2022-23シーズンのフランス・リーグアンは日本時間8月6日に開幕し、2節を消化しました。
今夏に来日し、日本に興奮を与えたPSGは開幕からその力を見せつけていますが、そこに不安要素はないのか、対抗するクラブはどこになるのか。優勝オッズを参考に、河治良幸氏にシーズン展望をお願いしました。
海外ブックメーカー発表/リーグアン優勝オッズ
イギリス大手ブックメーカー、ウィリアムヒル社から発表されているリーグアンの優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ(昨季順位) |
1 | PSG | 1.12倍(優勝) |
2 | モナコ | 15.00倍(3位) |
リヨン | 15.00倍(8位) | |
マルセイユ | 15.00倍(2位) | |
5 | レンヌ | 34.00倍(4位) |
6 | ニース | 41.00倍(5位) |
7 | リール | 51.00倍(10位) |
8 | ストラスブール | 126.00倍(6位) |
9 | RCランス | 151.00倍(7位) |
10 | モンペリエ | 251.00倍(13位) |
11 | ナント | 401.00倍(9位) |
12 | ブレスト | 751.00倍(11位) |
アンジェ | 751.00倍(14位) | |
スタッド・ランス | 751.00倍(12位) | |
15 | トロワ | 1001.00倍(15位) |
ロリアン | 1001.00倍(16位) | |
クレルモン | 1001.00倍(17位) | |
トゥールーズ | 1001.00倍(2部1位) | |
アジャクシオ | 1001.00倍(2部2位) | |
オセール | 1001.00倍(2部3位PO) |
※オッズは2022年7月20日時点のWilliamHill公式サイト(リーグ・アン 2022/23 – 優勝)から引用
日本代表の南野拓実がモナコ、伊東純也がスタッド・ランスに移籍し、オナイウ阿道を擁するトゥールーズが2部から昇格。
また王者のPSGが来日ツアーでJリーグの3クラブと対戦するなど、リーグアンは日本のファンからも注目が集まっています。
大本命は優勝オッズ1.12倍のPSG
いわゆる”欧州5大リーグ”で最も優勝を予想しやすいのがリーグアンではないでしょうか。
それはオッズを見れば明らかで、なんとPSGが1.12倍。2番人気がモナコ、リヨン、マルセイユと並びますが、ともに15.00倍となっているのだから、いかに”1強状態”と見られているかが分かるでしょう。
2021-22シーズンのPSGは、26勝8分4敗で勝点86でした。2位のマルセイユに15ポイントの差をつけています。また
- リオネル・メッシ(アルゼンチン代表)
- ネイマール(ブラジル代表)
- キリアン・エムバペ(フランス代表)
と3人のスーパースターを擁し、守備的なポジションもブラジル代表の主力センターバックであるマルキーニョスなど、非常にハイレベルです。
実際、リーグアンは過去10シーズンでPSGが8回優勝しています。残る2回は2016-17シーズンにモナコが、2020-21シーズンにリールが優勝しています。ただ、ほんの2シーズン前にPSGが優勝を逃している事実を考えても、現在のチームにも全く隙が見当たらない訳ではありません。
PSGの強みでもあり危険要素でもあるのがスーパースター3人の前線
開幕2試合で5-0、5-2と順調な滑り出しを見せてはいますが、3人が揃い踏みした第2節のモンペリエ戦ではPKのキッカーを巡ってネイマールとエムバペが口論になったという現地報道もありました。
3人とも良くも悪くもプライドがあります。クリストフ・ガルティエ監督には戦術以上にマネージメントで難しい判断が問われるでしょう。
最初は3人ともにフレッシュなので、それこそ3人がほぼフル出場しても問題はないでしょうが、多少調子が悪くなったり、UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)などカップ戦が挟まってくる中で、疲労を考慮しても簡単に外しにくいところはあるでしょう。
また3人の他にもスペイン代表MFパブロ・サラビアのように、他クラブであれば十分に主役を張れる攻撃的なタレントや190cmの新鋭FWウーゴ・エキティケのような有望なタレントも抱えています。
特に前半戦はカタールW杯も控えている中で、個人としてもより良いコンディションをつくっていきたい。それは多くの代表選手を抱えるビッグクラブならどこにもある問題ですが、特にPSGは大きく、個人の主張とチームの一体感をどうバランスよく維持していくかが鍵になるでしょう。
モナコ、リヨン、マルセイユが並ぶセカンドグループ
PSGの独走に待ったをかけることが期待される2番手グループですが、上記の通りモナコ、リヨン、マルセイユが15.00倍で並んでいます。
3チームともに強みはありますが、新戦力に関しては手探り状態にあり、ここからどうフィットしていくかで前半戦の成績に差が出てくるでしょう。その段階で中下位との試合をいくつかとりこぼすことがあると、高勝率が予想されるパリを追いかけることは難しくなってきます。
模索中のモナコ。南野にとっては大きなチャンス
日本代表MF南野拓実が加入した昨シーズン3位のモナコは、UCL三次予選でオランダのPSVに2試合合計スコア4-3で敗れるという残念なニュースがありました。
第2節のレンヌ戦は前半15分にMFユスフ・フォファナが退場するアクシデントがあった中で、何とか引き分けに持ち込みましたが、基本システムも定まりきっていない様子です。
もちろん対戦相手によって柔軟に戦うことも重要ですが、その前に自分たちの戦い方をどう定めていくのか。フィリップ・クレメント監督がここからどうチーム設計していくのか。南野の起用法とともに気になるところです。
ストラスブールとの開幕戦では4-1-4-1の場合、大型FWブレール・エンボロが1トップに入り、続くレンヌ戦は2トップをエンボロと10番を背負うFWウィサム・ベン・イェデルが組む形でした。さらに昨シーズン16得点をあげたドイツ人FWケビン・フォラントもいる中で、南野としては明確にアピールしていく必要があるでしょう。
総合的なタレント力はやはりPSGに劣りますが、組織としてのバランスが取れていけば、おもしろいチームになっていく可能性があります。UCLという大きな目標をいきなり失ってしまいましたが、リーグ戦での躍進を目指していけるプラス面もあります。
ピーター・ボス率いるリヨンの魅力は攻撃力、カギ握るのはパケタの残留
リヨンは昨シーズン8位という屈辱的な結果に終わりましたが、日本にもゆかりのあるオランダ人のピーター・ボス監督のもとでハイプレスをベースとした攻撃的なスタイルが確立されてきており、ポテンシャル的には打倒パリの一番手かもしれません。
欧州カップ戦の負担がないことも考えると、12.00倍ぐらいでも良いと筆者は評価しています。
4-3-3が基本システムになっていきそうなチームのバランスは非常に良く、
- ブラジル代表MFルーカス・パケタ
- 5年ぶりに古巣復帰のMFコランタン・トリッソ
- エースのFWアレクサンドル・ラカゼット
と主軸が固まっており、カメルーン代表カール・トコ・エカンビも身体能力と攻撃センスでフィニッシュに関わってきます。PSGのような爆発力はなくても安定して勝ち点を伸ばしていく期待は高いです。
注目選手は左サイドバックのアルゼンチン代表DFニコラス・タグリアフィコで、ピーター・ボス監督はいきなり開幕戦にスタメンで起用しています。
その開幕戦で早い時間帯にGKのアントニー・ロペスが退場する苦しい試合展開ながら、何とかアジャクシオに2-1と競り勝ちましたしかし、アウェイの第2節ロリアン戦が猛暑によるフィールド状態の悪化で中止になってしまいました。
また、ルーカス・パケタにはプレミアリーグ のクラブなどからオファーが来ていることをクラブ関係者が認める報道もあります。
チームのポテンシャルは非常に高いですが、主軸を担う選手がはっきりしている中で、仮にルーカス・パケタが移籍となれば多額の移籍金と引き換えに、チームとしてパワーダウンしてしまうのは確実。その動向によって、今後のオッズ変動があるかもしれません。
昨季2位の名門マルセイユの注目ポイントは守備陣の攻撃への関わり
昨シーズン2位のマルセイユはポーランド代表FWアルカディウシュ・ミリクなど、魅力的なアタッカーを揃えています。チームを新たに率いるのはクロアチア人のイゴール・トゥドール監督。
現役時代に大型のユーティリティー・プレーヤーとしてユベントスなどで活躍した気鋭の44歳で、30歳で現役引退してから母国の名門クラブやセリエAで実績を積み上げてきました。特にヴェローナで攻撃的なサッカーを展開したことが高く評価されており、”鬼才”ホルヘ・サンパオリの後を次いで”打倒PSG”を目指しています。
開幕戦でスタッド・ランスに4-1で勝利。しかし、第2節ではアウェイでブレストに1-1と引き分けてしまいました。
3-4-2-1がベースになっていきそうですが、
- 若きアルゼンチン人DFレオナルド・バレルディ
- コンゴ代表DFシャンセル・ムベンバ
などがディフェンスラインからビルドアップを中心に、どう攻撃に関わるのか。左ウイングバックのポルトガル人DFヌーノ・タバレスによるスケール感に溢れる攻め上がりも注目です。
レンヌのオッズは低評価?”アフリカのネイマール”のドリブルは一見の価値あり
オッズで5番手になっているレンヌも34.00倍という評価以上に、躍進のポテンシャルが十分にあるチームかもしれません。
しかし、リーグアンの開幕戦でいきなり”伏兵”ロリアンにホームで0-1負けの不覚を取ってしまいました。第2節のモナコ戦でも相手が早々に退場で10人になりながら、攻めあぐねて1-1の引き分けに終わっており、序盤戦で波に乗れないと、ブルーノ・ジェネジオ監督の手腕にも疑問符がついてきそうです。
元マルセイユのベテランGKスティーブ・マンダンダがディフェンスを統率することでも知られるレンヌ。攻撃の注目選手は20歳ながら10番を背負うカマル・ディーン・スレマナ。”アフリカのネイマール”との呼び名もあるアタッカーで、スーパースターの候補生として期待が高まっています。
鋭利なドリブルを武器にリーグアンでさらなるブレイクを果たし、カタールW杯への滑り込みを果たせるでしょうか。
中位から上位をうかがうクラブにはW杯を目指す日本人選手も
PSGが大きく崩れた場合は、アルジェリア代表FWアンディ・デロースを擁する41.00倍のニース、一昨年の覇者である7番人気(51.00倍)のリールにも優勝チャンスが転がり込んでくるかもしれません。
川島所属のストラスブールは8番人気
日本代表GK川島永嗣を擁するストラスブールも昨シーズンは6位フィニッシュを果たしており、126.00倍の8番人気と評価は悪くありません。優勝は厳しくても、チャンピオンズリーグの予選に参加資格のある3位に食い込んでくる可能性はあります。
川島は2番手GKですが常に準備できている選手なので、ベルギー人の守護神マッツ・セルスの状態次第でいつ出場チャンスが来ても、活躍につなげてくれるでしょう。攻撃陣ではセネガル代表FWアビブ・ムハマドゥ・ディアロの得点力が躍進の鍵になります。
W杯につながる活躍が期待される伊東純也とオナイウ阿道
伊東純也が加入したスタッド・ランスは751.00倍の12番人気ですが、開幕2連敗を喫してしまいました。怪我で開幕戦を欠場した伊東にかかる期待は高く、右サイドからアシストとゴールをどれだけ量産できるか。
昇格組のトゥールーズは、アジャクシオとともに1001.00倍となっており、まずは残留が目標になりますが、ここ最近の日本代表から外れているオナイウがカタールW杯のメンバーに食い込むには明確な結果が必要であり、非常に期待したいところです。