開幕前は10連覇中のバイエルン・ミュンヘンが今季も強いと予想されていましたが、今季は独走体制には入れていません。
気になる後半戦について、ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、スポーツライターの木崎伸也さんに展望してもらいました。
海外ブックメーカー発表/ドイツ・ブンデスリーガ優勝オッズ
英国大手スポーツブックメーカー、ウィリアムヒル社から発表されている2月9日時点のブンデスリーガ優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ | 開幕時オッズ |
1 | バイエルン・ミュンヘン | 1.07倍 | 1.20倍 |
2 | ライプツィヒ | 19.00倍 | 13.00倍 |
3 | ドルトムント | 19.00倍 | 9.00倍 |
4 | ウニオン・ベルリン | 34.00倍 | 501.00倍 |
5 | フランクフルト | 101.00倍 | 126.00倍 |
フライブルク | 101.00倍 | 301.00倍 | |
7 | ヴォルフスブルク | 501.00倍 | 151.00倍 |
ボルシアMG | 501.00倍 | 101.00倍 | |
9 | ブレーメン | 1001.00倍 | 751.00倍 |
マインツ | 1001.00倍 | 501.00倍 | |
レヴァークーゼン | 1001.00倍 | 29.00倍 | |
シュトゥットガルト | 1001.00倍 | 501.00倍 | |
ケルン | 1001.00倍 | 401.00倍 | |
ホッフェンハイム | 1001.00倍 | 251.00倍 | |
15 | アウクスブルク | 2501.00倍 | 751.00倍 |
ヘルタ・ベルリン | 2501.00倍 | 401.00倍 | |
17 | ボーフム | 5001.00倍 | 751.00倍 |
シャルケ | 5001.00倍 | 751.00倍 |
※オッズは2023年2月9日時点のWilliamHill公式サイトから引用。現在の優勝オッズも公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ – 優勝 2022/23)にて閲覧できます。
大本命だったバイエルン・ミュンヘンに黄信号?1.20倍という優勝オッズほどの優位性はない
バイエルン・ミュンヘンの連覇が「10」で途切れるかもしれません。今季のブンデスリーガはバイエルンの度重なる足踏みによって、例年以上に優勝争いが混沌としているのです。
第19節を終えた時点で、首位バイエルンと2位ウニオン・ベルリンの勝点差はわずか1。3位ドルトムントとの勝点差が3、4位ライプツィヒとの差が4となっており、ライバルたちがすぐ後ろに迫っています。
今季のバイエルンの特徴は引き分けが多いことです。昨季は5回しか引き分けなかったのが、今季は第19節終了時点ですでに7回も引き分けています。
相変わらずバイエルンの攻撃力はすさまじく、
- 第1節フランクフルト戦(6−1)
- 第3節ボーフム戦(7−0)
- 第8節レバークーゼン戦(4-0)
- 第10節フライブルク戦(5−0)
- 第12節マインツ戦(5-2)
- 第14節ブレーメン戦(6−1)
のように、ひとたび勢いに乗ると手がつけられないんですね。ところが、追加点を奪えないと次第にリズムが悪くなり、「これがバイエルン?」と疑いたくなるようなチームになってしまいます。
驚くことに第19節までにバイエルンは「1-0」での勝利が一度もありません。リードしたら守備を固めてのらりくらり時間を使うといったイタリアで言うところの「ウノ・ゼロ」の戦い方をできないのです。
勝ちきれないバイエルン。レヴァンドフスキ依存から抜けきれず
ユリアン・ナーゲルスマン体制2年目となった今季、なぜこれほどまでに不安定なんでしょう?
言うまでもなく、ロベルト・レヴァンドフスキの移籍は影響しているでしょう。昨夏にこの絶対的なエースがバルセロナへ移籍し、代わりにサディオ・マネをリバプールから獲得したものの、このセネガル代表の本職はウィングです。ナーゲルスマン監督はツートップに変更して新たな形を見つけたと思われましたが、すぐに対策を練られて4-2-3-1に戻しました。
現在、センターFWには主にカメルーン代表のシュポ・モティングが起用され、一定の活躍を見せているものの、レヴァンドフスキに比べると物足りません。レヴァンドフスキは2列目に下がってボールを受けてパス回しに変化をつけるなど、ゲームメイカーとしての役割も担っていました。前線に「溜め」があるかないかは大違いですよね。
ただし、不安定な理由はそれだけではないでしょう。今のバイエルンは戦術的にも技術的にも洗練されたモダンなチームですが、それを過信してしまい、「泥臭さ」が欠けているように思います。失点場面を詳細に見ると、レロイ・ザネやセルジュ・ニャブリが全力で戻らなかったことで相手がフリーになったり、ヨショア・キミッヒが簡単に倒れたりして粘り強さがないのです。
ドイツ代表がカタールW杯で情けない姿をさらしたのも、これが原因だったと言っていいでしょう。ドイツは圧倒的に支配しながら追加点を奪えず、後半のラスト20分で集中が切れて日本に逆転負けを喫しました。ハンジ・フリック監督の「マッチプランを90分続ける一貫性がなかった」という敗戦の弁は、バイエルンにそのまま当てはまります。
オッズではバイエルン圧倒的優位も、安心できない状況
ウィリアムヒル社のブンデスリーガ優勝オッズを見ると
- バイエルン:1.07倍
- ライプツィヒ:19.00倍
- ドルトムント:19.00倍
- ウニオン・ベルリン:34.00倍
- フランクフルト:101.00倍
- フライブルク:101.00倍
となっており、例年通りバイエルンが圧倒的優勝候補として見られています。
しかしカタールW杯前に、多くのブックメーカーがスペインとドイツのグループステージ突破はほぼ間違いないというオッズをつけていたのです。今のバイエルンはドイツ代表と同じく、「番狂わせ」を起こされそうなニオイがぷんぷんしています。
バイエルンを追うドルトムント、ライプツィヒは後半戦絶好調
タイミングが良いことに、対抗馬となるドルトムントが今年に入ってから絶好調です。ウインターブレイク明けの第16節から第19節まで4連勝を飾りました。
最大の要因は、攻撃陣の充実です。精巣がんの治療で離脱していたセンターFWのセバスティアン・ハラーが復帰し、早速第19節のフライブルク戦でゴールを決めました。ドイツ代表のカリム・アデイェミはカタールW杯で出番がありませんでしたが、その悔しさがバネとなってウインターブレイク明けから2得点1アシスト。18歳でカタールW杯に出場したムココはベンチに追いやられ、ベルギー代表のトルガン・アザールが出番を求めてPSVへ移籍したほどです。
また、ベテランのエムレ・チャンをアンカーに置いたことで、守備の不安定さが改善されました。4月1日に予定されているアウェイのバイエルン戦で勝利できれば、2011-12シーズン以来の優勝も夢ではありません。
ライプツィヒも絶好調です。なんと今季のブンデスリーガにおいて第8節(10月1日)から第19節まで12試合負けなし(8勝4分)。その期間、チャンピオンズリーグでは第3節から4連勝してグループステージを突破し、ドイツ杯も2連勝。つまりライプツィヒは公式戦18試合負けなしなのです(14勝4分)。このペースをキープできれば、間違いなくバイエルンを上回ることができるでしょう。
昨年9月8日にライプツィヒの監督に就任したマルコ・ローゼは、2013年にレッドブル・ザルツブルクの下部組織で指導者になり、2017年から2シーズントップチームを率いた生粋の「レッドブル人材」です。ドルトムント時代は縦に早い攻撃が選手に馴染まない部分がありましたが、ライプツィヒでは「最短距離で相手にゴールに迫る」という戦術がどんぴしゃではまっています。
トップ4で終了オッズ/来季のUCL出場権を獲得するのは?
トップ4で終了オッズは、以下となります。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | ドルトムント | 1.18倍 |
2 | ライプツィヒ | 1.20倍 |
3 | ウニオン・ベルリン | 1.50倍 |
4 | フランクフルト | 2.10倍 |
5 | フライブルク | 4.00倍 |
6 | ヴォルフスブルク | 13.00倍 |
7 | レヴァークーゼン | 34.00倍 |
8 | ボルシアMG | 51.00倍 |
9 | ケルン | 101.00倍 |
ブレーメン | 101.00倍 | |
ホッフェンハイム | 101.00倍 | |
12 | マインツ | 151.00倍 |
13 | ヘルタ・ベルリン | 501.00倍 |
アウクスブルク | 501.00倍 | |
シュトゥットガルト | 501.00倍 | |
ボーフム | 501.00倍 | |
17 | シャルケ | 1001.00倍 |
※オッズは2023年2月9日時点のWilliamHill公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ 2022/23 – トップ4で終了)より
来季のチャンピオンズリーグ出場権が得られる「4位以内」(トップ4フィニッシュ)のオッズを見ると、ドルトムント1.18倍、ライプツィヒ1.20倍、ウニオン・ベルリン1.50倍、フランクフルト2.10倍、フライブルク4.00倍、ボルフスブルク13.00倍となっています。
確定と見られてオッズ対象になっていないバイエルンをはじめ、ドルトムント、ライプツィヒの4位以内はほぼ間違いなく、残り1席をウニオン・ベルリン、フランクフルト、フライブルクが争う構図になるでしょう。
フランクフルトがウニオンを抜くと予想
オッズ的にはウニオンがリードしていますが、個人的にはフランクフルトが滑り込んでくるのではないかと見ています。
そう予想する根拠は、5-4-1による守備ブロックの硬さと、フランス代表FWのコロ・ムアニの打開力です。昨季のヨーロッパリーグ優勝からもわかるように、ゴール前のスペースを埋める5-4-1の守備力はハンパではありません。そしてコロ・ムアニは追加招集で出場したカタールW杯でブレイクし、ウインターブレイク明けから4得点と大暴れしています。
得点王争いの筆頭はエンクンク
オッズ順 | 選手名 | 得点数 | オッズ |
1 | クリストファー・エンクンク(ライプツィヒ) | 12点 | 3.75倍 |
2 | 二クラス・フュルクルク(ブレーメン) | 13点 | 4.00倍 |
3 | マーカス・テュラム(ボルシアMG) | 10点 | 10.00倍 |
ジャマル・ムシアラ(バイエルン) | 10点 | 10.00倍 | |
5 | シュポ・モティング(バイエルン) | 7点 | 11.00倍 |
6 | セルジュ・ニャブリ(バイエルン) | 8点 | 13.00倍 |
7 | サディオ・マネ(バイエルン) | 6点 | 19.00倍 |
8 | ビンチェンツォ・グリフォ(フライブルク) | 9点 | 21.00倍 |
9 | ユスファ・ムココ(ドルトムント) | 6点 | 34.00倍 |
ティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ) | 5点 | 34.00倍 | |
ミヒャエル・グレゴリッチュ(フライブルク) | 7点 | 34.00倍 | |
レロイ・ザネ | 6点 | 34.00倍 |
第19節現在、得点ランキングは1位フュルクル13点、2位エンクンク12点、3位ムシアラ、テュラム10点、5位グリフォ、コロ・ムアニ9点となっており、好調ライプツィヒのエンクンクが得点王濃厚と見られています。
ウィリアムヒルの得点王オッズを見ると、なぜかコロ・ムアニの名前がありませんが、得点王になる可能性は十分にあります。
冬の補強で流れが変わる?まだまだわからない残留争い
ボトム2で終了(2部降格)オッズはこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | シャルケ | 1.25倍 |
2 | ヘルタ・ベルリン | 1.83倍 |
3 | ボーフム | 2.25倍 |
4 | シュトゥットガルト | 4.50倍 |
5 | アウクスブルク | 5.50倍 |
6 | ホッフェンハイム | 17.00倍 |
7 | マインツ | 34.00倍 |
ケルン | 34.00倍 | |
9 | ブレーメン | 67.00倍 |
ボルシアMG | 67.00倍 |
自動降格となる17位以下(ボトム2フィニッシュ)のオッズは、シャルケ1.25倍、ヘルタ・ベルリン1.83倍、ボーフム2.25倍、シュトゥットガルト4.50倍、アウクスブルク5.50倍、ホッフェンハイム17.00倍となっており、この6チームで16位以上を争うことになるでしょう。ちなみに16位はドイツ2部の3位と残留プレーオフに回ることになります。
残留争いの注目は吉田麻也所属のシャルケ。積極補強で浮上なるか
第19節時点でシャルケはまだ2勝しかしておらず、勝点11で最下位に沈んでいます。普通に考えたら絶望的な状況で、だから1.25倍という低いオッズをつけられているのでしょう。
しかし、ここでも波乱が起きるかもしれません。シャルケが冬の移籍市場で結構いい補強をしたからです。
センターバックに190cmのモリッツ・イェンツ、アンカーに元コロンビア代表のエデル・アルバレスを獲得。吉田麻也を加えた3人で守備が安定しました。イェンツと吉田が初めてセンターバックを組んだ第18節ケルン戦を無失点で乗り切り、アルバレスが加わった第19節ボルシアMG戦も無失点で終えました。得点できず0-0だったため勝点は1ずつしか得られませんでしたが、残留争いに向けて守備の安定は大きなプラス要因です。
この冬にシャルケのセカンドチームからトップチームに昇格した上月壮一郎が、デビュー2試合目のライプツィヒ戦でゴールを決め、攻撃のカンフル剤になっていることにも希望を持てます。
補強が当たらずホッフェンハイムも降格候補に
一方、「サプライズ降格」してもおかしくないのが、冬の大型補強がうまくいっていないホッフェンハイムです。冬にアメリカ代表のアンソニー・ブルックス、デンマーク代表のカスパー・ドルベリとトーマス・デラネイを補強しましたが、第19節のボーフム戦で2−5で惨敗。リーグ戦9試合未勝利となって、ブライテンライター監督は解任されました。
18位シャルケと14位ホッフェンハイムの勝点差は8ありますが、4月8日に直接対決が残っています。残留争いの天王山になるのではないでしょうか。
カタールW杯で見た予想外の展開が楽しみな後半戦
カタールW杯は「波乱」の祭典となりました。グループステージでサウジアラビアがアルゼンチンに勝利し、日本がドイツとスペインに勝って首位通過するとは誰が想像できたでしょう。決勝トーナメントではモロッコがスペインとポルトガルを立て続けに退けました。
カタールW杯はシーズン中に開催されたため、フィジカル面だけでなくメンタル面に大きな影響を及ぼしています。ブンデスリーガでもきっと予想しなかった何かが起こるはずです。