2023-24シーズンのイングランド・プレミアリーグは、第28節(一部は第29節)までを消化しています。今後の戦いと優勝争いについて、ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、サッカーライターで「プレミアパブ」代表の内藤秀明氏に展望してもらいました。
海外ブックメーカー発表/イングランド・プレミアリーグ優勝オッズ
ウィリアムヒル社から発表されている3月24日時点のプレミアリーグ優勝オッズがこちらです。
順 | チーム名(勝点) | オッズ |
---|---|---|
1 | マンチェスター・C (63) | 2.10倍 |
2 | リヴァプール (64) | 3.00倍 |
3 | アーセナル (64) | 3.75倍 |
4 | トッテナム (53) | 201.00倍 |
5 | アストン・ヴィラ (56) | 301.00倍 |
6 | マンチェスター・U (47) | 1001.00倍 |
※オッズは2024年3月24日時点のWilliamHill公式サイトから引用。現在の優勝オッズも公式サイト(プレミアリーグ 2022/23 – 優勝)にて閲覧できます。
プレミアリーグは勝ち点1差で3チームの大混戦で終盤戦 シティのオッズは「買い」
23-24シーズンのプレミアリーグは、いまだかつてないデッドヒートとなっています。
第28節が終了した時点で、首位は勝ち点64でアーセナル、2位は同じく64でリヴァプール、3位は63でマンチェスター・シティという状況です。
順位 | チーム名 | 勝点/差 |
---|---|---|
1 | アーセナル | 64/+46 |
2 | リヴァプール | 64/+39 |
3 | マンチェスター・C | 63/+35 |
勝ち点差1ポイント差で3チームもひしめく展開はかなり久しぶりです。はっきり言って優勝予想をするのはかなり難しい状態ではありますが、優勝オッズを鑑みて、うまみがある買い目であれば、即答で答えられます。
今は、マンチェスター・シティが「買い」です。
シティは終盤戦に強い
第一に、マンチェスター・シティという、近年で圧倒的に優勝実績のあるチームの優勝オッズが2.10倍というのは、かなりいいオッズです。例年の今頃ならいつも1.00倍台であることを考えると、まずこの時点で注目に値します。
加えてシティというクラブは例年、終盤戦に強いことで有名です。例えば22-23シーズンだとラスト10試合で8勝1分1敗で勝ち点25獲得という圧倒的な結果を残しています。なお最終節は負けましたが、もう優勝は戦前の時点で決まっていました。リヴァプールとの最終的な勝ち点差がわずか1ポイントだった21-22シーズンは7勝3分で24ポイント獲得で無敗です。
一方で取りこぼしの多いシーズンもあります。20-21シーズンは7勝3敗で21ポイント、やや負け数は多いですが2位のマンチェスター・ユナイテッドとは勝ち点12も離しており、余裕のフィニッシュでした。19-20シーズンは7勝3敗で21ポイントでしたが、リヴァプールに勝ち点18も離されて優勝を譲って、元々厳しい状況でした。
なおリヴァプールと勝ち点1差で優勝した18-19シーズンは、10戦全勝で30ポイント獲得しています。厳密には2月頭の試合から14連勝という圧倒的な結果を残していました。
こう振り返ると、終盤戦でギリギリの戦いを強いられた時のシティは、圧倒的に強さを発揮してきています。
リヴァプールの勝ち点が伸びにくそうな理由
もちろんリヴァプールも昨季は絶不調にも関わらず、終盤戦に6連勝を記録するなど、終盤戦で強さを見せました。ただし昨季と今季とでは事情が違います。
そもそも21-22シーズンのリヴァプールは、プレミアリーグで優勝争いをし、FAカップ、カラバオカップ、チャンピオンズリーグの3大会全てで決勝に進出するなど、試合数が異常に多くハードなシーズンでした。
その結果、22-23シーズンにその過密日程のツケが爆発して、前半戦に異様な不調に陥った背景があります。そうして低調なシーズンを過ごした後にようやく、後半戦、コンディションが戻っていったのです。
逆に今季に関しては、序盤戦はある程度スカッドが揃っていたものの、1人、2人と、徐々にシーズンアウト級の怪我を重ねて、今では11人もの怪我人を抱えています。これはルートンタウンに次ぐ2番目に多い怪我人数です。なおアリソン、ディエゴ・ジョタ、アレクサンダー=アーノルドなどの主力は4月中旬に復帰するとされていますが、彼らの復帰が少しでもズレれば命取りでしょう。
いずれにしても最も怪我人が多いボロボロな状態であることは否めず、いくらユルゲン・クロップ監督のラストイヤーで「バフ」がかかっている状態とはいえ、チーム状態を考えると、取りこぼしを減らすことは難しそうに見えます。
アーセナルの勝ち点が伸びにくい理由
一方、アーセナルはシティと同様に怪我人は非常に少ないです。何人か怪我人はいるものの、いずれも軽傷で3月末には復帰すると言われています。計算しにくいのは長期離脱明けのユリアン・ティンバーと、負傷癖がついている上に現在ラマダンでコンディションを落とす可能性が高いトーマス・パーティーくらいでしょうか。
むしろドバイキャンプから帰ってきた後のアーセナルは絶好調で、現在8連勝中という状況です。しかも8試合で33得点と得点力が爆発しており、「本格派のストライカー不在が問題」という外野からの指摘を黙らせる結果を残しています。
ただアーセナルの懸念は日程です。残り10試合でBIG6とのアウェイゲームを多く残しているのです。というのもリヴァプールは、ユナイテッド(A)、トッテナム(H)のみで、シティは、アーセナル(H)、トッテナム(H)のみという状況。逆にアーセナルは、
- チェルシー(H)
- シティ(A)
- トッテナム(A)
- ユナイテッド(A)
など4チームとの対戦を残しているのです。しかもアウェイが3試合もあります。
今のアーセナルならアウェイでも強豪をなぎ倒せるパワーもありますが、3試合もあるとなると、なかなか難しくなってくるのではないでしょうか。
まとめ
ちなみに現在のシティの怪我人はエデルソンと、ケヴィン・デ・ブライネのみで、しかも彼らは3月末には帰ってくると言われています。ほぼ万全の戦力です。加えて他チームに比べて日程的にも楽であることを考えると、順当に考えればシティ優位なのは間違いありません。
最初の話に戻りますが、こんなにシティ優位の状況にも関わらず、優勝オッズが2.10倍というのはかなりアツい状況なのではないでしょうか。長らく優勝オッズを定点観測している者からすると、やはり今のシティは「買い」ですね。