フランクフルトとレンジャーズが決勝に進出を果たしたUEFAヨーロッパリーグの決勝が迫ってきました。決勝戦は日本時間5月19(木)午前4時キックオフです。
海外ブックメーカー発表のオッズでは、準決勝で優位とされていたウェストハム、ライプツィヒをそれぞれ撃破してファイナルに駒を進めたフランクフルトとレンジャーズの対戦は、どんな試合、どんな結果となるのでしょうか。
サッカーコメンテーターでお馴染み、西岡明彦氏に展望してもらいました。
取材・編集:永田淳(ブクサカ編集部)
海外ブックメーカー発表/UEFAヨーロッパリーグ決勝の優勝オッズ
WilliamHill(ウィリアムヒル)社発表のヨーロッパリーグ優勝オッズ、90分勝敗オッズがこちら。
90分勝敗オッズ | 優勝オッズ | |
フランクフルト | 2.30倍 | 1.67倍 |
引き分け | 3.30倍 | – |
レンジャーズ | 3.10倍 | 2.20倍 |
今回、オッズではフランクフルト優位となっていますが、私はレンジャーズ勝利と予想します。前回オッズ通りの予想で外したからというわけではありませんが(笑)
前述の通り、レンジャーズがフランクフルトをどう分析するかを楽しみにしています。レンジャーズがランドストロームをどの位置に置くか。
試合中の変更もできると思うので、レンジャーズが先制して5バックにして構えるようになれば、フランクフルトは手詰まり感が出るのではないかと思います。
そういう対応力の差でレンジャーズのゲームになる可能性も十分あると思っています。フランクフルトとしては、レンジャーズが前に出てきた時に我慢して、耐えながらカウンターを狙うことになると思うので、まずはレンジャーズの入り方が試合のポイントになると言えるでしょう。
鎌田大地のフランクフルト優位も、分析力と対応力で上回るレンジャーズが頂点に立つと予想
UEFAチャンピオンズリーグもそうですが、今季はホーム・アンド・アウェイの第2戦をホームで戦うチームがファンの後押しを受けて勝利につなげることが多いですね。
ファンがこういったビッグマッチに飢えていたということもあるかもしれません。これまでコロナの影響で観客制限が続いてきましたが、3月頃から順次制限がなくなり、マスクもなしになって、そのパワーは大きかったと思います。
ライプツィヒの決勝支出は堅いかと思っていましたが、押されながらも我慢の戦いで勝ち抜けたレンジャーズはすごいと思います。
フランクフルトのこれまでの勝ち上がり | ||
ラウンド16 | ベティス | ○ 2戦合計 3-2 |
準々決勝 | バルセロナ | ○ 2戦合計 4−3 |
準決勝 | ウェストハム | ○ 2戦合計 3-1 |
レンジャーズのこれまでの勝ち上がり | ||
プレーオフ | ドルトムント | ○2戦合計 6−4 |
ラウンド16 | レッドスター | ○2戦合計 4-2 |
準々決勝 | スポルティング・ブラガ | ○2戦合計 3-2 |
準決勝 | ライプツィヒ | ○2戦合計 3-2 |
フランクフルトもレンジャーズも、欧州タイトル争いの常連というわけではないので、この試合に向けてのモチベーションは高いと思います。
このタイトルを獲れば来季のチャンピオンズリーグ出場権も得られます。
フランクフルトは国内リーグで欧州カップ戦圏内は難しい状況で、レンジャーズも競っていた優勝争いでセルティックに負けてしまっているので、この一戦に全力を注ぐことになるはずです。
決勝は中立地での開催(セビージャ)で、チケットは均等配分と言われていますが、実際はどうなるか。4万人収容のスタジアムで、それぞれへの割り当て以外のチケットをどれだけ確保するかによって、雰囲気も変わりそうです。
どちらもファンの後押しがあるとは思いますが、チケット争奪戦も注目ではありますね。
ブンデスリーガで8試合未勝利のフランクフルトはコスティッチを活かす形がつくれるか
フランクフルトはこの試合に向けてやり方を変えるということはありません。
3-4-2-1のシステムで、トップにサントス・ボレがいて、トップ下の一角に鎌田大地が入ります。フランクフルトは相手が出てきてくれるとうまく攻撃しますが、自分たちから崩すというのがなかなかできておらず、ブンデスリーガでも結果を出せていない状況です。
3月にボーフムに勝って以来、5分け3敗と8試合勝ちがありません。それでも11位というのは前半戦の貯金があったからではありますが。
フランクフルトのポイントとなるのは、左サイドのコスティッチです。
コスティッチからの展開、左足のキックが大きなカギを握っていて、そこを消されてしまうと攻撃力が大きく下がります。本来はコスティッチに仕事をさせるためにどう守備をするか、どう使うかを考えているはずです。
いかに早く奪って素早く左から攻めるか。
ただ、そこの研究に関してはレンジャーズの方に分があるというか、相手の対策をして戦うことに関してはレンジャーズがうまいと思っています。
オーストリア代表DFマルティン・ヒンテレッガーが右足太ももを負傷して出られないのは、フランクフルトにとって痛いと思います。3バックの中央をやったり左ストッパーを務めてきた選手で、彼がいるから長谷部が出場機会を得られないというプレーヤーです。
それほどスピードはないけど空中戦の強さがあります。その選手が不在となるのは難しいところだと思います。
代役としてはトゥレが出てくると思うので、長谷部が出場する可能性は高くないと思います。長谷部は自分たちが主導権を握れる試合に必要とされると思いますが、一発勝負でまず守備をと考えるとフィジカルの強さも求められ、トゥレになるのではないでしょうか。
ELと国内リーグで戦い方を使い分けるレンジャーズ。フランクフルト対策も要注目
一方のレンジャーズは、スコティッシュ・プレミアリーグでの4バックでの戦いからやり方を変えて、ライプツィヒ対策をしたのがハマっていました。
レンジャーズは国内リーグでは自分たちが優位な戦いが多いですが、ヨーロッパリーグでは相手をリスペクトした戦いが多く、ライプツィヒ戦では相手に合わせた戦い方をしました。
本来中盤の選手であるランドストロームを後ろに下げたりして、5バック気味で手堅い対応を見せました。特にライプツィヒのエンクンクをどう止めるかの対策はしていたように見えました。
そういった部分でのファン・ブロンクホルスト監督の手腕は決勝でもカギを握るのではないかと思います。フランクフルトに似た5-4-1のような形で臨むのか、自分たちがボールを握れると考えて、慣れた4バックを選ぶのか。
やり方が決まっているフランクフルトに対して、いろいろな引き出しを持っているのがレンジャーズなので、まずはキックオフ時の配置がどうなるのかは興味深いですね。
レンジャーズは5月頭のセルティック戦でドローの後、国内リーグでは直前のハーツ戦でも3-1で勝利して3連勝しています。国内で4バック、このELで5バック気味の3バックと戦い方は違いますが、3バックでの守りながらの戦いでもうまくやっています。
レンジャーズでは、中盤から前線に絡んでいくフィンランドMFグレン・カマラが注目です。フィジカルもあって、準決勝2戦目の2点目も決めています。
どちらのシステムで戦っても、攻守にわたって働ける選手なので、ポイントになるのではないかと思います。後ろが重くなると予想されるので、カバーエリアは広くなりますし、彼がボールを持っている間に両サイドがどれだけ出ていけるかのカギともなる選手です。
西岡明彦のヨーロッパリーグ決勝予想
ブンデスリーガとスコティッシュ・プレミアリーグという所属リーグの差もオッズに反映されているのかと思いますが、ここでも私の予想はレンジャーズ勝利です。
繰り返しになりますが、相手への対応力や分析力がレンジャーズ優位と考える理由です。
フランクフルトは優勝した1979-80シーズンのUEFAカップ以来42年ぶりの欧州大会ファイナル進出で、レンジャーズも2008年以来の欧州大会ファイナル進出となり、どちらのクラブ、ファンにとっても力の入ったゲームになるでしょう。
準決勝進出が決まった時点でセビージャ行きのチケットを取ったというサポーターもいるという話も聞いていますから、熱い戦いに期待したいと思います。
フランクフルトの主力として決勝のピッチに立つ鎌田。勝てば20年ぶりの日本人欧州タイトル獲得
フランクフルトには鎌田、長谷部の2人がいますが、鎌田はチームの中で欠かせない選手になっていて、2列目の選手ではすごく目立つ存在です。
以前はパスにこだわっていたのかもしれませんが、シンプルに捌いて前に出て得点にも絡んでいて、ゴールへの貪欲さも見せているので、この一戦でも楽しみな存在です。
彼はフランクフルトからステップアップしたいと考えている選手でもあると思うので、ここで勝ってチャンピオンズリーグ出場権を獲得した場合、来シーズンをどう考えるのかも気になるところです。
常時試合に出られるフランクフルトに残ってカタールW杯を迎えるのか、W杯イヤーにポジション争いが待っている環境に移籍するチャレンジを選ぶのか。
この大一番で勝てば結果を残した監督が切られることはないでしょうし、鎌田の活躍度を考慮すれば、補強をするとしても他のポジションを優先に考えると思うので、彼にとって良い環境が続くと思います。
その意味でも、チャンピオンズリーグ出場権も懸かっている注目の一戦は、鎌田と日本代表の今後にも影響するゲームと言えるのではないでしょうか。