2022-23シーズンのドイツ・ブンデスリーガは、1ヶ月を残すだけとなり、終盤戦に突入しています。開幕前は10連覇中のバイエルン・ミュンヘンが圧倒的な強さを見せるのではないかと思われていましたが、シーズン途中に監督交代があり、首位をドルトムントに明け渡すこともありました。
緊迫感が高まるシーズン終盤の戦いについて、ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、スポーツライターの木崎伸也さんに展望してもらいました。
海外ブックメーカー発表/ドイツ・ブンデスリーガ優勝オッズ
ウィリアムヒル社から発表されている4月30日時点のブンデスリーガ優勝オッズがこちらです。
チーム名 | オッズ(開幕時) |
バイエルン・ミュンヘン | 1.57倍(1.20倍) |
ドルトムント | 2.25倍(9.00倍) |
ウニオン・ベルリン | 501.00倍(501.00倍) |
ドルトムント | 1001.00倍(9.00倍) |
※オッズは2023年4月25日時点のWilliamHill公式サイトから引用。現在の優勝オッズも公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ – 優勝 2022/23)にて閲覧できます。
ブンデスリーガの優勝予想は、ヨーロッパのトップリーグの中で最も簡単だと言われてきました。実質的にバイエルン・ミュンヘンの一強状態で、昨季まで10連覇しているからです。今季もそれは変わらないと思われていました。
ところが今、ブンデスリーガに「異変」が起きています。
ドルトムントがバイエルン・ミュンヘンに急接近
バイエルンが監督をユリアン・ナーゲルスマンからトーマス・トゥヘルに交代したにもかかわらず、チームの調子が上がっていません。トゥヘル体制で公式戦7試合を戦って、わずか2勝。第29節にマインツに逆転負けして2位に転落し、ドルトムントが首位に立ったのです。
これを受けて優勝オッズも大きく動きました。
第29節直前の優勝オッズは、バイエルン1.14倍、ドルトムント6.00倍だったのですが、第29節の結果を受けてバイエルン1.57倍、ドルトムント2.25倍と両者のオッズが急接近。
首位ドルトムントより、2位バイエルンの方が依然としてオッズが低いのは不思議な感じもしますが、バイエルンの「実績」はやはり馬鹿にできないからでしょう。勝点差もわずか1しかありません。ラスト5試合、毎節順位が入れ替わってもおかしくありません。
規律に問題のバイエルン
なぜバイエルンが不調で、ドルトムントが好調なのか?
レヴァンドフスキ移籍によるエース不在、負傷したノイアーの代わりに獲得したGKゾマーのミス連発などさまざまな要因が絡んでいますが、ドルトムントのサポーターがスポーツビルト誌に投稿したコメントが最も本質を捉えているのではないでしょうか。
今季、バイエルンは規律面の問題がたびたび起こってきました。
たとえば1月下旬、金曜にライプツィヒ戦、火曜日にケルン戦があるという過密日程にも関わらず、セルジュ・ニャブリがパリコレクションに参加して批判にさらされました。
遅刻の常習犯となったのがレロイ・ザネです。3-2で敗れたグラッドバッハ戦では、アウェイに向かうパスの出発時刻に遅れてしまいました。ナーゲルスマンは特に罰則を設けておらず、プロ意識に任せたマネジメントが裏目に出たのです。
今年2月に罰則が設けられてロッカールームに張り出されましたが、時すでに遅し。一度緩んだ規律を引き締めることはできず、3月24日にナーゲルスマンは解任されてしまいました。
トゥヘル新監督になっても、問題が続きます。マンチェスター・Cとのファーストレグの試合中に、ザネが出したパスがサディオ・マネに合わなかったことで2人が口論になり、試合後のロッカールームでマネがザネの顔を殴ってしまい、マネには約4200万円の罰金が課されました。
今季のバイエルンは、エゴイストの集団になってしまったのです。
一体感のドルトムントはマレンの爆発が勢いに
一方ドルトムントも順風満帆だったわけではありません。
19歳のジュード・ベリンガムや18歳のユスファ・ムココなど若手が多いこともあり、勝利への執念が足りない部分がありました。
第28節にはバイエルンがホッフェンハイムと引き分けて首位に立つチャンスだったのですが、ドルトムントもシュツットガルトと引き分けてしまいます。追いつかれたのが97分だっただけに悔いが残る展開でした。
ただし、この失態が飛躍のターニングポイントになります。
シュツットガルト戦の翌週、ドルトムントのハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOが練習場のロッカールームに姿を現し、選手たちにこう訴えました。
選手たちは奮起し、練習の強度がアップ。第29節にフランクフルトに4-0で快勝して首位に立ちました。
また、オランダ代表のドニエル・マレンの爆発がチームに勢いを与えています。カタールW杯まで得点がなく、オランダ代表からも落選してしまったのですが、第24節のシャルケ戦で右ウイングに起用されたことで流れが変わります。スピードを生かして縦に突破できるようになり、そこから6得点3アシスト。ラッキーボーイになっています。
気になる両者の残り試合。最後までもつれた末にドルトムントが優勝と予想
両チームの残りの対戦カードは以下の通り。
バイエルンの残り日程
- 4/30 第30節ヘルタ・ベルリン(H)※ ○2-0
- 5/7 第31節ブレーメン(A)
- 5/13 第32節シャルケ(H)
- 5/21 第33節ライプツィヒ(H)
- 5/27 第34節ケルン(A)
※試合日程は日本時間。ヘルタ戦は記事執筆後に試合が行われ、バイエルンが2-0で勝利。
ドルトムント残り日程
- 4/30 第30節ボーフム(A)(H)※ △1-1
- 5/8 第31節ヴォルフスブルク(H)
- 5/14 第32節ボルシアMG(H)
- 5/22 第33節アウクスブルク(A)
- 5/27 第34節マインツ(H)
※試合日程は日本時間。ボーフム戦は記事執筆後に試合が行われ、1-1のドロー。
バイエルンにとっては第33節のライプツィヒ戦、ドルトムントにとっては第32節のボルシアMG戦が大一番になるでしょう。いずれにせよ優勝争いは最終節までもつれ込むはずです。
個人的な予想を書けば、自覚が芽生えたドルトムントが残り5試合を全勝して優勝すると見ています。今のドルトムントには特別な一体感があります。
トップ4で終了オッズ/来季のUCL出場権を獲得するのは?
トップ4で終了オッズは、以下となります。
チーム名 | オッズ |
ウニオン・ベルリン | 1.25倍 |
ライプツィヒ | 1.36倍 |
フライブルク | 1.73倍 |
レヴァークーゼン | 27.00倍 |
※オッズは2023年4月30日時点のWilliamHill公式サイトより引用。現在のオッズは公式サイト(ドイツ・ブンデスリーガ 2022/23 – トップ4で終了)にて閲覧できます。
UCL出場権を得られるトップ4争いも熾烈になっています。第29節時点の順位は、
- 3位 ウニオン・ベルリン(勝点55)
- 4位 フライブルク(同53)
- 5位 ライプツィヒ(同51)
となっており、勝点4差の中に3チームがひしめきあっています。6位レヴァークーゼン(同47)にもまだチャンスがあるでしょう。
興味深いのは直接対決が多く残っていることです。
第30節にウニオン・ベルリン対レヴァークーゼン、第31節にフライブルク対ライプツィヒ、第32節にウニオン・ベルリン対フライブルクがあります。
フライブルクは自力で3位になるチャンスがある一方で、直接対決の結果によっては5位転落の可能性もあります。フライブルクの残りカードは
- 第30節 ケルン(A)
- 第31節 ライプツィヒ(H)
- 第32節 ウニオン・ベルリン(A)
- 第33節 ヴォルフスブルク(H)
- 第34節 フランクフルト(A)
となっており、ラスト2試合も難敵です。
ウニオン・ベルリンとライプツィヒと比べると残りカード的にやや不利で、トップ4フィニッシュのオッズを見ると、ウニオン・ベルリン1.25倍、ライプツィヒ1.36倍、フライブルク1.73倍、レヴァークーゼン27.00倍となっています。
トップ4争いの注目はレヴァークーゼン
個人的に注目しているのは、シャビ・アロンソ監督率いるレヴァークーゼンです。
4位と勝点差が6も離れていますが、現在ブンデスリーガの中で調子を上げているチームのひとつだからです。ブンデスリーガでは現在8試合負けがなく(6勝2分け)、UELでも準決勝に進出しました。
アロンソ就任当初は結果が出ずに苦しみましたが、守備を整えたことで選手のスピードを生かしたカウンターを仕掛けられるようになりました。5月中旬に予定されているローマとのUEFAヨーロッパリーグ準決勝によって過密日程になりますが、トップ4争いをおもしろくしてくれそうです。
まだまだわからない残留争い。日本人選手たちは残れるか?
チーム名 | オッズ |
シャルケ | 1.44倍 |
ヘルタ・ベルリン | 1.53倍 |
シュトゥットガルト | 2.50倍 |
ボーフム | 3.25倍 |
アウクスブルク | 9.00倍 |
ホッフェンハイム | 12.00倍 |
※オッズは2023年4月20日時点のWilliamHill公式サイトより引用。
残留争いに目を向けると、こちらも勝点差が詰まっています。(17位以下は自動降格、16位はドイツ2部3位とのプレーオフ)
下から挙げると、以下のようになっています。
- 18位 ヘルタ・ベルリン(勝点22)
- 17位 シャルケ(同24)
- 16位 シュトゥットガルト(同25)
- 15位 ボーフム(同27)
- 14位 ホッフェンハイム(同29)
- 13位 アウクスブルク(同30)
どのチームも自動降格となる17位以下は何がなんでも避けたいところ。
ボトム2フィニッシュのオッズは、
- ヘルタ・ベルリン1.17倍
- シャルケ1.40倍
- シュトゥットガルト2.62倍
- ボーフム2.75倍
- ホッフェンハイム15.00倍
- アウクスブルク17.00倍
となっており、ペルグリノ・マタラッツォ新監督のもとで立て直したホッフェンハイムとアウクスブルクは自動降格の危険はなくなったと言っていいでしょう。
オッズ的にヘルタ・ベルリンとシャルケが厳しいのは、ここ最近、大量失点しているからだと思われます。
ヘルタは第28節にシャルケに2-5で敗れてサンドロ・シュバルツ監督の解任に踏み切ってパル・ダルダイ新監督を迎えましたが、第29節のブレーメン戦は2-4で完敗。シャルケは吉田麻也の負傷離脱の穴を埋められず、第29節にフライブルクに0-4で惨敗しました。
この2チームが自動降格し、遠藤航ら日本人選手3人が所属するシュトゥットガルトと浅野拓磨所属のボーフムは16位以上でフィニッシュするのではないでしょうか。
得点王争いはフェルクルクで決まり?コロムアニに固め取りの期待も
選手名 | 得点数 | オッズ |
二クラス・フュルクルク(ブレーメン) | 16点 | 1.44倍 |
クリストファー・エンクンク(ライプツィヒ) | 13点 | 8.00倍 |
ランダル・コロムアニ(フランクフルト) | 13点 | 9.00倍 |
マーカス・テュラム(ボルシアMG) | 13点 | 10.00倍 |
ビンチェンツォ・グリフォ(フライブルク) | 13点 | 10.00倍 |
ジャマル・ムシアラ(バイエルン) | 11点 | 26.00倍 |
シュポ・モティング(バイエルン) | 10点 | 29.00倍 |
セルジュ・ニャブリ(バイエルン) | 10点 | 67.00倍 |
得点王争いはニクラス・フュルクルク(ブレーメン)が16得点でトップに立ち、13得点でランダル・コロムアニ(フランクフルト)、マルクス・テュラム(ボルシアMG)、ビンチェンツォ・グリフォ(フライブルク)が続いています。
オッズ的にはフュルクルクが1.44倍と頭ひとつ抜け出しているのですが、9.00倍のコロムアニも固め打ちができるタイプです。
コロムアニは第17節からの3試合で4得点を決めた実績があります。一方、フュルクルクは第28節を負傷欠場し、第29節にベンチ入りしたものの出番なしでした。カタールW杯でもプレーしたこのフランス代表にもまだまだチャンスがあるでしょう。
今季のブンデスリーガは荒れており、優勝争いだけでなく、他の争いでも予想を覆す波乱が起きるのではないでしょうか。