日本時間8月6日(土)午前3時30分にキックオフのフランクフルト対バイエルン・ミュンヘンを皮切りに、いよいよ2022-23シーズンのドイツ・ブンデスリーガが開幕します。
10連覇中の王者バイエルンが今年もトップを走り続けるのか、それともドルトムントをはじめとしたライバルたちが止めるのか。
ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、スポーツライターの木崎伸也氏に展望してもらいました。https://buku-saka.com/cp/ger/odds-bundes-liga-22-23/
海外ブックメーカー発表/ドイツ・ブンデスリーガ優勝オッズ
ウィリアムヒル社発表のブンデスリーガの優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | 優勝オッズ(昨季順位) |
1 | バイエルン・ミュンヘン | 1.20倍(優勝) |
2 | ドルトムント | 9.00倍(2位) |
3 | ライプツィヒ | 13.00倍(4位) |
4 | レヴァークーゼン | 29.00倍(3位) |
5 | ボルシアMG | 101.00倍(10位) |
6 | フランクフルト | 126.00倍(11位) |
7 | ヴォルフスブルク | 151.00倍(12位) |
8 | ホッフェンハイム | 251.00倍(9位) |
9 | フライブルク | 301.00倍(6位) |
10 | ヘルタ・ベルリン | 401.00倍(16位) |
ケルン | 401.00倍(7位) | |
12 | マインツ | 501.00倍(8位) |
シュトゥットガルト | 501.00倍(15位) | |
ウニオン・ベルリン | 501.00倍(5位) | |
15 | アウクスブルク | 751.00倍(14位) |
ブレーメン | 751.00倍(2部2位) | |
ボーフム | 751.00倍(13位) | |
シャルケ | 751.00倍(2部1位) |
※オッズは2022年7月20日時点のWilliamHill公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ – 優勝 2022/23)から引用
ヨーロッパのトップリーグの中で、ブンデスリーガほど優勝予想が簡単なリーグはないでしょう。ここ10年間、バイエルン・ミュンヘンしか優勝していないのですから。
昨季、若き戦術家のユリアン・ナーゲルスマンが監督に就任すると、フランクフルト、アウクスブルク、ボルシアMG、ボーフムに敗れるという波乱はあったものの、優勝争いのライバルたちにはきっちり勝ち、バイエルンは10連覇を達成しました。
その強さは新シーズンでも変わらないと考えています。
大本命は今季もバイエルン・ミュンヘン。オッズも示す図抜けた強さ
今季もバイエルンがブンデスリーガ優勝の大本命であることに変わりはありません。
ウィリアムヒルの今季のブンデスリーガ優勝オッズのトップ5を見ると、
- バイエルン 1.20倍
- ドルトムント 9.00倍
- ライプツィヒ 13.00倍
- レヴァークーゼン 29.00倍
- ボルシアMG 101.00倍
となっており、バイエルンのオッズだけ段違いの低さです。
ブックメーカーとしても、もはやブンデスリーガの優勝予想は賭けの対象になりづらいと考えているのでしょう。ウィリアムヒルには「Betting without Bayern Munich」(バイエルン抜きの賭け)という項目があるほどです。
ただし、サッカーに絶対はありません。バイエルン優勝の確率が非常に高いのは間違いないですが、不安要素が存在します。
バイエルンの不安要素はレヴァンドフスキ移籍に伴う戦術変更
このブンデスリーガ5年連続得点王がバルセロナに引き抜かれたことで、バイエルンのレギュラー格に「古典的な9番」がいなくなってしまいました。カメルーン代表のシュポ=モティングが同タイプですが、実力的にはバックアップメンバーにすぎません。
そこでナーゲルスマンは基本布陣を見直し、今季は4−2−2−2や3−5−2を主に採用することを決めました。リバプールから加入したセネガル代表のマネとドイツ代表のニャブリが2トップを組み、中央をオーバーロードさせるという戦術です。
しかし、バイエルンのほとんどの選手にとって、「ナーゲルスマン流2トップ」は初めての経験です。プレシーズンに同システムでアメリカMLSのDCユナイテッドに6対2で圧勝しましたが、ドイツの強豪相手に機能するかは未知数です。
それにバイエルンには、4−2−3−1という伝統のシステムがあります。
昨季、シーズンの佳境に差し掛かった時、主力選手たちがナーゲルスマンに対して「4−2−3−1に固定して欲しい」と要求しました。ナーゲルスマンがそれを受け入れたことで戦術がブレ、CL準々決勝・ビジャレアル戦の敗戦につながってしまいます。
また、元ドイツ代表で現在解説者のディートマー・ハマンが問題視するのは、「水を運ぶ人」の不足です。スカイの番組でこう指摘しました。
「今のバイエルンは芸術家タイプが多すぎるんだ。バイエルンには『水を運ぶ人』やハードワーカーが足りない。チームには両方が必要だ」
ナーゲルスマンの戦術に再び不満の声があがるようだと、他チームにもチャンスが出てくるでしょう。
打倒バイエルンの第一候補は守備力アップのドルトムント
対抗馬の筆頭は、やはりドルトムントです。
開幕前、ドルトムントは不運に見舞われます。マンチェスター・シティに移籍したハーランドの後釜としてアヤックスからセバスティアン・ハラーを獲得したところ、精巣に腫瘍が見つかり、数ヶ月の離脱を余儀なくされてしまったのです。
しかし、ときに危機はチームの結束を強めます。テクニカルダイレクターから現場に復帰したエディン・テルジッチ新監督はこう言いました。
「残念ながらセバスチャンは試合に出られない。でも、私たちが彼のためにプレーすることはできるんだ」
今季ドルトムントはドイツ代表のセンターバックコンビ、ズーレとシュロッターベックを獲得。昨季はベテランのフンメルスがたびたびスピード不足を露呈しましたが、2人の加入によりDFラインが一気に高速化しました。
サッカー界には「いいFWは試合で勝利をもたらす。いいDFはシーズンで優勝をもたらす」という格言があります。エース離脱の穴を守備力で補い、バイエルンを苦しめる存在になるのではないでしょうか。
大穴狙いは攻撃力で勝負のレヴァークーゼン
大穴を挙げるとすれば、優勝オッズ29.00倍のレヴァークーゼンです。
昨季の得点ランキング2位のパトリック・シックや快速ウインガーのムサ・ディアビを擁し、攻撃の破壊力ではバイエルンに劣っていません。そしてジェラルド・セオアネ監督はヤングボーイズ・ベルン時代にスイスリーグを3連覇した優勝請負人でもあります。
まだレバークーゼンはブンデスリーガで優勝したことがありませんが、ジモン・ロルフェス新マネージャーが「望まなければ大きなことは成し遂げられない」と言うように、歴史を塗り替える準備はできています。
トップ4で終了オッズ/来季のUCL出場権を獲得するのは?
チャンピオンズリーグ出場権獲得となるトップ4終了オッズは以下の通り。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | バイエルン・ミュンヘン | 1.00倍 |
2 | ドルトムント | 1.25倍 |
3 | ライプツィヒ | 1.33倍 |
4 | レヴァークーゼン | 1.83倍 |
5 | ボルシアMG | 4.33倍 |
6 | フランクフルト | 5.00倍 |
ヴォルフスブルク | 5.00倍 | |
8 | ホッフェンハイム | 8.00倍 |
9 | ヘルタ・ベルリン | 15.00倍 |
10 | フライブルク | 17.00倍 |
11 | ケルン | 21.00倍 |
12 | マインツ | 26.00倍 |
シュトゥットガルト | 26.00倍 | |
ウニオン・ベルリン | 26.00倍 | |
15 | ブレーメン | 51.00倍 |
シャルケ | 51.00倍 | |
17 | アウクスブルク | 101.00倍 |
ボーフム | 101.00倍 |
※オッズは2022年7月20日時点のWilliamHill公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ 2022/23 – トップ4で終了)から引用
UEFAチャンピオンズリーグ出場権争い(4位以内)に関して言えば、ボルシアMGがダークホースになるのではないでしょうか。
イングランドでノリッジをプレミアリーグへ昇格させたダニエル・ファルケが新監督に就任し、GKから丁寧にビルドアップするサッカーに挑戦しています。
シャルケからボルシアMGに加入した板倉滉は川崎フロンターレ時代に培った技術を武器に、すでに欠かせない存在になっています。ボランチとセンターバックの両方でプレーできるユーティリティさがチームを助けています。
ボルシアMGがトップ4に入るオッズは18チーム中5位の4.33倍ですが、序列を覆してもおかしくないでしょう。
今季も日本人選手所属クラブは巻き込まれるか?降格オッズで見る残留争い
残留争いのオッズに目を向けると、日本サッカー界的には複雑な気分なのですが、日本人選手が所属するクラブが多く挙がってきます。
ボトム2で終了(2部降格)オッズはこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | アウクスブルク | 2.62倍 |
2 | ボーフム(浅野) | 2.75倍 |
3 | ブレーメン | 3.00倍 |
4 | シャルケ(吉田) | 4.00倍 |
ヘルタ・ベルリン | 4.00倍 | |
6 | シュトゥットガルト(遠藤・伊藤) | 5.00倍 |
7 | マインツ | 8.00倍 |
8 | ケルン | 9.00倍 |
9 | ウニオン・ベルリン(原口) | 15.00倍 |
10 | ホッフェンハイム | 17.00倍 |
フライブルク(堂安) | 17.00倍 | |
ヴォルフスブルク | 17.00倍 |
※オッズは2022年7月20日時点のWilliamHill公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ 2022/23 – Bottom Two Finish)から引用
昨季、シュツットガルトは最終節のアディショナルタイムに伊藤がそらしたボールを遠藤が決めて逆転勝利し、ぎりぎりで1部残留を果たしました。今季はもっと楽に残留を決めたいところでしょう。
いずれにせよ、少なくとも日本人所属のクラブの中のひとつは残留争いに巻き込まれそうです。
ビッグネームの移籍で混戦必至の得点王争い
予想が難しいという点でおもしろくなりそうなのが、得点王争いです。
昨季得点ランキング1位のレヴァンドフスキと同3位のハーランドがドイツを去り、本命不在となっているからです。得点王オッズは以下となっています。
オッズ順 | 選手名 | オッズ |
1 | サディオ・マネ(バイエルン) | 6.00倍 |
2 | パトリック・シック(レヴァークーゼン) | 8.00倍 |
3 | クリストファー・エンクンク(ライプツィヒ) | 9.00倍 |
4 | カリム・アデイェミ(ドルトムント) | 11.00倍 |
5 | アンドレ・シウヴァ(ライプツィヒ) | 13.00倍 |
6 | セルジュ・ニャブリ(バイエルン) | 15.00倍 |
アントニー・モデスト(ケルン) | 15.00倍 |
リヴァプールからバイエルンに加入したマネが7.00倍、昨季得点ランキング2位のシックが8.00倍、ライプツィヒのエンクンクが9.00倍、ザルツブルクからドルトムントに加入したアデイェミが11.00倍となっており、一昨季の得点ランキング3位のアンドレ・シウヴァが13.00倍、バイエルンのニャブリとケルンのモデストが15.00倍とだんご状態です。
この中でサプライズを起こしそうなのが、身長186cmで驚異の跳躍力を誇るケルンのモデストです。昨季バウムガルト監督のクロス戦術が見事にはまり、20点を決めて得点ランキングで4位になりました。
「高さ」にスランプはないので、今季も得点を量産するのではないでしょうか。
カタールW杯に向けて日本人選手の活躍が気になる2部にも注目
日本人選手6人がプレーするドイツ2部にも触れると、田中碧所属のフォルトゥナ・デュッセルドルフが1部に昇格できるかもしれません。
2部の昇格オッズはこのようになっています。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | ハンブルガーSV | 1.91倍 |
2 | フォルトゥナ・デュッセルドルフ (田中碧・内野・アペルカンプ) |
2.87倍 |
3 | ダルムシュタット | 5.00倍 |
ザンクトパウリ | 5.00倍 | |
5 | ハノーファー(室屋) | 5.50倍 |
6 | パーダーボルン | 6.00倍 |
グロイター・フュルト | 6.00倍 | |
ニュルンベルク | 6.00倍 | |
ビーレフェルト(奥川) | 6.00倍 |
今季、田中はデュッセルドルフでボランチのレギュラーに定着しており、充実したシーズンになりそうです。
6.00倍のビーレフェルトも、リーグでは開幕から2連敗となっていますが、開幕戦とDFBポカールで得点を決めている奥川雅也が所属しており、注目です。
独走にはならないと見るが、優勝予想はバイエルン
最後にあらためてシーズンを展望すると、つまらない予想になってはしまいますが、バイエルンが苦しみながらも最後に帳尻を合わせて11連覇を達成するのではないかと見ています。
ただし、ここ数年のように早期には決まらず、優勝争いは終盤までもつれるのではないでしょうか。