そのためドイツは、しばしば危険なカウンターにさらされてしまいます。9月のネーションズリーグのイングランド戦でも、ハリー・ケインやラヒーム・スターリングに何度もカウンターのチャンスをつくられ、一時は2点差をつけてリードしたものの3−3で引き分けてしまいました。

ただし、もちろんプラス材料もあります。最大のプラス材料は19歳の新鋭、ジャマル・ムシアラの急成長です。すでに昨季バイエルンでコンスタントに出場していましたが、今季はセルジュ・ニャブリやレロイ・ザネといった先輩たちの負傷欠場もあって先発出場の機会が増え、9得点7アシストと大爆発しています。

細かいタッチの独特のドリブルで、狭いエリアをすり抜けていくのが武器。ローター・マテウスは「メッシのレベルに到達するかもしれない」と大絶賛しています。

ムシアラは中盤の選手でセンターFWではありませんが、最も得意とするトップ下で先発したら、ドイツ代表の決定力不足をひとりで解決するポテンシャルを秘めています。

また、セットプレーがドイツを救う可能性もあります。ハンジ・フリックは昨夏にドイツ代表監督に就任すると、デンマーク人のマッツ・ブットゲライトをセットプレーコーチとして採用しました。

相手をブロックしてコースを空けるといったスクリーンプレーなどの連携に加えて、ブットゲライトは選手たちにキックの指導もしています。野球などで使用される装置「トラックマン」を導入し、CKやFKの回転数、回転軸、軌道などを測定。その数値をもとに、蹴り方などをアドバイスしているのです。

すでにフリックはコーチとして臨んだ2014年W杯においても、セットプレーの重要性を当時のヨアヒム・レーブ監督に進言し、ドイツ優勝に大きく貢献しています(ドイツはセットプレーから6得点を決めています)。

ムシアラとセットプレーという武器が機能すれば、下馬評を覆し、トーナメントを勝ち上がっても不思議ではありません。

 

グループステージ突破は既定路線か

WilliamHill(ウィリアムヒル)のロゴ

ドイツが所属するグループEの予選通過オッズがこちら。

スペイン 1.11倍
ドイツ 1.14倍
日本 4.33倍
コスタリカ 7.50倍

※ 2022年11月18日時点でのWilliamHILL社発表オッズを引用

優勝に関してはダークホース的存在のドイツも、グループステージでは優位に立っているのは間違いありません。グループEの予選通過オッズはスペインが1.11倍、ドイツが1.14倍となっており、W杯優勝経験2ヶ国のオッズが圧倒的に低くなっています。ドイツに100ドル賭けても114ドルにしかならないということです。

ただし、ドイツは前回大会の2018年W杯でメキシコと韓国にまさかの敗戦を喫し、グループステージで敗退してしまいました。理由はまさに「決定力不足」と「カウンターを受けたときのもろさ」でした。

その問題が解決していない以上、今大会で同じ過ちを繰り返さないとは言い切れません。ドイツは他国が想像する以上の緊張感を抱いているはずです。

 

初戦・日本戦

<Embed from Getty Images

ウィリアムヒル社発表の90分勝敗オッズがこちら。

  • ドイツ:1.50倍
  • ドロー:4.20倍
  • 日本:6.50倍

過去の対戦成績はドイツの1勝1分です。

日本戦の過去戦績
2004年12月 ○ 0-3(A)
2006年5月 △ 2-2(H)

ドイツの評価の低下は日本戦のオッズにも表れています。

11月6日時点ではドイツ1.40倍、ドロー4.60倍、日本7.50倍というオッズでしたが、11月18日にはドイツ1.50倍、ドロー4.20倍、日本6.50倍と変化しています。日本の評価が上がったのです。依然としてドイツ有利なことは間違いないのですが、日本勝利7.50倍→6.50倍というオッズの変化は日本サイドに小さくない勇気を与えるものです。

ドイツとして最も嫌な展開は、主導権を握るものの日本の守備を崩しきれず、カウンターを受けて失点するというもの。

もし日本にリードを許したら、ジョーカーとしてドイツ代表初招集のニクラス・フュルクルクを投入するでしょう。フゥルクルクは身長188cmの屈強なFWで、昨季ブレーメンの1部昇格に貢献し、その勢いのままに今季10得点を決めています。ドイツはこの長身FWに向けてなりふり構わずクロスを合わせてくるでしょう。

ドイツとしては早い時間帯で決着をつけるゲームプランを立てているのではないでしょうか。試合開始から超高強度のプレスと切り替えで日本を圧倒し、前半のうちに大量得点を狙ってくるに違いありません。もしそれがどハマりしたら、0-3といった思わぬ大差で日本が負ける可能性もあるでしょう。

 

第2戦:スペイン戦

Embed from Getty Images

ウィリアムヒル社発表の90分勝敗オッズがこちら。

  • スペイン:2.60倍
  • ドロー:3.30倍
  • ドイツ:2.75倍

過去の対戦成績はドイツの9勝8敗8分。

スペイン戦の過去戦績
(以下、直近4試合の戦績)

2014年11月 ○ 1-0(A)
2018年3月 △ 1-1(H)
2020年9月 △ 1-1(H)
2020年11月 ● 0-6(A)

イツにはルイス・エンリケ率いるスペインに対して嫌な記憶があります。2020年11月にネーションズリーグで対戦した際、0−6という屈辱的な大差で敗れたのです。

ドイツが公式戦で6失点差で敗れるのは初めてのこと。当時のドイツを率いていたのはレーブでしたが、両国の選手の顔ぶれは現在とほぼ同じ。トーマス・ミュラーとヨシュア・キミッヒは不在だったものの、マヌエル・ノイアー、ニクラス・ズーレ、レオン・ゴレツカ、イルカイ・ギュンドアン、ニャブリ、ザネが先発していました。

大量失点の原因は、無謀なオールコートのマンマークプレッシングにありました。スペインはそのやり方を見ると、相手FWを自陣深くに引き込んでドイツを間延びさせ、そのうえで必ずフリーになっているGKウナイ・シモンを使ってプレスをはがし、一気に相手ゴール前に迫って決定機をつくっていました。

おそらくドイツは、今回の対戦では慎重な戦い方を選択するのではないでしょうか。ハイプレスをかけてもGKを使われるため、センターラインの前後に網を張り、そこに入ってきたら激しくプレスをかける「ミドルゾーンプレッシング」を採用すると思われます。

オッズ的にはわずかにスペインが有利で、初戦の結果にもよりますがドイツにとっては同点で御の字の試合と言えるでしょう。

 

第3戦:コスタリカ戦

Embed from Getty Images

ウィリアムヒル社発表の90分勝敗オッズがこちら。

  • ドイツ:1.28倍
  • ドロー:5.00倍
  • コスタリカ:13.00倍

過去の対戦成績はドイツW杯での1勝のみ。

コスタリカ戦の過去戦績
2006年6月 ○ 4-2(H)

コスタリカはカウンターを得意にしているため、ドイツにとって無気味な相手です。コスタリカを率いるコロンビア人監督のスエレスが奇策を準備している可能性もあります。オッズはコスタリカ勝利13.00倍となっており、負けるはずがない格下ですが、カウンターの弱いドイツとしては少しも油断できない相手です。

今回、フリック監督はマリオ・ゲッツェをサプライズ招集しました。相手が守備を固めてきたときに、狭いスペースで仕事をできるのがゲッツェの特徴です。もしコスタリカ戦が0-0で推移したら、どこかのタイミングでゲッツェを投入するのではないでしょうか。

 

決勝トーナメントに進出した場合の組み合わせ

ドイツが決勝トーナメントに進出した場合、ラウンド16ではF組の上位2ヶ国と対戦予定ですが、そのF組の顔ぶれというのがこちらの面々。

  • ベルギー
  • カナダ
  • クロアチア
  • モロッコ

グループステージ突破オッズは、ベルギーが1.14倍、クロアチアが1.50倍となっており、3.00倍のモロッコ、3.70倍のカナダと力の差があると見られています。

冒頭の通り、ドイツはベスト16での敗退オッズが3.00倍と低くなっていますが、これはドイツがE組2位突破し、ベルギーがF組1位突破した対戦でベルギーが勝利すると見られているからでしょう。低評価のオッズを覆すような戦いができるのか、日本戦から始まるドイツの戦いぶりに注目しましょう。

タイトルとURLをコピーしました