2022-23シーズンのイタリア・セリエAは、日本時間8月14日に開幕を迎えます。昨季11年ぶりにスクデットを獲得したミランをはじめインテル、ユヴェントス、ナポリ、ローマといった上位候補は戦力補強を進めており、今季も注目を集めています。
混戦が予想されるセリエAについて、ブックメーカーから発表されているオッズを参考に、河治良幸氏に展望してもらいました。
海外ブックメーカー発表/22-23 イタリアセリエAの優勝予想オッズ
開幕前、ウィリアムヒル社から発表されているセリエAの優勝オッズがこちらです。
オッズ順 | チーム名 | オッズ(昨季順位) |
1 | インテル | 2.75倍(2位) |
2 | ユヴェントス | 3.00倍(4位) |
3 | ミラン | 3.50倍(優勝) |
4 | ナポリ | 13.00倍(3位) |
5 | ローマ | 15.00倍(6位) |
6 | アタランタ | 26.00倍(8位) |
7 | ラツィオ | 51.00倍(5位) |
8 | フィオレンティーナ | 67.00倍(7位) |
9 | サッスオーロ | 501.00倍(11位) |
モンツァ | 501.00倍(2部4位PO) | |
ヴェローナ | 501.00倍(9位) | |
トリノ | 501.00倍(10位) | |
13 | ボローニャ | 751.00倍(13位) |
14 | ウディネーゼ | 1001.00倍(12位) |
サンプドリア | 1001.00倍(15位) | |
16 | エンポリ | 2001.00倍(14位) |
17 | スペツィア | 3001.00倍(16位) |
18 | レッチェ | 5001.00倍(2部1位) |
サレルニターナ | 5001.00倍(17位) | |
クレモネーゼ | 5001.00倍(2部2位) |
※オッズは2022年7月20日時点のWilliamHill公式サイト(セリエA – 優勝 2022/23)から引用
インテル(2.75倍)、ユヴェントス(3.00倍)、ミラン(3.50倍)の”三強”による優勝争いになるというのが、ブックメーカーからの見立てです。
一番人気はルカク復帰のインテル。最強ツートップの爆発に期待
”三強”にほとんど差はありませんが、インテルが一番人気になっている理由は、夏の補強を含むチームづくりが順調に進んでいると見られているからでしょう。エースだったベルギー代表FWロメル・ルカクが1年でチェルシーから復帰したのが一番のニュースです。
2020-21シーズンには24ゴールを記録してスクデット獲得の立役者になりましたが、チェルシーでは8得点に終わりました。インテルを”我が家”と表現するルカクが輝きを取り戻せるか。
相棒のアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスも健在で、昨シーズンは21得点を決めています。セリエA最強とも言えるツートップがどれだけ得点を量産できるのかは、クロアチア代表の司令塔マルセロ・ブロゾヴィッチやイタリア代表MFニコラ・ヴァレッラのアシストにもかかってきます。
そのほか、インテルはカリアリから快速サイドアタッカーのラウル・ベッラノーヴァを獲得。シモーネ・インザーギ監督がメイン・システムとして採用する3-1-4-2の左ウイングバックにはドイツ代表のロビン・ゴセンスという主力はいますが、スタメン争いが最も熱いポジションになるかもしれません。
GKもこれまで在籍11年目のスロベニア代表GKサミル ・ハンダノヴィッチが守ってきましたが、オランダの名門アヤックスからやってきたカメルーン 代表の新戦力アンドレ・オナナがシーズン開幕からポジションを奪う期待も高まっています。
昨季失意の無冠に終わったユヴェントスは新戦力で奪還狙う
昨シーズン屈辱の2季連続リーグ4位、カップ戦も逃して11年ぶりの無冠に終わったユヴェントス。就任2年目のマッシミリアーノ・アッレグリ監督はスクデット監督を”目標”ではなく”義務”として、不退転の決意で準備に取り組んでいるようです。
フランス代表MFポール・ポグバ、アルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリアというワールドクラスのタレントをフリーで獲得することに成功しました。
またドイツ王者のバイエルン・ミュンヘンに移籍したマタイス・デ・リフトに代わり、インテルも狙っていたとされるブラジル人のグレイソン・ブレーメルを獲得。指揮官は期待を寄せています。
アッレグリ監督は4-3-3をベースに、これまでより後ろからボールを動かして攻めながら、相手のディフェンスに応じて選手たちが狙いを持って突いていけるかを模索しているようです。
そうしたスタイルの完成度が、スクデット奪還もありますが、UEFAチャンピオンズリーグでどこまで躍進できるかのキーポイントにもなってきそうです。
中盤を構成するイタリア代表MFマヌエル・ロカテッリやポグバの役割も重要ですが、やはり得点力をどれだけ発揮できるか。
昨シーズン24得点と攻撃を引っ張った22歳のセルビア代表FWドゥシャン・ヴラホヴィッチはもちろん、昨シーズンは5得点に終わったイタリア代表FWモイーズ・キーンなどの奮起も期待されます。
連覇狙うミランのキープレーヤーは新加入のケテラエル
11シーズンぶりのイタリア王者となったミランですが、連覇となると1992-93シーズン以来となります。
ただ、スクデット獲得の立役者の一人である40歳のスウェーデン代表FWズラタン・イブラヒモヴィッチは昨シーズンの後半を膝の痛みと戦いながらプレーしていたことを明かし、手術に踏み切りました。復帰まであと半年はかかる見込み。
そうなるとフランス代表のオリヴィエ・ジルーとフリートランスファーでやってきたベルギー代表FWディボック・オリギが奮起していく必要があります。
連覇の難しさに加えて、そうした事情もインテルやユヴェントスよりオッズが落ちている理由のひとつでしょうが、プラス材料もあります。ベルギーのクラブ・ブルージュでブレイクし、若手屈指のチャンスメイカーとして争奪戦が伝えられたベルギー代表MFチャールズ・デ・ケテラエルの獲得に成功したのです。
背番号90が与えられた若き司令塔は192cmの長身を誇りながらテクニックが高く、状況判断にも優れています。4年目のステファン・ピオーリ監督は4-2-3-1のトップ下に起用すると見られており、昨シーズンMVPだった左サイドアタッカーのポルトガル代表FWラファエル・レオンとともに、ファンの話題を集めそうです。
オッズ評価は低すぎる?狙い目としておすすめはナポリ
オッズに従うなら”三強”による優勝争いということになりますが、筆者の見解では昨シーズン3位のナポリが13.00倍というのは危険(※高すぎる)にも思います。
得失点差は+52のインテルに次ぐ+43で、優勝したミランの+38より上でした。4位のユヴェントスが+20だったことを考えると、ナポリの+43はかなり優秀な数字です。
不安材料はディフェンスを統率してきたセネガル代表DFカルドゥ・クリバリのチェルシー移籍ですが、4,000万ユーロもの移籍金を手にしました。
コソボ代表DFアミル・ラフマミの相棒として、トルコのフェネルバフチェから加入した韓国代表DFキム・ミンジェに期待がかかりますが、ブライトンから加入したDFノルウェー代表レオ・エスティゴーアも有力候補です。さらに左SBにはスペインのヘタフェからウルグアイ代表DFマティアス・オリヴェイラが加わりました。大型レフティで、対人の強さと推進力を兼ね備えています。
攻撃では昨シーズンの最優秀若手賞を獲得したナイジェリア代表FWヴィクター・オシムヘンには14得点を大きく上回るゴール量産に期待がかかります。
4-2-3-1のトップ下を担うポーランド代表MFピオトル・ジエリンスキとのホットラインは強力ですが、そこに鋭い突破力を誇るジョージア代表の新鋭フヴィチャ・クヴァラツヘリアがどういったアクセントをもたらすか。
長年チームの左サイドを支えたロレンツォ・インシーニェがMLSのトロントに去りましたが、新たな左の翼になりうるタレントです。
さらなるアタッカー獲得の噂もあり、どういう陣容が揃うのか興味深く見守る必要がありますが、ナポリの優勝オッズは8.00倍ぐらいでもおかしくないと見ています。
セリエA・トップ4終了オッズ/来季のUCL出場権を獲得するのは?
来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得となるトップ4で終了オッズは、以下となっています。
オッズ順 | チーム名 | オッズ |
1 | インテル | 1.14倍 |
2 | ユヴェントス | 1.17倍 |
3 | ミラン | 1.25倍 |
4 | ナポリ | 2.20倍 |
5 | ローマ | 2.37倍 |
6 | アタランタ | 3.00倍 |
7 | ラツィオ | 5.00倍 |
8 | フィオレンティーナ | 8.00倍 |
9 | サッスオーロ | 15.00倍 |
10 | ヴェローナ | 19.00倍 |
11 | トリノ | 21.00倍 |
12 | ウディネーゼ | 26.00倍 |
13 | モンツァ | 34.00倍 |
ボローニャ | 34.00倍 | |
サンプドリア | 34.00倍 | |
16 | エンポリ | 67.00倍 |
17 | スペツィア | 101.00倍 |
レッチェ | 101.00倍 | |
サレルニターナ | 101.00倍 | |
クレモネーゼ | 101.00倍 |
※オッズは2022年7月20日時点のWilliamHill公式サイト(セリエA – トップ4で終了 2022/23)から引用
15.00倍で5位のローマ、26.00倍で6位のアタランタ、51.00倍のラツィオ、67.00倍で7位のフィオレンティーナは序盤戦からうまく波に乗れれば、チャンピオンズリーグ圏内の4位以内に食い込むチャンスは十分にあると見ます。
新天地でのプレーに注目集まるディバラがローマをどこまで引き上げられるか
ローマはアルゼンチン代表FWパウロ・ディバラがユヴェントスから加入。ローマの新たなシンボルになりうる存在として注目を集めています。
ディバラはチャンピオンズリーグに並々ならぬ思いがあり、当初は加入に難色を示していたと伝えられますが、ジョゼ・モウリーニョ監督やクラブのレジェンドであるフランチェスコ・トッティの説得が実った形になります。
昨シーズン17ゴールのイングランド代表FWタミー・エイブラハムとどんなハーモニーを奏でるのか。攻撃的なサイドバックであるトルコ代表DFメーメト・ゼキ・チェリクをフランスのリールから獲得したこともプラスになりそうです。
アタランタの多彩で機動的な戦いは今季も健在
アタランタはジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のもと、複数のシステムを自在に使い分けるサッカーで知られています。
基本的には”育てて売る”クラブのコンセプトはありますが、新シーズンに向けては、ユヴェントスから期限付き移籍していたトルコ代表DFメリフ・デミラルの買取りオプションを行使するなど、チャンピオンズリーグの舞台に返り咲くべく、継続路線で開幕に向けてチームづくりが進んでいます。
新戦力はサレルニターナを残留に導く活躍が目立ったブラジル人のエデルソンで、機動力の高さを生かした攻撃的な役割を担いそうです。
ラツィオのトップ4入りに必要なのはインモービレと並ぶ得点源
”鬼才”マウリツィオ・サッリ監督が率いるラツィオは元ミラン主将のイタリア代表DFアレッシオ・ロマニョーリをフリーで獲得。
指揮官のエンポリ時代の教え子であるウルグアイ代表MFマティアス・ベシーノ、さらに俊敏なブラジル人MFマルコス・アントニオも加わり、昨シーズン5位と健闘したクラブが、さらなる躍進を果たす可能性はあります。
気になるのは攻撃の中心を担ってきたFWルイス・アルベルトの去就ですが、もし古巣セビージャに去ることになっても、セルビア代表MFセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチが中核を担う陣容に大きなマイナスはないと見ます。
躍進の鍵は27ゴールで得点王となったイタリア代表FWチーロ・インモービレがどこまで得点を積み重ねられるかですが、チャンピオンズリーグ圏内まで行くには、もう一人ぐらい二桁得点者が出る必要はあるでしょう。インモービレの得点力が健在であることを前提に考えれば、オッズは35.00倍ぐらいでも良いと思います。
4位以内も射程圏のフィオレンティーナ。鍵を握るジョビッチの再ブレイク
8番人気のフィオレンティーナは気鋭の青年監督ヴィンチェンツォ・イタリアーノが掲げる攻撃的なスタイルが、カルチョの舞台でも異彩を放っています。スクデット獲得を果たすには奇跡が起こる必要があるかもしれませんが、4位以内に入るチャンスは十分にあると予想します。
最大の注目は熱血漢である指揮官の指導で、レアル・マドリードから加入したセルビア代表FWルカ・ジョビッチが輝きを取り戻せるかどうか。戦火にあるウクライナのシャフタール・ドネツクから加入したブラジル人DFドミウソン・コルデイロ・ドス・サントスも、右サイドバックから攻撃に厚みを加えられる期待のタレントです。
上位候補以外に見どころ:W杯に向けた選手チェックの場にもなる
ここまでの8チームより下はサッスオーロ、モンツァ、ヴェローナ、トリノが501.00倍で、上位争いに加わるのは難しいと考えられ、基本はセリエA残留が目標になるでしょう。
ただし、昇格組のモンツァはアタランタから期限付き移籍で地元出身のMFマッテオ・ペッシーナが加わるなど、意欲的な補強が目を引きます。
また昨シーズン9位のヴェローナは17得点を記録したアルゼンチン代表FWジョバンニ・シメオネをカリアリから買取りオプションを行使。さらに10番を背負うイタリア代表FWジャンルカ・カプラーリもサンプドリアから完全移籍で獲得しており、戦力的に125.00倍ぐらいでも良いのではないかと思います。
スクデット争いも気になりますが、やはり3ヶ月半後にはカタールW杯があり、代表選手にとっては大事な時期になります。
上記であげたクラブ以外でもトリノに所属するセネガル代表の長身FWデンバ・セック、サンプドリアに所属するデンマーク代表MFミッケル・ダムスゴーなどは注目株です。イタリア代表がカタールW杯に出られないことは非常に残念ですが、各国代表の選手たちの躍動に注目したいと思います。